「はるの味だより」シリーズ2025/01/11

佐々木禎子の「はるの味だより」シリーズの四冊を紹介します。


『思い出牡蠣の昆布舟』
文政(1823年)六年。
二十二歳になるはるは江戸に行方知らずの兄を探しに来た。
縁があって花川戸町のお気楽長屋の木戸番の隣にある一膳飯屋『なずな』で住み込みで働いている。
はるの作る料理は、薬売りだった父が作ってくれた思い出の料理だ。
はるの父は男手ひとつで二人の子を育てながら、日本国内のあらゆるところに薬を売り歩いていた。
しかし、はるが十二歳のときに父が亡くなり、ひとつ年上の兄の寅吉ははるを下総の親戚に預けて、どこかに行ってしまった。
十年が経ち、絵師の彦三郎が行方知らずの兄の手紙と金一両をたずさえて現われた。はるは彦三郎に頼み込み、江戸について来た。
『なずな』は彦三郎に紹介された店だ。
店主の治兵衛は薬種問屋・中野屋の元店主で料理などしたことがない。
『なずな』は彼の次男の店で、次男が亡くなった後に何を思ったのか、隠居して『なずな』を継いだのだ。そんなわけで、店には閑古鳥が鳴いていた。
はるが父が作った料理をもとに、きんぴらごぼうとか昆布豆、納豆汁やその時にある材料で料理を作って出すようになると、少しずつお客が入るようになる。

『口福の祝い笹寿司』
治兵衛から一膳飯屋『なずな』を任されてから二ヶ月。
少しずつ客も戻り始めている。
はるは『なずな』を訪れる客たちに「美味しいものを食べに来たんだ」と言ってほしくて頑張っているが、受け入れられない料理もある。
はるは一体自分は『なずな』をどんな店にしたいのだろうかと考え始める。
そんな時に、御薬園勤めの同心・笹本から紹介され店にやって来た本草学を学ぶ学者の竹之内勝俊が、壁にはってあった彦三郎が描いた寅吉の似姿を見て、はるの兄が長崎の出島でシーボルトと一緒にいるのを見たと言い出す。
兄を探しに長崎に行こうかどうか、悩むはる。
そんなはるに治兵衛は挑む。
治兵栄の妻が作っていた笹寿司を作って、美味しかったら『なずな』にいてもいいが、まずかったら、長崎に行けというのだ。

『思いの深さの花火弁当』
『なずな』で働き始めてから半年。納豆汁だけではなく、稲荷笹寿司までもが他の店で真似されるようになる。馴染み客たちは怒っているが、はるはピンとこない。
そんなはるに治兵衛はまた無理強いをする。
はる独自の豆腐田楽を作り、五升の稲荷笹寿司を売り切ること。
季節は春。はるは花見客に花見弁当として稲荷笹寿司を売ることを思いつく。
売れ残りの福寿草を買ったことから仲良くなった棒手振のみちは木戸番の与七に想いを寄せていた。与七もどうやら脈があるようだ。はるたちは二人のために一肌脱ぐことにする。

『秘めた想いの桜飯』
文政七年の夏。
『なずな』に悪い噂がたち、客が離れていった。それでも以前からの馴染みの客は来てくれる。
きっかけを作った岡っ引きの八兵衛は噂の出所を調べた上で、そのお詫びとして知り合いたちを『なずな』に連れてきた。その中に幕下の相撲取りの金太郎がいた。彼ははると同じあやまり癖があり、相撲も弱腰。八兵衛ははるに金太郎のあやまり癖を吹き飛ばす料理を作ってくれと頼む。後にこの金太郎に『なずな』は助けられることになる。
ある日、しばらく『なずな』に来ていなかった彦三郎がやって来る。
はるの作った烏賊飯を見て、店を閉めた後にまた来るから一杯のこしておいてくれと言って帰って行く。

十二歳ぐらいで、父親の作った料理を覚えていて作れるものか、なんとも言えませんが、はるは食いしん坊のようなので、父が料理を作る姿をよく見ていたのでしょうし、料理の才能があったのでしょうね。
私はお兄さん探しはどうでもよくて、出てくるお料理を楽しみに読んでいたのですが、驚いたことに四巻で終わってしまいました。
もう少し、彦三郎とのこととかお兄さんのこととか書けますよね。
出版社の都合なのか、四巻で終えるという契約だったのか。
ネタバレになってしまいますが、四巻目で、バタバタと結婚が決まり、急にお兄さんが現われ、唖然となりました。あまりにも唐突すぎます。
でも最後はハッピーエンドなので、長々と続くよりは潔いです。
似たようなシリーズが出ているので、生き残るのが大変でしょうね。
私は十分に楽しませて頂きましたので、仕方ないと諦めますww。