堂場瞬一 『昨日への誓い 警視庁総合支援課3』 ― 2024/09/05
最近、物書きで亡くなる方が多いですね。
その中でも、詩人の新川和江さんの「わたしを束ねないで」と佐々涼子さんの『エンド・オブ・ライフ』と『エンジェルフライト』がお勧めです。
是非、読んでみて下さい。

警視庁総合支援課の柿谷晶は斎木道男の妹、清水直子からの電話を受ける。
斎木が亡くなったという。
斎木は支援課が扱う初めての被害者家族で、彼の娘の事件が支援課のベースを作ったのだ。
斎場には斎木とずっと連絡を取り合っていたという元支援課スタッフで警察OBの大岡が来ていなかった。そのことに違和感を感じる晶。
大岡と連絡が取れないということを聞き、気になると放っておけない晶は、休日を潰して御殿場まで大岡に会いに行く。
大岡とは会え、連絡がつかなかったのは、携帯を変えたからだとわかる。
しかし、大岡は斎木と会っていないと嘘をつく。
彼の嘘が気になった晶は、翌日、再度大岡に会いに行く。
すると、大岡の妻、美智から大岡がいなくなったと言われる。
大岡が最後に勤務していた世田谷南署の知り合いによると、彼は所轄で何か独自に調査をしていたという。
支援課の仕事をしつつ、晶は大岡の嘘を追及するために、彼を探し始める。
チャレンジ系YouTuberなどという人が出てきました。
正義感から犯人を追いかけたとか言っていますが、そうじゃないでしょう。
ネタになるから追いかけたんでしょうと言いたくなります。
もう迷惑系YouTuberと名前を変えた方がいいようですねww。
相変わらずの晶ちゃんです。
気になると放っておけないんですって。お節介ですね。
何を言っても受け付けないので、支援課の仲間は彼女の行いにドキドキしながら、見守っています。
このまま一人で突っ走っていくなら、独りよがりになってしまい、被害者家族にも加害者家族にも相手にされなくなってしまいますよ。
支援課内にも支援しないといけない人がいますか。
支援課のみなさん、大変ですね。
良いことがありました。
村野が愛と結婚し、支援課に戻って来ています。
村野が晶のストッパーになるのかな?
今回は大友は言葉でしか現れず、ガンさんがちょこっと登場します。
晶のことが嫌いと言いながら読んでしまう私はなんなんでしょうね、笑。
「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ
①『壊れる心』(2014年8月)
②『邪心』(2015年10月)
③『二度泣いた少女』(2016年8月)
④『身代わりの空』(2017年8月)
⑤『影の守護者』(2018年8月)
⑥『不信の鎖』(2019年8月)
⑦『空白の家族』(2020年8月)
⑧『チェンジ』(2021年8月)
「警視庁総合支援課」シリーズ
①『過ちの絆』(2022年8月)
②『最後の光』(2023年8月)
③『昨日への誓い』(2024年8月)
読んだ文庫本と漫画 ― 2024/08/22

ほしおさなえ 『琴子は着物の夢を見る』
琴子はリユース着物を扱う「本庄の蔵」で古着の査定をしている。
店主の柿彦とは姉弟の様に育ち、社交性のない琴子とは気が合う仲だ。
琴子が着物の世界に入ったのは、育ての親から着物の見方を教わっていたこともあるが、琴子には不思議な力があるからなのだ。
琴子は着物に触れると頭の中に着物の来歴、すなわち持ち主の強い思いや風景、人の姿が浮かんでくるのだ。
ある日、琴子と柿彦は着物の出張買い取りに行く。
買い取りは上手くいくが、その後、売主が祖母の物だという一枚の銘仙の着物を見てもらいたいと言う。
琴子はこの着物に不穏な空気が漂っているのに気づく。心の蓋を少し開けてみると、声が聞えた。
とりあえず着物と、着物といっしょにはいっていた雑誌を借りていくことにする。
琴子は着物にこめられた戦前の秘めた思いを手繰っていく。
ほしおさんの新しいシリーズで、今度は着物を取り上げています。
八王子というと、ユーミンの実家が呉服屋というのは有名ですよね。
八王子は「桑都(そうと)」と呼ばれていて、古くから養蚕や織物が盛んだったんだそうです。
失われていく日本の古き良き物が、こういう風に本に書かれることにより、残され継承されていくようになるといいですね。
