原田ひ香 『あさ酒』2024/11/06

「ランチ酒」シリーズの続編で、主人公が犬森祥子から水沢恵麻になります。


26歳の恵麻はコロナ禍が始まって三年目の秋に住まいと恋人を失った。
不幸は続くもので、派遣先の会社の契約が更新されず、新しい派遣先も見つからない。
それなのに、コロナに罹ってしまう。
このまま死んでしまうのかと思っている時に現れたのが、便利屋「中野お助け本舗」の社長の亀山と祥子だった。
彼らは娘を心配した恵麻の両親から相談され、やって来たのだ。

コロナから復活し、恵麻は祥子のシェアハウスに引越す。
無職であることを隠していたが、知られてしまい、恵麻は祥子から見守り屋の仕事をやってみないかと誘われる。

見守り屋の勤務時間は夜二十二時から翌朝五時までで、仕事は人の家に行って、一晩、その人を見守ること。

恵麻が見守るのは、一人暮らしの老女、娘が結婚して家を出て行ったという五十代の女性、年老いた犬、マッチングアプリで出会った男性に振られた女性、パチンコ依存症の主婦、祥子の恋人の角谷一希、愛人をしている女性、三代続く芸者家族の母親、気分が落ち込みやすいという女性、中学受験を控えた男の子、空港ラウンジで働いている女性、亀山と祥子の友だちの女性など。
それぞれの人にはそれぞれの見守られたい理由がある。
恵麻は様々な人と出会い、話を聞くことにより、傷を癒やし、人として成長していく。

祥子は仕事帰りのランチのお供にお酒を注文して飲むのが自分へのご褒美でした。それにならって恵麻は朝食のお供にお酒を注文して飲むのを自分へのご褒美としたようです。
覚えていないんですが、同じ仕事なので終わる時間は変わらないはずなのに、なんで祥子はランチで、恵麻は朝食なんでしょう?
老婆心ながら気になったのが、お金です。お高いお店ではないのかもしれませんが、そんなにお金を使っても大丈夫なんでしょうか。

人として祥子の方が好きなので、主人公が恵麻に変わってちょっと残念です。
年齢的に祥子に近いということもあるのでしょうけどね。
祥子の幸せは素直に嬉しくなりますが、恵麻のした選択は止めた方がいいと思いました。
年を重ねたからできることと、若いからできることは違うのでしょうけど。

残念ながら飲めない私には仕事明けの一杯のおいしさは想像するしかありません。
それに恵麻の食べるものがコッテリ気味で、おいしそうだとは思いますが、食べてみたいとは思えませんでした。
でも、二、三十代の若い人なら、『ランチ酒』よりも『あさ酒』の方が読みやすいでしょうし、お店も合っているかも。
是非、美味しいあさ酒を味わって下さい。


「ランチ酒」シリーズ。
①『ランチ酒』(2017年11月)
②『ランチ酒 おかわり日和』(2019年7月)
③『ランチ酒 今日もまんぷく』(2021年6月)