原田ひ香 『喫茶おじさん』2023/11/29



57歳の松尾純一郎はバツイチで、再婚した妻は娘と暮らすといって出ていき、離婚はまだしていないが、一人暮らしだ。
実は妻の反対を押し切り大手ゼネコンを早期退職し、退職金の一部を使い喫茶店を始めたが半年で潰していた。
現在無職で、知り合いの口利きでどこかの会社に勤めようと考えている。
そんな彼の楽しみは出かけた先の純喫茶巡り。
東銀座、新橋、学芸大学、上野、渋谷、池袋…。
ネットで調べてコーヒーとその店の看板メニューをオーダーして食べるのが至福の楽しみ。

こんな彼にみんなは言う。
「あなたは相変わらず、何もわかっていない人なんですねぇ」(妻)
「お父さんって、本当に何もわかってない」(娘)
「お前は本当に、何もわかってないんだなぁ」(友人)
こう言われても、ピンとこない純一郎。

こんな彼が最後に行き着いたのは…。

世の中のお父さんの悲哀と無神経さを併せ持った純一郎の胃袋の強さに感心しました、笑。
嫌なことや挫けることがあっても、喫茶店に入って美味しいコーヒーを飲み、食事をするとすべて忘れてしまえる。
そういう彼の神経の太さが周りの人にはうらやましくもあり、腹立たしくもありなんでしょうね。

すごいんですよ。ある日なんか銀座の喫茶店に入り、ブレンドとタマゴサンドを食べた後にキッシュとケーキのセット、和栗のタルトを食べるんです。
別の日なんか赤羽でモーニングのバタートーストとコーヒーを食べた後で、またモーニングの厚切りトーストとアイスコーヒーを食べ、老舗のフルーツパーラーでフルーツサンドとホットコーヒーですから。
57歳の男性ってこんなにパンとかスイーツを食べられるものなの?

それに無職なのに、金銭感覚もおかしいです。
「安い、安い」と言いながら、一日に喫茶店2~3軒を回り、2000円から3000円程度使い、ある日なんかとんでもない散財をしています。
東京駅の某デパート内珈琲店でビーフカツサンドとコーヒーを食べたというのに、その後に駅中の某和菓子屋の喫茶店であんみつとコーヒーまで食べるのですから。
一体いくらになるの?
物好きな私はついついメニューを探し、計算してしまいました。
もったいないと思うのは私だけ?
こういう金銭感覚に疎いところが、喫茶店を潰し、奥さんに三行半を出させてしまうのかもね。

読みながらどこの喫茶店か調べて行きたくなりました。
赤羽のプチモンドのフルーツサンドや新橋のカフェテラスポンヌフのナポリタンが食べたいです。
ナポリタンの作り方が書いてありましたが、どなたか作った感想を教えて下さい。
美味しいのなら作ってみるかも。
原田さんは食べ物の描写が本当に上手いですね。

退職して悠々自適な生活なら、こんなのほほんおじさんがいてもいいかなと思いますが、真面目な方が読むと、イラッとくるかも、笑。
松尾さんのことは棚にあげておいて、純喫茶巡りを楽しみましょう。


<今日のわんこ>


久しぶりに兄がやる気になりました。
弟のサンタさんを奪い取り、取ってみろです。
弟はしばらく経つと兄が怖くてサンタさんをあきらめました。
いつもは兄を押しのけるのですけどね。


神社のイチョウも色づきましたが、散りそうです。

読んだ文庫本2023/11/06

とにかくすぐに読めちゃう文庫本です。


奥乃桜子 『それってパクリじゃないですか?2~新米知的財産部員のお仕事~』
     『それってパクリじゃないですか?3~新米知的財産部員のお仕事~』
藤崎亜希は飲料メーカー「月夜野ドリンク」の知的財産部で働いている。北脇雅美に早く一人前と認められたくて、頑張っている。
そんな時に飲料事業から撤退した今宮食品から特許の買い取りの打診があるが、買い取り価格が破格に高いということもあり、対策済みと静観していたらトンデモなかった。亜希の元カレが勤める総合発明企画というパテント・トロールが仕掛けてきたのだ。
亜希は自分が知的財産部にいたばかりに、知財部のマンパワーが不足していると思われ、舐められたのではないかと思う。
起死回生をかけて亜希が考えたこととは…。