椹野道流 『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』
元イケメン俳優、現在「ばんめし屋」の店員という五十嵐海里は俳優の倉持悠子に師事し、朗読のレッスンを受けている。悠子が病気療養中と言うことで、自主練に励む毎日。
そんなある日、練習場のある淡海の家から出たところで黒いラブラドール・レトリバーと出会う。淡海と海里が犬に着いて行ってみると、彼は一軒の家の中に入って行き、そこで淡海は遺体となった飼い主を見つける。
黒ラブはマヤと名づけられ、淡海が一時的に保護することになる。
ところがマヤを引き取ってから淡海の周りで不思議なことが起こる。
松葉が家の中のあちこちに落ち、海里に声が聞えたのだ。
このシリーズも長くて、20巻目です。
ラブラドール・レトリバー、可愛いですよね。家は10㎏以上の犬はダメなので、飼えませんが。わんこのおかげでいつも以上にほっこりするお話になってます。
今頃気づいたのですが、テレ東でドラマ化されていたのですね。
秋川滝美 『ソロキャン!3』
榊原千晶、三十一歳。総合スーパー『ITSUKI』を軸とするグループ会社『五木ホールディングス』に勤めて七年。近頃、学生時代に楽しんでいたキャンプを再開。
第一話「二泊三日のキャンプ」
キャンセルが出たということで、二泊三日で父親の友人の息子が管理人をしているキャンプ場に行く。孫の美来が進路に悩んでいるということだ。
第二話「ご褒美キャンプ」
人事異動で、千晶は商品開発部の主任となる。そのため車で二時間かかるキャンプ場でご褒美キャンプをすることにする。今回は中華鍋を買い、中華に挑戦!ついでに仕事のレシピ紹介に使えるかと思ったら、結構大変だぁ…。
第三話「花恵の傷心」
商品開発部の『愛されキャラ』、野々村花恵が元気がないと思ったら、推しの動画配信者・治恩に恋人がいるのが発覚したという。
その上、花恵は治恩が主催したキャンプイベントのあとに結成されたキャンプグループに入っているが、そのグループのメンバー間でも問題が起っていて、キャンプに行けない状態だという。ソロキャンプよりもグループキャンプ派だという花恵はみんなとキャンプに行けるようになるのか。
千晶は花恵を火熾しメインの半日デイキャンプに誘い、火打ち石やファイヤースターターなどを使い火熾し競争をする。
第四話「迷える少年」
一泊の予定で初めての直火可のキャンプ場に行った千晶は、火を熾せるような空き区画がないというのに、火熾しをしようとする少年を見かける。山火事になっては大変と思った千晶は少年に声をかけ、自分の区画で火熾しをやるように言うが、結局、ご飯も食べさせることになる。時間が遅くなり、一人で帰らせるわけにはいかなくなり、困る千晶。どうする。
第五話「高圧的な管理人」
千晶は規則厳守と五月蠅い管理人のいるキャンプ場に行く。彼女は利用者の行動すべてを管理しようとし、特に火の始末に五月蠅い。彼女に腹を立てた利用者は『二度と来ない』と言い捨てて帰っていく。管理人がなぜあんなふうになったのか気になった千晶がネットで調べてみると…。
千晶ちゃんはカウンセラー志望だったらしいです。
そういう設定だからか、今回は色々と扱いに注意しなければならない人たちが登場しています。カラッと明るいソロキャンではないですねぇ。
美味しいキャンプ飯とお悩み相談、なんかそぐわないわぁ。
でもソロキャン好きは根暗なのかも。ひろしさんもどちらかというとそうだしね。
次回はもう少し日常の雑事を忘れられる内容でお願いします。
漫画でも面白いものがあったので、紹介しておきます。
猪川朱美 『鵺の絵師 14』
亡きひとたちへの生者の思いを絵にする菅沼英二郎。戦争は激化し、とうとう英二郎にも赤紙が来る。彼と彼と関わった人たちの戦後は…。
14巻で完結。戦後を知らない若い方々に是非読んでもらいたい作品です。
原作 七海仁 漫画 月子『Shrink 精神科医ヨワイ 12~13』
薬物依存症を描いています。相談先も載っていますので、興味を持った方は読んでみて下さい。
原作・漫画 ヨンチャン 原作 竹村優作
『リエゾンーこどものこころの診療所ー17~18』
