石田衣良 『てのひらの迷路』 ― 2007/12/26

川端康成の『掌の小説』のように書いたのが、この『てのひらの迷路』です。
毎月原稿用紙10枚、好きなように書くという、小説家ならすぐ飛びつく依頼に、石田衣良が楽しんで書いた短編集です。
作品の前に、石田がどういう気持ちで、どういう意図でその作品を書いたのかが書いてあります。作家の種明かしです。
きっちり二年間書き続け、ちょうど24の作品があります。
私の中に残った作品があります。
今の私だからこそ、心に残るのでしょうね。
小説はいつ読むかがとても大事です。
読んだときに、心が望んでいなければ、何の印象もなく読み終わってしまうのですが、この「無職の空」は今の私にぴったりな内容でした。
主人公の陽司が、編集プロダクションを、予期せぬ出来事で辞めてしまう話です。
発端はボーナスの査定。
馬鹿にしていた上司が、査定を最低のDにしていたということを聞き、上司に理由を聞くのですが、何も言いません。
そこで社長にその理由を聞いて欲しいと頼みに行った時のことです。
社長がかすかに面倒くさそうな表情を浮かべます。
その表情を見たとたんに、気持ちがあふれてしまい、陽司は「今日限りで会社を辞めさせてもらいます」と言ってしまったのです。
本当にこの気持ち、よくわかります。
彼ほど思い切りがよくありませんが、何度「辞めます」とでかかったことか。
「労働というのは、企画を立案したり、原稿を書いたりするだけではなかった。職務とはまったく関係ない苦痛に耐えること。それが過半である」
この一節に、その通り、と思ったのです。
陽司は「辞める」と宣言した後、会社を出て、横浜まで行きます。
元町でカシミアのマフラーを買い、オムライスを食べ、氷川丸の見えるベンチに座り、本を読み、居眠りをします。
読みながら、私も彼と同じようににベンチに座り、遠い空を見上げ、彼と同じように「働いても働かなくても、どちらでもいいこと」と思うのでした。
どこにも属さないという、足場のない不安感もあるけれど、どこにも属さないという、そういう爽快感もある。
この作品は私小説だとのこと。
石田さんもこういうことをしてたのですね。
ちょっぴり、自分に近いものを感じてしまいました。
小説を書いたきっかけも、婦人雑誌の星占いにインスピレーションを受けたかららしいし…。
人の人生って、そういう何のことはないことで決まったりするものなのかもしれません。
そのきっかけを気づくかどうかは、その人の運?
毎月原稿用紙10枚、好きなように書くという、小説家ならすぐ飛びつく依頼に、石田衣良が楽しんで書いた短編集です。
作品の前に、石田がどういう気持ちで、どういう意図でその作品を書いたのかが書いてあります。作家の種明かしです。
きっちり二年間書き続け、ちょうど24の作品があります。
私の中に残った作品があります。
今の私だからこそ、心に残るのでしょうね。
小説はいつ読むかがとても大事です。
読んだときに、心が望んでいなければ、何の印象もなく読み終わってしまうのですが、この「無職の空」は今の私にぴったりな内容でした。
主人公の陽司が、編集プロダクションを、予期せぬ出来事で辞めてしまう話です。
発端はボーナスの査定。
馬鹿にしていた上司が、査定を最低のDにしていたということを聞き、上司に理由を聞くのですが、何も言いません。
そこで社長にその理由を聞いて欲しいと頼みに行った時のことです。
社長がかすかに面倒くさそうな表情を浮かべます。
その表情を見たとたんに、気持ちがあふれてしまい、陽司は「今日限りで会社を辞めさせてもらいます」と言ってしまったのです。
本当にこの気持ち、よくわかります。
彼ほど思い切りがよくありませんが、何度「辞めます」とでかかったことか。
「労働というのは、企画を立案したり、原稿を書いたりするだけではなかった。職務とはまったく関係ない苦痛に耐えること。それが過半である」
この一節に、その通り、と思ったのです。
陽司は「辞める」と宣言した後、会社を出て、横浜まで行きます。
元町でカシミアのマフラーを買い、オムライスを食べ、氷川丸の見えるベンチに座り、本を読み、居眠りをします。
読みながら、私も彼と同じようににベンチに座り、遠い空を見上げ、彼と同じように「働いても働かなくても、どちらでもいいこと」と思うのでした。
どこにも属さないという、足場のない不安感もあるけれど、どこにも属さないという、そういう爽快感もある。
この作品は私小説だとのこと。
石田さんもこういうことをしてたのですね。
ちょっぴり、自分に近いものを感じてしまいました。
小説を書いたきっかけも、婦人雑誌の星占いにインスピレーションを受けたかららしいし…。
人の人生って、そういう何のことはないことで決まったりするものなのかもしれません。
そのきっかけを気づくかどうかは、その人の運?
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