桐野夏生 『ダークネス』2025/10/06

桐野夏生の新刊はできるだけ読むようにしていますが、今回は失敗してしまいました。
この本は村野ミロ・シリーズの最終巻で、後五冊あり、20年前に発行された『ダーク』の続編だというではないですか。
読み終わってから気づきました。
知っていたら少なくとも『ダーク』を読んでからこちらを読んだのに。
まあ、20年前に読んでいても内容を忘れている可能性が強いですけどww。


ハルオは那覇の大学の医学部に通う20歳の学生だ。
シングルマザーで「ダークエンジェル」というバーを経営しているミオに育てられた。
ミオの子育てはかわっていて、友達を家に呼ぶことは禁じられており、母親のことを聞かれても詳しいことは絶対に言うなとも言われていた。
そのためハルオは不必要なことは一切喋らない代わりに、他人にも訊こうともしない、一風変わった少年になった。

ある日、バイト先のゴルフ場で鄭健太郎という男と出会ったことから、ハルオの人生は変わっていく。
ミオの隠していた過去と自分の出自を知り、ハルオは「悪」がどれほどのものかを確かめるために東京に行く。

60歳になったミオは愛する男とやっといっしょに暮らせると思ったが、人生はままならない。
魔の手は息子にまで伸びていた。
息子を守るために、彼女が選んだこととは・・・。

ノワールエンタメとのことですが、前作を読んでいないので、ミオがどれほど壮絶な人生を歩んできたのかわかりませんでした。
「四十歳になったら死のうと思っていた」と言われても、「そうなの…」としか思えなくてね。
やっぱり『ダーク』を読んでいた方がいいようです。

いつまでも復讐心を持ち続けている老女やヤクザさんたちには怖ろしさしか感じません。元々人間的な感情が欠けているサイコパスなんでしょうか。
ハルオは女に弱いお馬鹿さんですが、そんな息子でも、母と子の絆は強いんです。
途中から『ババヤガの夜』みたいな暴力の世界を期待しましたが、桐野さんですからそこまでは行きませんでした。

いつになるのかわかりませんが、一作目の『顔にふりかかる雨』から読んでみることにします。
この本だけでも面白いですが、前の作品を読んでいると思い入れが強い分だけ、もっと面白くなりそうです。

コメント

_ ろき ― 2025/10/06 19時34分28秒

20年前に『ダーク』を書いたとき、この作品は頭にはなかったでしょうね。でもしっかり世界ができているから、人物が引き続き生きている。作家ってすごい。
これは順をおって読んだほうがよさそうですね。

_ coco ― 2025/10/07 06時47分34秒

ろきさん、ひょっとしたら桐野さんはハルオを二十年間育てていたのかも。
そう思わせるような作品です。
怖いもの見たさで、一作目から読んでみます。

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