『リエゾンーこどものこころの診療所ー17~18』
「離婚と子ども」と「依存症」が描かれています。
著者 モリコロス 監修 吉田直子
『猫と紳士のティールーム 1~4』
『猫と紳士のティールーム 1~4』
最初はキモいおじさんにしか見えなかった店長も慣れてきたのか、素敵に見えてきましたww。私がいつも思うのは、こんなティールームがあったらいいな、しかないです。
この前行ったコーヒーショップは女性二人の声が大きすぎたし、アフタヌーンティールームは並んでいるし…。どこか近所に人の少ない、いいコーヒーショップかティールームがないか、探し中です。
猫のキームン君、可愛いです。家のわんこの2倍以上の大きさで、抱きがいがありそうですね。
最後のティールームは私の趣味みたいな漫画ですので、紅茶好きの方以外は読んでも面白くないでしょう。
他のシリーズはオススメです。
畠中恵 『なぞとき』 ― 2024/08/21
「しゃばけ」シリーズ、第23弾。

「なぞとき」
犬神である、あの佐助が、頭から血を流している。一体誰に何をされたのか。
佐助は鳴家につけられたというが。
すると悪夢を食べる獏である場久が賭け事をしたいと言い出す。
佐助の怪我の事情を突き止めた者が勝者で、勝者は一つ、若だんなから望みを叶えて貰えるというのだ。喜ぶ長崎屋の妖たち。誰が勝者になるのか。
「かたごころ」
料理屋小島屋の娘、お照の縁談が破談になる。貧乏神の金次がまた謎解きをしようと言い出し、それにのる妖たち。
しかし、お照からなかなか話が聞けない。若だんなは栄吉の作った新作の辛あられを試してもらうということにして、お照に一軒家に来て貰うことにする。
ところが、その話を聞いた者たちが次々とあられを食べたいと言い出す。
当日、あられを配り、今日の集いは終わりだと言っても誰も帰ろうとしない。
困った若だんなたち。そこで若だんなの両親がいい案を考え出し、みんなに一軒家から出て行ってもらうが、お照たち三人の娘と一人の男が残っている。
男はお照の縁談相手で、お照に破談のわけを知りたいという。
果たしてお照は何を語るのか。
「こいぬくる」
賊が銭両替の店の次に、長崎屋に入ろうとしたが、若だんなはすぐに兄やらに知らせなかった。というのも、やってきたのが白っぽい仔と黒っぽい仔、仔犬が二匹だったからだ。この仔犬たちは鳴家たちの鍵を取ろうとしたが、白っぽい仔犬は逃げ、黒っぽい仔犬は小鬼たちに捕らえられた。
賊がこの仔犬たちの飼い主だと考えた若だんなたちは、ずっと楽に盗みができる根岸の寮に行ってみるが、賊は現れない。
数日後、父親の藤兵衛が飼い主を見つけ出した。そこに仔犬を連れていくと…。
「長崎屋の怪談」
若だんなの夢の中に女が現れる。若だんなは女に見覚えがないが、女は想い出してもらうまで、何度も現れることにしたと言う。
この話を聞いた屏風のぞきは場久の悪夢のせいではないかと言い出す。
若だんなは昼餉に場久を呼び出すことにする。
すると、家鳴たちが離れで天麩羅を食うとあちこちで言い回ってしまう。
みんなで天麩羅を食べていると、とんでもないことが起こる。
目の前の天麩羅が、動いて逃げたのだ。蓮根は蓮の花を咲かせた後、枯れ、貝柱は貝殻が現れて中身が消え…。
とりあえず、広徳寺の寛朝様に相談の文を書き、その日は結界を張り、休むことにしたが…。
「あすへいく」
番頭二人と手代一人が長崎屋の奉公を辞めることになった。藤兵衛は若だんなにその三人の世話を頼んだ。そんなわけで、若だんなは三人から今後の話を聞いていくと、三者三様に悩みがあるようだった。
さて、どう解決する、若だんな。
表紙の黒すけと白すけの二匹の仔犬は可愛らしいですねぇ。鍵に固執する犬なんて、珍しいですけどね。
絶対あってはいけないのが、天麩羅たちが逃げ出すってことです。実際にあったら恐ろしいですよね。食べ物が食べようとすると、逃げ出して行くんですから。トラウマになって、何も食べられなくなるかもww。
このシリーズも長く、なかなか若だんなが一人前にならないですねぇ。
永遠にこのまま続いて、畠中さんが亡くなって終わるなんてないですよね。(縁起でもないこと書いてしまい、すみません)
とりあえず、最初から紹介しときます。
1.『しゃばけ』(2001年12月)
