畠中 恵 『まったなし』2015/12/07



「まんまこと」シリーズの第5弾です。
「江戸町名主の跡取り息子・麻之助が、幼なじみで町名主を継いでいる色男・清十郎と、堅物の同心・吉五郎とともに、さまざまな謎ともめ事の解決に挑む」というシリーズです。

今回のメインは清十郎の嫁取りです。
父の死後、町名主を継いだ清十郎は周りから早く嫁をと望まれ、色々な女性を連れてこられ、押しかけられています。
残念ながらなかなか清十郎のお眼鏡にかなう女性はいません。
しかし、ご近所のもめ事を解決していくうちに、いい出会いがあります。
運命の人は一体・・・。

妻を亡くした麻之助は周りからは頼りなく思われていますが、とんでもないと私は思います。
人の心の機微がわかっているんです。

結婚相手から「好いている」と言われたいと言うお安に麻之助は言います。
「惚れられるか、惚れるなら、自分が惚れる方が、ずっといいと思うけどね」
「自分から、好いてますと言うのも、良いものなんだよ。ちょいと気恥ずかしいけどさ」

私には麻之助が酸いも甘いも知るご隠居さんのように思えます。
心がほっこりくるお話です。