遠藤彩見 『給食のおにいさん』1~32015/08/12



本屋に平積みになっていたのを何回か見て、気になっていた本です。
絵がかわいいし、なんとなく「給食のおにいさん」という言葉が頭の中に入ってきて居座るんです(笑)。
なんなんでしょうね。
学校で食べた給食の思い出はあまりないです。
中学校の時に班ごとに食べていて、バカなことをする男の子が笑いすぎて牛乳を吐いてしまい、先生に怒られたことぐらいですか。
おいしかったのは・・・定番のカレーとシチュー、きなこのついた揚げパンかな。
今のように「食育」なんて言葉がなかったので、この本に出てくるような食育授業もなかったし、給食を作ってくださっていた方々とふれあうこともなかったです。
今の子供たちは幸せですね。

佐々目宗は祖母の影響でシェフになったのですが、頑固で融通がきかなくプライドだけが高いために周りの同僚たちとうまくやっていけず、そのため転々と店を変わり、やっと自分の店を持てたと思ったら火事で焼けてしまい、どうしようもなくなって給食の臨時調理員になりました。
色々なコンクールに入賞している一流シェフのおれなら給食ぐらい簡単にできると思っていたのです。
ところがレストランのシェフは味を大事にしますが、給食は「一に安全、二に栄養、カロリー、塩分。味は二の次」。
しかも短時間に大量の料理をしなければなりません。
彼の自信は脆くも崩れていきます。
その上、犬顔の栄養士、毛利やマトリョーシカのような三人の給食のおばさんたちに振り回され、思ってもみない形で子供たちと関わることが多々あり、大変な毎日です。

『給食のおにいさん』シリーズは『給食のおにいさん』から『給食のおにいさん 進級』、『給食のおにいさん 卒業』と続きますが、最初は給食のおにいさんをやっている自分に卑屈になっていた宗が、色々な人たちと接するうちにだんだんと自分の行く道を明確に意識し始め成長していきます。

軽い話かなと思って読んでいましたが、とんでもない。
今の給食や子供たちの実態の一端を垣間見ることができました。

『給食のおにいさん 卒業』ではウルウルしてしまいました。
この本だけは人前で読まない方がいいでしょう。

三巻で終わりかと思ったら、四巻も発売されています。
新しい一歩を歩んだ宗が次にどうなっていくのか。
読んでみようと思っています。