2.『ぬしさまへ』(2003年5月)
3.『ねこのばば』(2004年7月)
4.『おまけのこ』(2005年8月)
5.『うそうそ』(2006年5月)
6.『ちんぷんかん』(2007年6月)
7.『いっちばん』(2008年7月)
8.『ころころろ』(2009年7月)
9.『ゆんでめて』(2010年7月)。
10.『やなりいなり』(2011年7月)
11.『ひなこまち』(2012年6月)
12.『たぶんねこ』(2013年7月)
13.『すえずえ』(2014年7月)
14.『なりたい』(2015年7月)
15.『おおあたり』(2016年7月)
16.『とるとだす』(2017年7月)
17.『むすびつき』(2018年7月)
18.『てんげんつう』(2019年7月)
19.『いちねんかん』(2020年7月)
20.『もういちど』(2021年7月)
21.『こいごころ』(2022年7月)
22.『いつまで』(2023年7月)
23.『なぞとき』(2024年7月)
二冊見つかりませんでしたが、読んだ覚えがあります。どこかに書いてあるかも。
京都が舞台のシリーズ(文庫本) ― 2024/08/19
フィンランド旅行以降、読んだ文庫本が今までにないくらい溜まっています。
遅くなると忘れてしまうので、早く紹介しなければとは思いますが、いろいろと用事があってできません。
できるだけまとめてご紹介します。

志賀内泰弘 『京都祇園もも吉庵あまから帖 9』
京都祇園の花見小路の奥にある甘味処「もも吉庵」に、様々な悩みを持った人たちが訪れます。
息子に希望を託し、ついつい厳しく当たってしまう父親。
京大を出たのに不運が続き、仕方なく京洛信用金庫に就職し、出世を目指し、ビジネスの提案をするが、提案先の社長に否定され、意味がわからず混乱する銀行員。
旅館を継ぐための一番大切なことがわからない跡継ぎ息子。
夫が亡くなり、夫の最期の望みを叶えられずに悔やんでいる妻。
そして、今回はもも吉が胸に秘めたとんでもない秘密が明らかになります。
本の中のなるほどと思える言葉。
「ほんまに強いお人いうんはなぁ、見栄なんか張らんと自分の弱いところもさらけ出して事を成すもんや」
「心の弱い人間やからこそ、人の気持ちがわかるんや」
「心の強い人はなぁ、心が弱い人の気持ちがわからはんのや。なんで、もっと努力せえへんのやろ、なんでもっと辛抱でけへんのやろて上から物を見てしまう。自分がでけるんやから、人にもでけると思うてしまうんや。そんな心の強い人には、心が弱い人は心の扉を開こうとはせえへん」
望月麻衣 『京都寺町三条のホームズ(21)メランコリックな異邦人』
ジウ・イーリンが10月から京都の大学院に留学することになる。
父親のジウ氏はいい機会だからと、好事家として知られている高宮宗親と親しくなり、彼が所有しているコレクションの中に『珍しい宝石』があるかどうか調べてほしいとイーリンに頼む。
そのためにイーリンは骨董品店『蔵』でバイトをすることにする。
しばらくしてイーリンは家頭清貴にそのことを相談すると、彼は彼女に探偵の小松を紹介する。
やがて宝石にまつわる秘密が暴かれる。
終わりが見えないシリーズです。
清貴と葵は婚約するのですが、なかなか結婚までには至らず、このままジラされていくのでしょうかねww。
合間に出てくる美術品のあれこれが読み甲斐があります。
柏井壽 『鴨川食堂ごほうび』
鴨川食堂は上賀茂神社の近くに移転した。
元刑事・流と娘のこいし、そして料理人の浩の三人で「鴨川食堂」を営んでいる。
この食堂を訪れる人たちには、探してもらいたい思い出の味がある。
今回のは、京都旅行で出会った男が食べさせてくれたスポンジケーキと新婚旅行で行った三陸宮子の民宿で結婚祝いだと出された雑煮、恩師の家で食べた蕎麦の鍋、リフォーム会社の若い男性が手土産に持ってきたホットドッグ、中高生の頃、母が作ってくれた弁当に入っていたまずい牡蠣フライ、五十年近く前の大学生の頃に付き合っていた男性が連れて行ってくれた京都のレストランで食べたヒレの網焼きの六品。
どうしても探してもらいたい味があるという人は幸せだと思います。たとえその思い出が悲しいものであっても。わたしなんか、何もないですもの。