なかなか進まない亜希と北脇の仲。いつまで上司と部下関係を続けるのよ。
なんとドラマのように、一巻で終わりじゃなく、次に続くになってて、次の巻も買うしかないじゃないの、怒。
知的財産部ってどんな部と思った人は、ちゃんとしたお仕事の本なので、読んでみて下さい。

澤村御影 『准教授・高槻彰良の推察EX2』
五編の短編集。
第一章:やがてソレはやってくる
高槻の授業で『メリーさんの電話』を扱う。その講義の後、深町君のお友だち、難波君の彼女から、なくした人形がだんだん近付いてくるみたいだと相談される。
第二章:遠山と猫の話
深町と同じ力を持つ遠山孝は猫を二匹飼っている。飼うきっかけになったお話。
第三章:大河原智樹の冒険
アキラ(高槻先生よ)の小学六年生のお友だち、智樹君は廃工場の二階の一番奥の部屋である儀式を行うと異次元に行けると聞き、アキラを誘うが不法侵入になるからと断られたので、塾をサボり一人で廃工場に行く。
第四章:俺の友達の地味メガネくん2
難波くんの特技は友達を作ること。大学ですごく気になる奴に会う。それが地味メガネの深町くん。深町くんの周りには立入禁止線があるのだ。
ある日、深町くんから頼まれ、服を買いに行くことに。
第五章:それはまるで祈りのように
ある日、佐々倉健司は高槻彰から呼び出しを食らう。家に行くと、刑事の林原を知っているかどうか問い詰めてくる。高槻を林原の所属する異質事件捜査係に近づけたくない佐々倉が言葉を濁すと、高槻はヘソを曲げてしまう。
しばらく高槻に会わなかった佐々倉は高槻との昔のことを思い返す。

今まで明かされなかった登場人物たちの過去のエピソードが書かれています。
難波くんの深町くんへの愛と佐々倉の高槻への愛。
どちらも素敵です。

福澤徹三 『侠飯 9 ヤバウマ歌舞伎町篇』
蓬創介は専門学校卒業後、就職が決まらず、バイトを続けていたが解雇され、大手の求人サイトに載っていた会社に応募するが、ことごとく断られ続ける。やっと採用かと思ったら、会社を運営しているのは半グレ集団で、個人情報を握られているので逃げるに逃げられず、困っていると、蜂矢翼という男に助けられ、歌舞伎町にある彼のバーで働くことになる。
ある日、倒れていたホストを助けようとして、二人組のヤクザと知り合う。
それから彼らはバーに来ては、創介にビールの入れ方や簡単で美味しいアテの作り方などを教えてくれるようになる。

今回出てくるいい言葉は沢山あります。
「勉強とは、自分がいかに無知かを知ることだ」
「どんな山でも、てっぺんが見えてりゃ上れるってことさ」
「意思の力でどうにもならない物事は悩まないことである(エピクテトス)」
「結果がどうなるかよりも、そこへ至るプロセスが重要だ」
「自分の弱さが強さになるったい」

若者たちには危ないところに近付かずに、まっとうな道を歩いていってもらいたいですね。
今回も美味しそうなお料理が出てきました(涎)。

望月麻衣 『京都寺町三条のホームズ・20』
ホームズをモデルにした相笠原作の『華麗なる一族の悲劇』がミュージカル仕立ての舞台になる。秋人に呼ばれ南座にお邪魔した日の夜、公式アカウントに悪意のある投稿がある。清貴は頼まれ、投稿者を捜す。
京都国立博物館でインターンの募集があり、葵はマネージメント担当として採用される。
そんな頃に香港にいるジウ・イーリンから電話が来る。
香港の西九龍文化地区にオープンしたアート美術館『M+』に円生の絵が展示されているというのだ。円生は行方知らずだ。
一体どういう経緯があったのかと心配になった清貴と小松は香港に飛ぶ。

京都国立博物館の裏話に興味が持てました。
なんとホームズはタップダンスも上手だそうで、イケメンで古美術に詳しいというだけで十分なのに、他の才能もあるんかいww。
頼りなげな少女であった葵も目標が決まり、これからは目標に向かって頑張るのみ。そろそろ終わりに近づいていますね。長引かせずに終わらせてね。

