上橋菜穂子 『蒼路の旅人』2008/03/09

「守り人」シリーズを前に紹介しましたが、『旅人』はその外伝です。
一番最初に書かれた『精霊の守り人』で、用心棒バルサに救われた新ヨゴ王国の皇太子チャグムがバルサと関係しないで活躍する話です。
主に、皇太子としての苦悩が書かれています。
くれぐれも「守り人」と関係ないからと言って読まないことのないようにして下さい。後の話に関係してきますから。
『蒼路の旅人』は、最終シリーズの『天と地の守り人』に繋がる話です。

チャグムは皇太子として認められてはいても、父の帝からは疎んじられており、いつ暗殺されるのかわからない状況です。
その頃、タルシュ帝国が周りの国を征服し枝国(属国)にしていました。
その脅威が新ヨゴ王国にまで迫っています。
父の帝は、自分は神の子、国を導く力を神から授けら、新ヨゴ王国は天ノ神にまもられていると思い込んでいます。
そのため、新ヨゴ王国は神聖な国なのだから、周りの国と同盟を結んでまでして、タルシュ帝国と戦うなどというようなことは考えられないのです。
鎖国をして、生き残ろうと考えています。
チャグムはタルシュ帝国が攻めてきた時のことが想像できます。
父は国と共に滅びるなら本望なのでしょうが、それは民のことを考えていないのです。
民が苦しむのです。
心優しいチャグムはそれが許せないのです。
あくまでも平和な解決法を探っていくのです。

そんな時に、サンガル王国から援軍を送ってほしいという親書が来ます。
罠であるとチャグムは感じるのですが、上手く説明できません。
帝はサンガルへ戦闘帆船を二十隻、援軍として送り、チャグムの祖父であり、海軍大提督であるトーサにその艦隊をみちびくように命じました。
サンガル王家のサルーナ姫からチャグムに文書が来ます。
それはせざるえない裏切りをわびる内容でした。
帝に見せるのですが、それが裏目になり、チャグムはトーサを助けるようにと命じられるのです。
ここからチャグムの長い旅が始まります。

「守り人」シリーズは「サグ」という人がくらす世界と、「ナユダ」というサグとふれあって存在するもうひとつの世界の間で起こる話だったのですが、この『蒼路の旅人』から、チャグムが皇太子としてどう国を守っていくのかという話に変わっていきます。
私はよりファンタジーっぽい前の話の方が好きですが、チャグムがどう活躍するのかにも興味があります。

『天と地の守り人』は三部作で、いよいよシリーズの最終巻です。
バルサがチャグムを助けに行きます。
さて、どういう終わり方をするのでしょうか?