いつも思うのですが、探しものを頼む前に食べる流さんのつくったお料理が美味しそうで、本当にこういう探偵事務所があったら、捜し物をでっち上げてでもいいから、流さんの料理を食べたいと思います、笑。
今や海外からの観光客が多く、前とは違う雰囲気になっていると思われる京都ですが、一番寒い2月にでも久しぶりに行きたいなと思いました。
できれば円高になって、来日する観光客が少しでも減っていて欲しいですww。
「京都寺町三条のホームズ」以外はどこから読んでもいいシリーズです。
少し前の京都の雰囲気に触れたいときに読むといいでしょう。
恩田陸 『spring』 ― 2024/08/07
人気の本で、図書館では今日見たら400人以上の人が予約待ちしています。

萬春(よろず はる)はバレエの神に愛された少年。
八歳でバレエと出会い、十五歳で海を渡った。
彼は唯一無二のダンサーであり振付師でもある。
「Ⅰ 跳ねる」
春と同じくバレエダンサーの深津純が語る、彼と春とのワークショップでの出会いから春の初期の振付のお話。
「Ⅱ 芽吹く」
春の母の弟、稔が語る、春の幼い日とバレエとの出会い、そして旅立ち。
「Ⅲ 湧き出す」
バレエを止め、作曲家になった美潮が語る春との仕事のお話。
「Ⅳ 春になる」
春が語る、恋人との出会いと別れ、創作への思い。
期待が強すぎたのか、お話の内容が予想外れで、ちょっとガッカリ。
三章当たりから飛ばし読みをしました。
なんなんだろう、振付の場面が多過ぎだからだろうか。
バレエ好きははまるんだろうか。
感想は人それぞれ。わたしには合わなかった。
わたしはバレエは好きなんだけど、それほどピンとこず、読まなくてもよかったかも。
<今月のおやつ>
わたしの好きなシヅカ洋菓子店の「No.54 Summer Biscuits」。

右からパッションフルーツジャムサンド、レモン、ダブルカカオ、ライ麦、5フルーツ、アーモンド。フルーツのいい香りがします。
「しあわせのお菓子」です。
桜木紫乃 『谷から来た女』 ― 2024/07/12

赤城ミワはアイヌ紋様デザイナー。
母親が九州出身の日本人で父親がアイヌ人。
背中に父親が彫ったアイヌの紋様がある。
ミワと関わる大学教授やデザイン学校の同期の女、教育通信の記者、レストランシェフ、北海道テレビプロデューサー、そしてミワの父母の出会いを描いた六つの短編集。
桜木さんの本を読むたびに、私の無知を思い知らされます。
北海道で育ったというのに、全く北海道のことを知らないのです。
今までアイヌ人に会ったことはありませんし、学校でアイヌの歴史や文化について学んだことはありません。
アイヌ人に対する差別と言われても、はっきり言ってわかりません。
「あなたに見えない壁が、わたしには見えるんだ」
というミワの言葉が心に刺さります。
時系列にそってお話が並べられていないので、戸惑うこともありますが、不思議な魅力のあるお話です。
北海道出身のわたしとしては、ミワの凛とした生き方に魅了されますが、それ以上に自らの無知さを見せつけられ、ちゃんと知ろうとしなければと思わせられました。知らないではすまされませんよね。
原田ひ香 『古本食堂 新装開店』 ― 2024/07/09
『古本食堂』の続編。

珊瑚と美希喜の鷹島古書店は順調だ。
しかし、美希喜が三冊二百円の格安文庫コーナーの値上げやレジ横をカフェスペースにしたいなどと言い出し、珊瑚は溜息をついてしまう。
カフェスペースのために本棚を動かすと、棚の裏側の壁にびっしりカビが生えていた。
まさか他の壁も同じなのか…。
美希喜はカフェスペースのせいで、今まで来てくれた常連さんが来なくなるのではと心配する。
現に来ない人がいる。
帯広にいる珊瑚の恋人の東山は手を骨折し入院したという。
それなのに珊瑚には連絡をくれなかった。
気になる珊瑚は思い切った行動を取る。
珊瑚は70代、美希喜は20代で世代が違いますから、古書店に対する思いが違うのは当たり前ですよね。
珊瑚さんってさっぱりした人かと思っていたら、どうもそうではないみたい。
美希喜ちゃんや東山さんとちゃんと話そうよぉと言いたくなりました。
でも珊瑚さん、最後は頑張ります。どうなったのかは次のお楽しみかな?