小野寺史宣 『とにもかくにもごはん』
月に二回、開催される「クロード子ども食堂」の主宰者は松井波子で、スタッフは波子も入れて五人。
大学生の凪穂ちゃんは受付担当で、鈴彦くんは配膳担当。
調理担当は五十九歳の多衣さんと三十八歳の久恵さん。
午後五時から八時までで、利用者はそれほど多くないので、なんとかなっている。
お客は様々なバックグラウンドを持つ子どもたちと大人たちだ。

10人の人たちの視点で書かれた10の短編集。
どのお話も悲惨さはなく、ほんわかとした味があり、希望を持たせてくれます。

賀十つばさ 『雑草姫のレストラン』
東京から八ヶ岳の麓に移住してきた二人の姉妹。
姉の夕花は美貌の元有名レストランのシェフで、最愛の人を亡くしてから体調を崩し、原因不明の病にかかっている。
妹の茂花は男に惚れっぽいがためにトンデモナイ男に騙され、会社を辞め、半年前に姉を連れて八ヶ岳の山荘にやって来た。今は道の駅で働いている。
そんなある日、姉が『美味しい雑草』という本を見つけ、雑草をアレンジして料理を作り、みんなにふるまい始める。

雑草料理、意外と美味しそうです。
雑草だからこそ、栄養や生命力がたっぷりありそうですね。
挫折し都会から逃げて来た人たちが新たなる一歩を踏み出せそうでよかったです。


<昨日のわんこ>
山中湖に行って疲れたのか、ぐっすり眠っていたわんこたちです。
パパやママと違い疲れが残らないのか、お散歩に行っても元気です。


何枚か撮ったら、奇跡的に一枚、前を向いていました。
そろそろトリミングが必要ですね。


普通はこんなになるのよね、笑。
それほど暑くないのか、お水を飲まなくなりました。


お散歩好きの兄が嬉しそうです。

伊坂幸太郎 『777 トリプルセブン』2023/10/20

今週、何故だかわかりませんが、ランキングの上下が激しいです。
12位↘ランキング外↗20位↘ランキング外↗11位↗10位ですから。
なんででしょうね。

とにかく、ブログを読みに来て下さってありがとうございます。
面白そうな本があったら読んでみて下さいね。
読書には癒やし効果があるそうですから。


『グラスホッパー』、『マリアビートル』、『AX』に続く殺し屋シリーズ。

ツキにとことん見放されている殺し屋、七尾こと「天道虫」は真莉亜から超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという簡単かつ安全な仕事を請け負う。
それなのに、七尾は部屋にいた男を殺してしまう。
なんということだろう、七尾は部屋を間違えたのだ。

同じホテルに、驚異的な記憶力を備えた紙野結花が潜んでいた。
彼女は「逃がし屋」、またの名が「ハッキングのおばちゃん」というココに、二年間使えていた怪しい仕事をする乾から追われているので、逃してくれと頼む。
ところが、何かあったら七尾に頼れといいおいてココは亡くなる。
もちろん紙野はココの言うとおりにする。

世界で一番不運な男、七尾はエレベーターで紙野に捕まり、今度はホテルから出られなくなる。

紙野を追うのはイケメン、イケ女の殺し屋六人組。
紙野を追う乾の意図は?
そして、七尾は生きてホテルを出られるのか…。

モウフとマクラのメイドコンビやコーラとソーダの炭酸コンビなど他にも楽しい殺し屋たちが集まって来ます。
殺し屋たちの戦いなのに、嫌~な感じがしないのは、伊坂さんの腕がいいからでしょうね。
『マリア・ビートル』の映画版「ブレット・トレイン」は見ていないけど、これも映画になるとおもしろいかも。

とにかく、こんなホテルには泊まりたくない!

