万城目 学 『ホルモー六景』2008/01/21

『鴨川ホルモー』の番外編です。
今度は、鬼達の戦いを描くのではなく、ホルモーにたずさわる男女の心温まる恋のお話です。
六景というからに六話の話があるわけですが、私的には最後の「長持ちの恋」が好きです。
その話から、『鴨川ホルモー』の主人公だった安部君の友だち、高村君のちょんまげの理由がわかるのです。
前の話を読んでいないとわからないでしょうから、説明しますと、一人一人にあてがわれた鬼が全滅してしまうと、ある恐ろしい事が起こると言われています。
高村君は『鴨川ホルモー』ではちょんまげになってしまうのです。
ところが、この本ではちょんまげを切ってしまったらしいのです。
ちょんまげにはちゃんとした存在理由があったのです。

「長持ちの恋」では高村君はちょっとしか登場しませんが、いいことするじゃん、ホルモーの神さんは(もしいるとしたら…)と言いたくなるようなことが起こります。
この話は彼の知り合いの珠美の話です。
珠美がバイトをしている料亭に蔵がありました。
お皿を取りに行くように言われ、蔵に入った珠美は、長持ちが置いてあるのに気づきます。
長持ちを開けてみると、その中に板きれがあり、何やら文字が書いてあります。
珠美がその文字を読んでいると、いつのまにか彼女の手にはサインペンが…。
手が珠美の意志を無視し、勝手に文字を書き始めたのです。
次の日、長持ちの中をのぞくと、板には珠美への返事が書いてありました。
それから珠美は時空を越え、信長の家来であるらしい男性と長持ちを通じて文通を始めます。
やがて本能寺の変が近づきます。
さて、一体何が起こるのでしょうか。
かわいらしい結末です。
万城目さんって、意外とロマンチストなんですね。