小西マサテル 『名探偵じゃなくても』 ― 2024/01/10
第21回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『名探偵のままでいて』の続編。

小学校教師の楓の祖父は元小学校の校長で、「まどふき先生」と呼ばれ、子どもたちに愛されていた。
彼はレビー小体型認知症を患っていて、幻視や記憶障害などがあるが、話を聞いただけで謎を解いてしまうという安楽椅子探偵なのだ。
第一章:サンタクロースを見た男
楓の同僚教師、岩田は小学生の時にサンタクロースを見たことがある。
あるクリスマス・イブの夜、目覚めるとサンタクロースがいて、サンタクロースを追いかけてベランダに行くと、彼は跡形もなく消えていたのだ。
消えたサンタクロースの謎を割烹居酒屋『はる乃』で岩田が楓と四季に話していると、紳士然とした男が話しかけてきた。彼は楓の祖父の教え子だと言う。
第二章:死を繰る男
楓は美咲から連続自殺未遂の話を聞く。
フランソワという若い俳優が自殺し、彼のファンの二人の女性が後追い自殺をしたが、彼らはみな不思議な状態で、不確実な服毒自殺をしていたというのだ。
次なる犠牲者がでないうちにと思った楓は、居酒屋で出会ったK県警の刑事、我妻に連絡する。
第三章:泣いていた男
ある日、我妻は自宅の近くで起った殺人事件に呼び出される。
殺されたのはK県警二課に所属する刑事で、不思議なことが二つあった。
遺体の彼が泣いていたことと、ステンレス製のビールジョッキを手にしていたということ。ダイイングメッセージなのか?
第四章:消えた男、現れた男
この頃、四季の行動がおかしい。連絡がつかないのだ。
ある日、楓と美咲、そして岩田でY基地主催の国際フェスティバルへ行く。
そこで楓は、かつて母のストーカーとなり彼女を殺し、その二十七年後に今度は楓のストーカーになり、拉致しようとした、”親バカさん”こと九鬼を見かける。
彼は無実になり、釈放されていたのだ。
九鬼は楓に「私と楓の邪魔をする男はひとりずつ消していきますからね」と告げる。
終章:時間旅行をした男
美咲から楓はすずという少女に起った”学校の七不思議”を相談され、クリスマス・イブの昼間に祖父のところにすずを連れて行くことにする。
レビー小体型認知症(DLB)のことはよく知りませんが、楓の祖父の主治医がいいことを言っています。
DLBは「あらゆる病気の中で、唯一、時間旅行が可能な病気」で、怖い幻視や苦しい幻視じゃなく、「美しい過去へと旅行できる」限りはいいことなのではないかと。
どうなんでしょうね。少なくとも楓のおじいちゃんは幻視を見ている時は微笑んでいますものね。
登場人物たちにはそれぞれに悲しい過去や現実がありますが、このお話は暗いものではありません。
元小学校教師だったおじいちゃんのキャラクターがそうさせているのではないでしょうか。彼にとって登場人物たちは皆教え子のような、慈しみ、育てていく対象なのですから。
彼が我妻に言った言葉がいいです。
「人生はいつもままならない。それでも前を向き、ハッピーエンドを目指すべきだ。いや、目指さなければならないんだ」
今回は主にヒッチコック作品と古典的なミステリ作品が色々と出てきますので、興味を持ったら読んだり、見たりするといいでしょう。
私の覚え書きとして載せておきますが、抜けているものがあっても許してねww。
ミステリ本:
『サンタクロース殺人事件』 ピエール・ヴェリー
『真珠色のコーヒーカップ』 赤川次郎
『僧正殺人事件』 S・S・ヴァン・ダイン
『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティ
『ヒルダよ眠れ』 アンドリュウ・ガーヴ
『夏への扉』、『輪廻の蛇』、『時の門』 ロバート・A・ハインライン
『ローマ帽子の謎』 エラリー・クイーン
『Xの悲劇』、『ジャム双子の謎』、『顔』、『間違いの悲劇』
エラリー・クイーン
『コーマ、昏睡』 ロビン・クック
『緊急の場合は』、『ジェラシック・パーク』、『アンドロメダ病原体』
マイケル・クライトン
『大鴉』 E・A・ポー
『10月はたそがれの国』 レイ・ブラッドベリ
『J・ハバクック・ジェフソンの証言』 アーサー・コナン・ドイル
『シンデレラの罠』 セバスチアン・ジャプリゾ
『たんぽぽ娘』 ロバート・F・ヤング
アルフレッド・ヒッチコック監督作品:
『舞台恐怖症』、『私は告白する』、『汚名』、『断崖』、『めまい』、『疑惑の影』、『フレンジー』、『ダイヤルMを廻せ!』、『サイコ』、『ロープ』、『裏窓』、『第3逃亡者』、『救命艇』、『鳥』、『知りすぎていた男』、『暗殺者の家』、『スミス夫妻』、『見知らぬ乗客』、『北北西に進路を取れ』
ドラマ:『刑事コロンボ』
絵本:『あのね、サンタの国ではね…』 嘉納淳子作 黒井健絵
読んでいない本や映画が沢山ありますわ(恥)。
小西さんは全部読んで、見ているのですね。すごいわぁ。
「刑事コロンボ」は見ていたけど、「CAT」が出てきたかどうか、記憶がないです。セリフで「うちのネコが」って言っていたら、猫の名がネコってわからないわよね。
今回も全く謎を解けませんでした。すずちゃんだけわかったかな。
楓が岩田先生と四季のどちらを選ぶのか、思わせぶりで終わっています。
私はどうでもいいのですが、楓のどっちつかずが嫌ですわ。いい加減に決めろよと言いたい。
とにかくおじいちゃんが長生きしてくれれば、それでいいです。
三作目でまた「まどふき先生」に会えるのを楽しみにしています。
コメント
_ ろき ― 2024/01/12 05時00分03秒
_ coco ― 2024/01/12 17時09分07秒
ろきさん、作家も色々な探偵を考えつきますよね。
沢山読んでいない本があって、嫌になっちゃいますが、それにしても記憶力がいいですよ、小西さんは。
私は読んだそばから忘れていきますからねぇ、笑。イメージとして記憶するといいとかいいますが、忘れてもいいですよね。
沢山読んでいない本があって、嫌になっちゃいますが、それにしても記憶力がいいですよ、小西さんは。
私は読んだそばから忘れていきますからねぇ、笑。イメージとして記憶するといいとかいいますが、忘れてもいいですよね。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2024/01/10/9649776/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
ピーター・スワンソンもびっくりwwなマニア作家ですね。気になった作品を読んでみると楽しそう。