桜木紫乃 『ヒロイン』2023/10/15



バレエ教室を経営している母親の命じるままにバレエを始め、コンクールに出るようになった岡本啓美。
彼女の人生が狂ったのは、コンクールでどこの留学資格も得られなかった時なのか、母の支配から逃れるために「光の心教団」に入信した時なのか、それとも…。

1995年3月、渋谷駅で毒ガス散布事件が発生する。
実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の男性幹部・貴島紀夫と 23歳の信者・岡本啓美。
啓美は事件当日、たまたま禁じられていた五階に行き、貴島に見つかり、何一つ知らされずに彼と行動を共にしただけだった。

最初は貴島と潜伏するが、彼に失望し、彼の持っていたお金の一部をひそかに盗み、啓美は逃亡する。

事件から三ヶ月後、新潟。
母と離婚後、父はみどりという女と再婚し、すみれという娘がいた。
すみれには皮肉にも啓美にはなかったバレエの才能があったが、父はバレエをするのを禁じていた。
父の家でしばらく暮らすうちに、啓美はみどりから父の別の顔を知らされ、気づけばみどりたちと父を陥れていた。

埼玉県、鬼神町。
啓美はフリーの記者鈴木真琴に頼まれ、孫の「鈴木真琴」と偽り、真琴の祖母・梅乃の経営するスナックで働くようになる。
スナックに来る中国人技能実習生ワンウェイと関係を持つが…。

次々と流されるままに、姿を変え、名前を変え、啓美は居場所を求めさすらう。
彼女の求めているものは何なのか。
彼女は本当に罪を犯したのか。
犯したとしたら…。

17年間に渡る逃亡劇を描いた作品です。
啓美のことを愚かだと思うことは簡単です。無実なんだから逃げる必要はないのですから。でも、それが彼女。
母から逃れ、世間から逃れ、罪を犯し、罪から逃れ、やっと定住できるのかと思ったら、そうは上手くは行かなかった。
男は弱く、彼女にしがみつくか、彼女の前からいなくなってしまう。
女は弱さを装うが、したたかで、強い。
啓美の幸せの形ってとってもささやかなものだったのではないでしょうか。
それが逃亡生活の中で得られたというのが、憐れでした。

定番の北海道が出てきて、嬉しかったです。
逃亡生活を送る主人公のお話っていくつかありますが、作者によって描き方が違っていておもしろいですね。
今思いつくのが『八日間の蝉』とか『火車』、『白夜行』、『ゴールデンスランバー』ですが、他にもあるので、一緒に読んでみるといいかも。
この本は好きですが、この中で一番かというと微妙…。


<昨日のわんこ>


やっと涼しくなって、昼間にお散歩ができるようになりました。
弟のグイグイもなくなり、ゆっくりのんびりお散歩ができます。
でも、二匹だと嬉しいのか、弟がアッチャコッチャに行くので、足を踏みそうで怖いです。

<今週のおやつ>


もらいもののファンドリーの焼き菓子。


これももらいもののキウイ。自宅で栽培したそうです。
市販のものより小さく、毛が少ないみたいです。
ヨーグルトとグラノーラと一緒に食べました。(スプーンでキウイを半分にしたら、汚い見かけになっちゃいました、笑)

どちらも美味しかったです。ご馳走さまでした。

大山淳子 『猫弁と狼少女』2023/10/13



猫弁こと百瀬太郎は迷い猫絡みの脅迫状をもらったという老女からの依頼を受け、調査に乗り出す。
そんなある日、百瀬は依頼主の家の塀の上にいた少女に話を聞こうとしたところ、彼女が裸足であることに気づき、背中を貸そうとして、未成年者略取及び誘拐未遂の疑いで逮捕されてしまう。

「助けて」と言った少女の心に寄り添い、百瀬は黙秘を続ける。
百瀬は当番弁護士の沢村透明と面会し、彼にやるべきことを頼む。

百瀬法律事務所のバイト、正水直は、百瀬の指示で沢村のところに予備試験の準備について聞きに行ったついでに沢村と行動を共にする。

百瀬法律事務所の秘書、野呂法男と事務員、仁科七重は百瀬のことを信じ、事務所を守っていく。

百瀬の婚約者の大福亜子は警察から連絡が来ない、自分の身の上に思いをはせ、あることを決心する。

堀の上にいた少女の聞き取りは母親に阻まれた。
冤罪だが、どうなる猫弁!

