バレエ・ダンサー、岩田守弘2008/12/11

昨日、ボリショイ・バレエの「明るい小川」でアコーデオン弾きを演じた岩田さんが、NHKの「プロフェッショナル」に出演しました。
彼は220人いるバレエ団の中で唯一の外国人専属ダンサーです。
このことがどれほど大変なことか、番組を見てわかりました。

岩田さんの父親はバレエダンサーで、9歳からバレエを始めます。
高校卒業後、ソ連で学びたいと思い、モスクワ・バレエの研修生となります。
そして、いろいろなコンクールに出場し、優勝をします。
ボリショイに入ろうとしますが、彼を受け入れてはくれませんでした。
その後変革の年にバレエ団の総裁が代わり、初の外国人ソリストとして入団することができました。
しかし、入れたのはいいのですが、役がもらえない。このことで苦しい思いをします。
岩田さんのすごいところは、それでも練習を続け、ひたすら技術を磨いたことです。
バレエ団が「ファラオの娘」を上演するときに、岩田さんは芸術監督に役を欲しいと言いに行きます。
そして言われたのは、「バレエ学校の生徒に与える役ならある」
その役は、着ぐるみを着た猿の役でした。
元バレリーナの奥様は反対しましたが、彼は猿の役をやることにします。
彼はリアルな猿を踊りました。
たった1分ちょっとの出番しかなかったのに。
おもしろいことに、この猿が評判になり、ロシアに渡って11年目に、『白鳥の湖』の道化役に抜擢されます。(写真)
辛いときにささえてくれたのは、親、家族、友人だと言います。

彼の父は、身長が166センチしかなく、王子を踊れないことに悩んでいる彼にこう言いました。

「道化でいいじゃないか。世界一の道化になれ」

この一言で彼は自分の欠点を最大限に生かすことができるようになったのです。
岩田さんはこう言います。

「弱みは最大の強みになる」

「悪い時は宝物」

「苦しければ苦しいほど外からも内からも磨かれていく。いい時は成長していない。悪い時に成長している」

彼は今、38歳です。
38歳はダンサーにとって引退の年といいます。
でも彼は引退しようとは思っていません。
続けられるだけ続けるのだそうです。
何故なら、人間性は年齢と共に熟してくるから。
ともすれば、努力することをムダだとする傾向があります。
でも、努力せずに、何かを成し遂げることはできません。
成功する人は、諦めずに努力を続ける人なのかもしれません。
彼の言うプロフェッショナルとは…。

「冷たい目で見られても、舞台がどんなでも、穴が空いていようが、寒かろうが、どんな時でも、どんな場所でも、周りがどんなでも、自分のすることをしっかりできる人」

番組の中で彼が言った、「舞台が怖い」という言葉が一番印象に残りました。
舞台ではその人が全部丸見え、丸裸になるからだと言うのです。
岩田さんの計算しない、がむしゃらな生き方が素敵でした。