奥田英朗 『サウスバウンド 』2009/11/29



ちょっとかわった人を書かせるとおもしろい奥田英朗の本で、映画にもなっている『サウスバウンド』を読んでみました。
ホント、彼って変な人の描写が上手いですねぇ。
精神科医の伊良部一朗なんて気持ち悪いけれど、自由に生きているところがいいなぁと思えたのですが、『サウスバウンド』では主人公の二郎の父、一郎が無鉄砲ながら実に魅力的な人です。
そう、自分の名が一郎だから、息子が二郎。何か変。
二郎は小学校6年生。友達と一緒に楽しい学校生活を送っていた・・・はず。しかし、何やら状況が変ってきました。

二郎の家では母親は喫茶店をやって稼いでいますが、父親は自称フリーライターと言いながらブラブラしていて、いつも家にいます。普通の父親みたいに会社に行ってもらいたいなと二郎は思っています。
こんな何の変哲もない(?)日常が、友達が中学生の不良からかつ上げをされ、二郎が助けようとした頃から変っていきます。
まず、父親の知り合いから頼まれ、人を預かります。
このアキラおじさんは二郎や妹の桃子と一緒に遊んでくれるし、ご飯も作ってくれるし、いい人なのですが、でも外を歩いたりする時に細心の注意をはらいます。
二郎に他人のマンションに忍び込み、ぬいぐるみを売って来てくれなどという変なことを頼んだりもします。
アキラが来てから、父一郎と母さくらの過去がだんだんとわかってきます。
実は一郎、元過激派の活動家。母もそうだったらしいのですが、なんと母、人を刺したことがあるらしいのです。
そして、一郎は二郎の一番恐れていたことをやってしまいます。学校に乗り込むんです。
さて、二郎の運命は・・・。文庫本1の東京の話。

文庫本2では東京脱出をした二郎一家が、一郎の故郷沖縄に移住します。が、一郎のことですから、またまた尋常ではない生活が描かれています。
一郎がやってくれます。
学校なんかに行くな、税金なんて払わなくていいなど、国家権力に一人で立ち向かう一郎ですから、沖縄に行ったって静かに暮らせるわけがありません。
電気も水道もない暮らしを始めます。二郎たちに学校に行くなといいますが、子供ですから友達が欲しいです。もちろん学校に行きます。
沖縄生活にもなれてきた頃、二郎たちが使っている土地が売られていて、リゾートホテル建設予定地であることがわかります。
ということは・・・そう一郎がまたまたやります。

一郎という傍若無人な父親に翻弄されながらも、いい子に育っている二郎がかわいそうにも思いますが、沖縄の自然と人がすべてを受け入れてくれるような感じです。
今の沖縄がこの本のようなものではないのでしょうが、でもそこには東京にはない人との繋がりがあると信じたくなります。

映画はどうなんでしょうね。父親 、豊川悦司 、 母親 、天海祐希じゃあイメージ違うような。
1960年代以降の学生運動のことを知らなくても、おもしろく読める本です。暇つぶしにどうぞ。
 
 

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