百瀬の思い出に残る少女のお話が出てきます。
昔から彼は神童でしたが、心優しい子であったことがわかります。
こんな風に大人になってもスレていかない人は珍しいですね。

大福さんと同居までいったのに、なかなか結婚しない百瀬。
一体いつになったら結婚するのよとは思っていましたが…。
今回は大福さんの父親が素敵でした。
百瀬のことは大嫌いだけど、百瀬を選んだ娘には感心していたなんて…。
お母さんもあっぱれでした。

「子どもの涙をぬぐう指だから親指っていうんだな」

こういう両親にそだったからこそ、大福さんは大福さんなんですね。

たいした事件ではなかったですが、人と人が信じ合い、思い合い、互いに助け合うことの大切さを思わせられるお話でした。
こんな善人しかいないお話もあっていいですよね。


<昨夜のわんこ>
一緒のスペースで暮らし始めてから三日が経ちました。
今まではちょっかいを出す弟に苛立ち、怒る兄犬でしたが、今回はそうでもないです。兄も年をとったので、怒る気力がなくなったのかな?
互いのスペースを尊重し合うようになりました。


この二つとも、兄が利用していたのですが、左側の下のクッションが取り外しできる方を弟が取ってしまいました。
弟はクッションの下にもぐり込むのが好きなのです。
これと今までのクレートのハウスが弟の寝床になりました。


兄は真ん中のベッドと右端に少し写っているハウスが彼の寝床になりました。
二匹が寝ているものは夏用なので、もう少ししたら冬用にしようかと思いますが、どうなるかしら?

とにかく弟の胴が長いので、トイレからはみ出し、オシッコや〇んちが床の上ということがなくなったので、いつもお掃除をしていたママは手がかからなくなり、嬉しいですわ。
それに弟がトイレの上に寝たりしなくなり、臭くないので、前以上に抱いてあげれるようになりました。
ホント、臭かった、笑。

このまま仲良くやっていっていただきたいものです。

読んだシリーズ(文庫本)2023/09/23



ほしおさなえ 『言葉の園のお菓子番 復活祭の卵』
祖母が通っていた連句会・ひとつばたごに自らも通うことになった一葉は、祖母と同じようにお菓子番となる。
その縁からブックカフェ「あずきブックス」で働くことになる。
イベントの企画の担当となり、11月にトークイベントで短歌を取り上げることになる。
参加者はもちろんのこと、「あずきブックス」の従業員たちも短歌を作らなければならなくなり、急遽短歌の読書会を始める。
そんな頃、睡月さんから連句の大会の話があり、ひとつばたごでは二座出すことになる。
一葉も参加することにするが、心配なことも…。

どれだけ読んでも連句はわかりません。自分で実際にやってみないことには理解できないのかもしれませんね。ましてや短歌も作れません。
自分のことは棚に上げますが、この本を読んで興味を持った人は是非作ってみてください。
自分の意外な才能を見つけるかも。

ひとつだけよくわからなかったのが、連句会の主宰・航人さんの過去をメンバーの人が一葉に話すことです。いくら一葉の祖母が関係していたからといって、若い一葉に話すことではないと思いました。

新しいお菓子が出てきました。
土佐屋のいもようかん、大吾の爾比久良、HIGASHIYAの棗バター、銀座鈴屋の栗甘納糖。
棗バターが食べてみたいです。

長月天音 『世界をめぐるチキンスープ 神楽坂のスパイス・ボックス3』
神楽坂の路地にある「スパイス・ボックス」は姉妹がやっているスパイス専門料理店。
体調が不調な人が食べると、元気になるお料理が出てきます。
子ども連れのファミリー層がお店に来ていないことに気づいた二人は、よくお茶に来る常連さんがたまたま食事をしにやって来たことを機会に、子どもでもスパイス料理が食べられることをアピールします。

出てくるお料理はどれも美味しそうで、チョコバナナのロティがどんなものか興味があります。クレープじゃなくてロティにチョコとバナナが包まれているのかな。
とにかく読むと無性にスパイスのきいたインドのカレーが食べたくなりました。