今回も味のあるお客様が来てくれました。
特に美希喜のお母さんの親戚の三姉妹がインパクトありました。
それぞれのお客様に紹介した本はどれもすぐに読めそうです。
わたしはモモちゃんシリーズを読んでいないので、気になりました。
もちろん美味しいご飯が出てきましたが、わたしが一番食べたいのは、岡田三姉妹が持って来た「日本で一番古いお弁当屋のお弁当」です。
どこかと探してみたら、日本橋弁松総本店のお弁当らしいです。
神保町ではないのね。
今度都心のデパ地下に行ったら探してみます。
ひ香さんは食べ物を食べて、お話している人の描写が上手いです。
わたしも中に入りたくなりました。
例えば六花亭の喫茶コーナーで、「うんうん、わたしも八百円のケーキなんか見たらぎょっとするよ」なんて言いたいわ。
六花亭、ショートケーキなんて326円よ。安い!
インバウンドのせいで、もしかして今年ぐらいから値上げとかないよね。
帯広には行ったことがないので、次回北海道に行くことがあったら行ってみたいです。
『古本食堂』を読んでいなくても、大丈夫です。
わたしもすっかり内容を忘れ、思い出しながら読んでいますからww。
小説家志望の奏人って誰?って感じで、未だに思い出せません。
お勧めの本です。
食にまつわるお話、三冊(文庫本) ― 2024/07/05
文庫本がたまっているので、三冊いっしょに紹介します。

柳瀬みちる 『神保町・喫茶ソウセキ 真実は黒カレーのスパイスに』
『神保町・喫茶ソウセキ』の続編。
神田神保町に文豪カレーが人気の喫茶ソウセキを開いて一年半。千晴もなんとか経営に慣れてきた。ところが突如、不穏な雰囲気が漂い始める。というのも、嫌がらせを受けるようになったのだ。
どうも大辛シムロという文学系VTuberが小説家・葉山トモキをぶん殴れとか、店を叩き潰せ的なことを言ったので、その信者がやったようだ。
なんとかシムロを突きとめるが、次々と事件が起り…。
ネットの影響って大きく、一旦起った嫌がらせはなかなかおさまらないものなんですね。
便利だけど、使う人の道徳観に任せられるのってよく考えたら、怖いかも。
新しい文豪カレーはシチューポットパイをカレーでアレンジした『太宰カレー』とタイのプーパッポンカリーをベースにアレンジした『林芙美子カレー』、昭和レトロに見えるけど辛口スパイシーな坂口安吾カレー。
そして、文豪には関係ないのですが、メキシコの『モレ・ポブラーノ』をベースにしてチョコレートを使った黒いカレーが出てきて、どれも美味しそうです。
嫌なことがあったけど、シェフ心が刺激され、美味しいカレーができればいいじゃないのと言いたくなりましたww。
斉藤千輪 『出張シェフはお見通し 九条都子の謎解きレシピ』
出張シェフの九条都子は様々な場所に呼ばれ、料理を作り、そこにあるトラブルを解決していく。例えば…。
①貸し切りのクルーザーで音楽家ロッシーニをテーマにした料理を作り、一歩が踏み出せない大学時代の後輩を勇気づける。
②入院していた母親の快気祝いを作った先の家で、母親が雑誌を山のように買っている謎を解く。
③料理提供に行った先の婚活パーティに数あわせに参加し、もてない男性をカップリングさせる。
④ハウスダイナーの三周年パーティで、意地悪な記者の取材に答えるために急遽フランス人シェフと即興で作る料理バトルをやることになる。
北海道の甘い栗の入った茶碗蒸しが出てきて、懐かしくなりました。
赤飯に甘納豆を入れるのと同様に、北海道以外ではあまり入れないのでしょうかね。美味しいのに。
都子の辛い過去が明らかになりましたが、続編がありそうな終わり方です。
長月天音 『キッチン常夜灯 クロックムッシュ』
『キッチン常夜灯』の続編。
前回の主人公はチェーン店「ファミリーグリル・シリウス浅草雷門通り店」の店長の南雲みもざでしたが、今回はチェーン店を経営している株式会社オオイヌの本社営業部に所属している新田つぐみです。
株式会社オオイヌは「女性活躍」を目標に、女性店長を増やし、その代わりにベテラン男性社員が本社勤務になっている。居場所を失った彼らに気を遣いながら仕事をしているつぐみは疲労困憊してストレスがたまっている。結婚を意識した彼氏との間も上手くいかず、電話も来なくなり、会うこともなくなった。
