カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』2009/01/07

カズオ・イシグロは名前からわかるように、日本の長崎で生まれ、後にイギリスに帰化した作家です。
5歳でイギリスに渡ったため、すべての作品は英語で書いています。
本人曰く、親との会話は日本語でも5歳の日本語だと。

『わたしを離さないで』の舞台は、ある目的のために作られた施設ヘールシャム。
そこで主人公である介護人キャシー・Hは育ったのです。
最初、ヘールシャムのことはイギリスの寄宿舎のようなものかと思っていました。
読み進むうちに、だんだんと明らかになってくるのですが、そこは臓器移植のためのクローン人間を集団で育てる場だったのです。

介護人とは、臓器提供者のそばにいて、精神的な支えになるような係りのことです。
キャシーは介護人を11年以上もやっていますが、今年限りで止めようとしています。
本には書いてありませんが、介護人を止めるということは、臓器提供者になるということなのでしょう。

キャシーの記憶の中にあるヘールシャムと友人の思い出が淡々と語られています。
クローンでも感情はあるから、楽しいこともあれば、悩むし、苦しむ。
でも彼らは外の世界のことを知りながら、ヘールシャムから出ようとはしません。
ヘールシャムから出されても、臓器提供者としての自分達の使命を静かに受け入れるのです。

何故なんだろう?
そういう思いで読み進みました。

何度も出てくるヘールシャム。
子供時代の記憶は人の人生で生きるための糧になりうるのかもしれません。

英語でもう一度読み返してみたいと思います。

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