坂井希久子 『粋な色 野暮な色 江戸彩り見立て帖』
お彩は塚田屋で呉服の色見立てをしている。
当主の刈安に流行色を作れとけしかけられ、右近と共に深川鼠を流行らせようとするが、なかなかそうは簡単にいかない。
できないと右近は店から追い出される。
辰巳芸者に無料で深川鼠の着物を配り、着て貰おうとするが上手く行かず。
策は尽きたかのように見えたが…。

色見本を片手に読みたくなるシリーズです。
深川鼠は「薄い青緑みの灰色」。
日本には色の名前が沢山あります。
鼠色では浅葱鼠、紺鼠、空色鼠、鈍色、錫色、溝鼠、素鼠…。
短歌同様、これも素晴らしい文化だと思いますが、今は忘れられていますね。
昔の日本人は色彩感覚が鋭かったのでしょうか。

風野真知雄 『わるじい義剣帖(1)またですか』
孫の桃子と会えなくなってから一月、暇を持て余す愛坂桃太郎。
屋敷に帰っても、特にやることはなく、面白いことを工夫している。
<猫釣り>や<犬外し>をしたり、牛の種つけを見たりするが、退屈だ。
そんな時に、珠子と桃子が身を寄せている雨宮五十郎の役宅の向かいの長屋で人が殺された。
愛する孫に危険が及ぶかもしれない。
そう思った桃太郎は、これ幸いと桃子に会いに行く。
雨宮は頼りにならないから、いよいよ桃太郎の出番だ。

新しいシリーズの始まりです。
いつまで経っても桃太郎さんの桃子ラブは尽きることがありません。
それが生きがいだから、仕方ありませんね。
なんともユーモラスな桃太郎がよくて、ついつい読んでしまうシリーズです。
どうぞ長く続けて下さい。

読んだシリーズ(文庫本)2023/08/30

読んだ文庫本がたまっているので、まとめて紹介します。
大分前に読んだものがあるので、内容を忘れているみたいです。


よしおさなえ 『菓子屋横丁月光荘 光の糸』
遠野守人は川越にある古民家「月光荘」の住み込み管理人としてそれなりに忙しい毎日を送っている。
両親とも幼いうちに死に別れ、育ててくれた祖父母も亡くなり、天涯孤独な身の上だったが、川越で様々な人と出会い、縁が次々と繋がっていき、彼の新しい人生が始まる。

シリーズの完結篇。
最初は家が喋るんかいと思いましたが、シリーズが続くうちに、不思議さはなくなりました。根なし草のような守人でしたが、川越が彼の居所となってくれましたね。読み終わり、彼の未来に幸あれと祈るような思いになりました。

竹岡葉月 『おいしいベランダ。亜潟家のポートレート』
なんと亜潟葉二と結婚したまもりが妊娠!でも、会社を経営する葉二には育休なんてない。
そんなわけで、まもりは里帰り出産をすることに。一方、葉二はまもりがいない間に新居に引越しだ。
どうなる亜潟家。

前回で終わったかと思ったら、嬉しい番外編です。
まもりちゃんが幸せでよかったわ。

木宮条太郎 『水族館メモリーズ』
『水族館ガール』が終わったと思っていたら、新章スタート!。
先輩の梶と結婚したした嶋由香だが、仕事は待ってくれない。
彼女が新しく挑戦したのがクラゲの企画展と同僚の子ども、ミユちゃんと一緒にするクラゲの飼育。クラゲって見る分には優雅で、幻想的でいいんですけど…。
そして次はなんとペンギン。
ペンギンのトレーニングって結構大変なんです。
私は簡単にお散歩できるんだと思ってました。ごめんなさい。旭山動物園の飼育員さん。
クラゲとペンギンについて知りたいと思ったら、是非手に取ってください。
意外な生態に驚くと思います。

賀十つばさ 『バニラなバカンス』
『バニラな毎日』の続編。
前回は白井の店を借り、料理研究家のマダム佐渡谷がカウンセラーの姪のクライアントと一緒にお菓子を作るという内容でしたが、今回はガラッと変わりました。
洋菓子店を開いた白井に不幸が次々と襲いかかってきます。
まず、店の前の道路が陥没。そしてフランスに行って愛する人と暮らしているはずのマダム佐渡谷が恋人と別れて出戻って来ます。
最後のとどめが、白井の腕の怪我。
どうなるのか、白井…と言いたくなりますが、まあ、それなりにハッピーな終わり方でした。どんなことが起ろうが、前に進もうと思えば進める。
頑張ろうと思える最後でした。