クレーム処理をして遅くなった日、みもざから店のパソコンの調子が悪く、売上げを報告できないかもしれないとの電話がくる。その後、みもざに連れて行かれた店が「キッチン常夜灯」だった。
そんなある日、つぐみはデザートメニューの開発をすることになる。甘い物が苦手なつぐみは困り、常夜灯のシェフに相談する。
会社がどこまで社員のことを考えているのかは難しいところですよね。
会社の「女性活躍」という勝手な目標のために、みもざもつぐみも大変な思いをしています。
でも会社がクレームを重く受け取ってくれたので、つぐみのなやみが解消されました。クレームって役立つものなのね。
世の中の頑張って働く女性のために、常夜灯のようなレストランがあればいいなぁ。
お腹が空いていると、美味しいお料理が食べたくなるお話です。
軽い本が読みたい時にどうぞ。
読んだ文庫本 ― 2024/06/25

ほしおさなえ 『言葉の園のお菓子番 未来への手紙』
一葉が亡くなった祖母が通っていた連句会「ひとつばたご」で連句を初めてから二年が経つ。
勤めていた書店が閉店し、無職になったが、今は連句仲間から紹介された谷中にある「あずきブックス」に勤めている。
ある日、一月の連句の大会で知り合った「きりん座」の城崎大輔からメールが来て、「きりん座」のメンバー数人があずきブックスに来ることになる。
そのことがきっかけになり、あずきブックスに同人誌を置くことになり、「ひとつばたご」と「きりん座」の交流が始まる。
「きりん座」の同人誌に、一葉は若い頃に夕やけだんだんを撮り、区のアマチュア写真コンクールで三席を取ったことのある父とのことを書く。
このエッセイに坂の写真を撮るのが好きな大輔が撮った夕やけだんだんの写真が組み合わせられることになる。
大輔が父の夕やけだんだんの写真を見たいというので見せると、同じ場所を撮影して、いまとむかしの二枚を並べ、そこに一葉がエッセイやイラストを描き、雑誌をつくろうという話になる。初回は谷中・根津。
さまざまな人との出会いから広がる未来。
一葉にやっと春が来るのか…。
今回出てくるお菓子の中に、「パティシエ ショコラティエ イナムラショウゾウ」のショコラがありました。ケーキは食べたことがありますが、ショコラはどうだったかなぁ?
しょうがとミルクチョコレートをつかい、夕やけだんだんをイメージしたという「谷中」は食べてみたいです。
家から遠くなったので、あまり行かなくなった谷中ですが、涼しくなったら行ってみようかしら。
仙川環 『カナリア外来へようこそ』
西武新宿線と西武池袋線の中間辺りにある街で、保泉クリニックは過敏症の人のために特別外来を始めた。
院長は保泉則子という無愛想で仏頂面の医師。看護師は優しいけれどおちょこちょいのレン君。彼女たちのところにさまざまな患者とその関係者がやって来る。
<1>においに敏感で、化学物質や人工香料のにおいを嗅ぐと頭痛がしてくると会社に言ってあるが、なかなか理解してもらえなくて悩んでいる若い女性。
<2>去年の冬から倦怠感と頭痛で起き上がれない。夫が退職して家にいる時間が長くなってからだ。夫源病か?夫とはもういっしょに暮らせない。家を出たいと思っている女性。
<3>昨年の夏に突如として味覚障害になり、塩味、甘味、苦味などを通常の何倍も強く感じるようになった料理人。
<4>かつて手足に発疹が現れ、腫れ上がった娘が日光や紫外線に弱いと決めつけ、外遊びをさせない妻に反旗を翻す夫。
<5>シックハウス症候群の対策をした注文住宅を手がけている馬塲の注文主が引き渡し後に頭痛がする、喉も痛い、この家はシックハウスだと言い出す。
家には問題がなく、持ち込んだ家財道具に問題があるのではないかと思うが…。
過敏症といっても色々とあるんですね。なかなか人には理解してもらえないものですよね。
「国や自治体、業界団体やメーカーへの抗議も必要だろう。でも、それだけでは足りない。理解してくれる人を増やす必要がある」
「無関心な人を一人理解者に変えたら、その人がさらに和を広げてくれるかもしれない」
「当事者と一緒になって、世の中を変えていく。寄り添うというのは、そういうことだ」
理解されないから、もう人に言うのは止めてしまおう、などと思ってしまいがちですが、その中の誰かが理解してくれるかもしれません。