椹野道流 『ハケン飯友 僕と猫の小さな食卓』
神様から派遣された猫が人間となって孤独な坂井君と毎晩夕食を食べるというお話。
なんと今回、猫のリクエストにより、二人で一泊二日の旅行に行きます。
そこで猫の本名と過去がわかります。
そしておこもりさん(沖守さんのこと)のところでみんなでバーベキュー。
や~、いいわね。私も仲間になりたいわぁ。

中村颯希 『神様の定食屋(3)うつろう季節』
このシリーズの神様は迷惑な方です。何しろ未練を残した魂に高坂哲史の身体を乗っ取らせ、未練を晴らさせるんですから、笑。
今回魂たちが作るお料理はカレー、のり弁、ぶりしゃぶ、秋刀魚、粕漬け。
どれも美味しそうです。
魂たち以外に、元カノと再会し、定食屋反対の祖父が乗り込んで来たりと、色々と大変な哲史です。

秋川滝美 『ソロキャン! 2』
ソロキャンが流行っていましたが、始めた方はまだやっているんでしょうか?
私はヒロシさんの動画(オ!「ヒロシとエリーのワンちゃん日」がアップされてます)を見るのが好きですが、ソロキャンもキャンプもやる気がありません。そもそもトイレがない、お風呂に入れない状態が嫌なんです、と言っても大学時代はワンゲル部でしたけど…。
千晶のお母様の心配がよくわかります。ソロキャンは女子にとって不安がありますよね。変な男がいますから。
今回千晶はキャンプなんかしたことのない後輩女の面倒をみることになってしまいます。断れよ、千晶。とちょっと思いましたが、後輩女もソロキャンの良さを知ったようです。

志賀内泰弘 『京都祇園もも吉庵のあまから帖 7』
このシリーズも続いています。
もも吉さんは相変わらず相談に来る人にいいアドバイスを与えています。
舞妓になりたい娘に反対している母親に、「転ばんように教えるだけが親やない。それよりも、転んだ時に、どう立ち上がるんかを学ばせるんが、親の務めやないでっしゃろか」と言い、新聞記者になろうとする新人を、「ぎょうさん人の話、聴いて訊いて、ええ記事書きなはれ」と励まします。

どのシリーズもそれなりに面白いので、お暇な時に手に取って読んでみてください。

原田ひ香 『図書館のお夜食』2023/08/27

心配したわんこたちのお腹の調子は大丈夫でした。
食物繊維たっぷりだったせいか、二匹は大きなブツを出しました、笑。
食いしん坊の兄はお腹が空いたと五月蠅くて、寝ていたいママは起こされました。
消化がよかったのかもね。ご飯もちゃんと食べたし。
気が向いたら、来年の誕生日にも作るかも。


「ママ、僕はいつでも大歓迎です」by ヨーキー弟

わんこたちの話題を載せていると、本が溜まってきました。
文庫本のことは後でまとめて書きますが、まずは新刊から。


東北の書店に勤めていた樋口乙葉は、SNSを通じて不思議な仕事にリクルートされた。
親に反対されたが、もともと書店の仕事を辞めようと思っていたところなので、その仕事に飛びついた。
職場は東京の郊外にある、夜七時から夜中の十二時まで開いている「夜の図書館」。
亡くなった作家が寄付してくれた本を展示し、整理するのが業務で、入館料を取り、利用者に観覧し、貸出はしていない。
給料は15万円と安いが、寮が無料というのがいい。
働いている人たちはそれぞれ書店や古書店、図書館に勤めていたようだ。
食堂があり、毎日作家にちなんだ美味しい料理が食べられる。
例えば井上靖の『しろばんば』にちなんだカレーとか。

こんな不思議な図書館に働く人たちと利用者たちの織り成す出来事は…。

期待して読んだのですが、ちょっと残念な出来でした。
無理してお料理を出さなくてもいいんじゃないかと思いました。
続きがあるような終わり方なので、評価は続編を読んでからということにしておきますね。

それにしても夜の図書館というところに引かれます。
こんな図書館があったら、是非利用してみたいですね。
食堂は来館者も利用できるのかしら?(本の中に書いてあったら、ゴメン、私、気づかなかった)
今回出てくる本は誰もが読んだことのありそうな本なので、身近に感じていいかもしれません。

そういえば『古本食堂』の続きはないのかしら。

乃南アサ 『雫の街 家裁調査官・庵原かのん』2023/07/20



2020年4月に家裁調査官の庵原かのんは福岡家庭裁判所北九州支部から横浜家庭裁判所川崎中央支部に異動した。
コロナ禍が落ち着くのを待っているといつになるかわからないので、東京の動物園でゴリラを担当している栗林と結婚した。
川崎中央支部では家事事件の担当になる。

家事事件とは「家庭内の紛争(離婚、養育費、相続、成年後見、不在者等)などの家庭に関する事件」のことで、今回かのんが担当したのは、身元不明の記憶喪失の男に対する就籍問題、モラハラ夫の子に対する面会交流申立、遺産分割調停、歯科医の夫の失踪宣告、自閉症スペクトラム障害らしき夫との離婚調停、親により離婚させられた母親の子どもとの面会交流申立、自分のではない子を押しつけられて結婚し、離婚した元夫からの慰謝料請求、内縁関係の解消の申立などです。
一つ一つの事件を読むたびに溜息がでます。小説だからとは思えないのです。
現実にこのようなことは起っているのでしょうね。もはや小説より現実の方が先を行っているかもしれません。
かのんたち調査官はどんな人に対しても平等に接し、真摯な姿勢で話を聞き、お互いにとって最良の解決策を探していきます。
かのんは当事者と面接した後、甘い物を食べてストレス発散していますが、よくわかります。ホント、やってられませんよね。
わたしには無理ですわ。忍耐力がなく、感情がすぐ顔に出ちゃうんで、笑。

七話あるお話の中で、「再会」と「キツネ」、「はなむけ」が印象に残りました。
特に子どもが関係するお話はやるせない気持ちになります。
この頃報じられるニュースでも信じられない親たちがいて、犠牲になる子どもたちがかわいそうになります。

前作を読んでいなくても大丈夫ですので、是非読んでみてください。
最終話ではハンカチをお忘れなくww。

山崎光夫 『鴎外青春診療控 本郷の空』2023/07/15

『大塚薬報』誌で「町医者・森林太郎ー鴎外青春診療録控」として連載中だそうです。


前作に引き続き、森林太郎のモラトリアム時代が続いています。
林太郎は東京の千住にある父の橘井堂医院で診療を手伝いながら、様々な患者と出会い、父・静男から医師のなんたるかを学んでいます。

この本では鴎外よりも父である静男の姿が印象に残ります。
静男は一介の町医者であり続け、どの患者とも対等に接し、患者の病気だけではなくその家族の心までも診ています。例え自分の息子であっても、いいところは学んでいこうとします。
静男は死に逝く人にとって「医者が慰者」になることが「魔法の医療だ」と言っていますが、林太郎は「父なら魔法の医療は実践できているのではないか」と思っています。父親に対する子の信頼が厚いですね。
若い頃の鴎外の人となりは全く知りませんが、この本を読んでいると「この父にしてこの子あり」と思えます。
そうそう彼の成績が8番だった理由がわかりました。試験の最中に下宿が火事になり、ノート類が焼けてしまったそうです。これでは勉強ができませんね。それでも8番はすごくないですか。

面白かったのが、静男が語る新撰組の近藤勇とのことです。
新撰組って何となくカッコいいと思われていますが(私だけ?)、武闘派の殺し屋集団だったそうで、静男は元治元年(1864年)に神田下谷和泉橋の松本塾で、幕府軍医だった松本良順を訪ねて来た近藤勇に会っています。
鬼気迫る状態で静男が行なったことは…。(静男さん、素敵です、笑)
近藤勇以外にも若き西周や北里柴三郎など、その後活躍する人たちが出てきます。

若き日の鴎外がまだ世慣れていなくて、ナイーブなところがいいです。
『大阪薬報』誌での連載は続いているらしいので、鴎外が今後どういう選択をしていくのかが楽しみです。