疲れますが、言い続けることが大事なのかもしれませんね。
「カナリア」は炭鉱のカナリア、「まだ起きていない危険や、目で感知できない危険を知らせる人」のことです。
二冊ともお勧めです。
『カナリア外来へようこそ』は続きを書いて欲しいですね。
伊吹有喜 『娘が巣立つ朝』 ― 2024/06/14

五十四歳の自動車メーカーの関連会社に勤める高梨健一と着付け教室の講師をしている智子には二十六歳になる娘、真奈がいる。
四年前から一人暮らしをしている真奈は、歯磨きなどのマウスケア用品や洗剤などを作っている会社の総務課で働いている。
その真奈が大学時代の同級生の渡部優吾にプロポーズをされたという。
優吾は旧財閥系の工作機械関連の会社の名古屋支社に勤めている。
一月に優吾が家にやって来た。
彼は潔癖症ぎみだが、悪くはないやつだと思う健一と智子。
優吾は六月の人事異動で東京の本社に戻る予定なので、六月に結婚したいらしい。
ついでに真奈はマンションが来月更新で、これからお金がかかるので、家に戻りたいという。
娘とまた暮らせると思うと嬉しくなる健一だったが…。
優吾の両親がとんでもなく個性的で現代風の人たちだった。
母親は料理研究家でカリスマブロガー、マルコ。「オトコノコの福」という本でかつて有名になり、その本の中の男の子が優吾だった。
父親はカンカンという名でブログやSNSをやっている。肩書きは『ハッピィ・リタイヤメント・ファシリテーター』。
結婚式をどうするか、はじめから話があわない。
結婚する二人は普通の式がいいというが、式の費用はマルコとカンカン、マルコの両親、そしてカンカンの父親が援助するので、結婚資金をいちばん多く出す人の意見が最優先だと言う。
価値観や金銭感覚、生活のスタイルが違いすぎる。
真奈は優吾と結婚してうまくやっていけるのか。
娘の結婚話がきっかけとなり、健一と智子の間に不穏な空気が漂うようになる。
健一は会社で役職定年が近づき、会社の居心地が悪くなっていることに苛立っていた。
週末に三島の介護施設にいる母親に会いに行くうちに、音楽ボランティアをしている大田真理子と知り合い、昔、弾いていたギターをまた弾き始め、それが息抜きになった。
一方、智子は家で不機嫌な健一に辟易していた。
娘には優しい物言いなのに、わたしには顔に雑巾を投げつけるような話し方をする。
施設のSNSに載っている写真を見ると、わたしには見せたことのない笑顔を真理子に見せている。
仲のいい夫婦だと思っていたのに…。
最終的に智子は健一に「離婚 別居 卒婚」のどれか、決めるように迫る。
はたして智子と健一はどういう道を選ぶのか…。
まだ結婚をしていない方は、結婚しようとすると、いろいろ大変なことがあるかもしれないのね、という軽い感じで読んで下さい。ひとによって違いますからね。
もし親からの援助が欲しければ、口を出されても仕方ないと思って援助を求めようね。
本の中に出てきた次の言葉を贈ります。
「慈眼施 和顔施 愛語施」
「慈しみある眼、穏やかな顔、愛ある言葉。学問や大きな収入で貢献できなくても、ただそれだけで人は宝に等しいものをまわりに差し上げている」
結婚している40~50代以上の方は身に染みるかも。
お互いに空気のような存在になってしまい、不機嫌さを丸出しにしていませんか?
「不機嫌は暴力」だそうです。気をつけましょう。
「言ったところで何も変わらないって思ったとき、人は言葉の代わりにため息が出るんだね」
特に男性は女性がため息をつく時に気をつけて下さいませ。
怖いですよぉ、笑。
題名に引かれて、ほんわかした幸せな家族のお話を読もうと思ったら、とんでもないお話だったという感じです。
わたしは将来、高梨家の親も子も幸せにはなれないような気がしますがね。
<今週の美味しいもの>

久しぶりにスコーンを頼みました。
ASAKO IWAYANAGI PLUSのスコーンナチョレとクランベリーダージリンスコーン、すもものコンフィチュール。
飲み物はデンマーク王国王室御用達、A.C.パークスのルイボスバニラスクエアと
DEAN&DELUCAブレンドの紅茶。
ルイボスバニラが美味しくて、この頃のお気にいりです。
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