藤原新也 『なにも願わない手を合わせる』 ― 2006/11/08

「人間は犬に食われるほど自由だ」というパルコのキャッチコピーで知られるようになった藤原新也の本です。
『メメント・モリ』では、インドの風景が鮮烈でした。
彼は肉親が他界するたびに四国巡礼をするといいます。
今回はお兄さんが亡くなったので、三度目の巡礼を始めました。
彼のお兄さんは美食家で、手帳に飲食店の情報を書き付けていたといいます。
その彼が癌になり、壮絶な最期を迎えたのです。
その最期に不合理さを感じ、受け入れ難く思いながら、旅に出たのです。
彼の四国巡りは決められた八十八カ所を回るというのではなく、「四国という風土そのもの」を巡り、その「道すがら気が向けば寺を訪れるという」旅です。
旅の途中に、道ばたの地蔵に兄を見、蝶に父を見、死んだ母の最期を思い出します。
死の影と共に歩む、そういう旅です。
>肉親の死を思いながらも、藤原は現代の日本の現状にまで、思いを馳せます。
田舎の列車に乗ってきた少女。
彼女は席につくなり携帯電話を取り出し、自分の世界に浸ります。
着メロは何年か前に流行った浜崎あゆみの歌。
藤原は何故浜崎が若者に絶大なる人気があるのか、その訳を解いていきます。
彼女の歌は「迷子の歌」だといいます。
「まなざしの聖杯」を受けていない子、母親の無償の愛を受けていない子、そういう子たちは「まなざしを求めて世間をさまよう」のです。
彼の書いた「富士を見た人」という章も印象的でした。
何故か富士は昔から人々を魅了しています。
私自身も好きで、よく写真を撮っています。
その富士山の麓にある樹海は自殺の名所として有名ですが、こういう話もあるそうです。
ある女性が樹海に行って、死のうと思い歩いていました。
ふと見上げると巨大な山が目の前にありました。
その山が「自分を抱きしめてくれるなにかとてつもなく大きな人の心のように見え」、自殺するのを止めたといいます。
昔の人は富士山を神様として祀っていました。
富士の姿にこういう大きなものを見ていたのかもしれません。
祈りというものが、日常生活から消えてからだいぶ経ちます。
この本に出てきた少女のように、無心に何も願わず手を合わせることが、今必要なのかもしれません。
そういう気持ちにさせられる本でした。
『メメント・モリ』では、インドの風景が鮮烈でした。
彼は肉親が他界するたびに四国巡礼をするといいます。
今回はお兄さんが亡くなったので、三度目の巡礼を始めました。
彼のお兄さんは美食家で、手帳に飲食店の情報を書き付けていたといいます。
その彼が癌になり、壮絶な最期を迎えたのです。
その最期に不合理さを感じ、受け入れ難く思いながら、旅に出たのです。
彼の四国巡りは決められた八十八カ所を回るというのではなく、「四国という風土そのもの」を巡り、その「道すがら気が向けば寺を訪れるという」旅です。
旅の途中に、道ばたの地蔵に兄を見、蝶に父を見、死んだ母の最期を思い出します。
死の影と共に歩む、そういう旅です。
>肉親の死を思いながらも、藤原は現代の日本の現状にまで、思いを馳せます。
田舎の列車に乗ってきた少女。
彼女は席につくなり携帯電話を取り出し、自分の世界に浸ります。
着メロは何年か前に流行った浜崎あゆみの歌。
藤原は何故浜崎が若者に絶大なる人気があるのか、その訳を解いていきます。
彼女の歌は「迷子の歌」だといいます。
「まなざしの聖杯」を受けていない子、母親の無償の愛を受けていない子、そういう子たちは「まなざしを求めて世間をさまよう」のです。
彼の書いた「富士を見た人」という章も印象的でした。
何故か富士は昔から人々を魅了しています。
私自身も好きで、よく写真を撮っています。
その富士山の麓にある樹海は自殺の名所として有名ですが、こういう話もあるそうです。
ある女性が樹海に行って、死のうと思い歩いていました。
ふと見上げると巨大な山が目の前にありました。
その山が「自分を抱きしめてくれるなにかとてつもなく大きな人の心のように見え」、自殺するのを止めたといいます。
昔の人は富士山を神様として祀っていました。
富士の姿にこういう大きなものを見ていたのかもしれません。
祈りというものが、日常生活から消えてからだいぶ経ちます。
この本に出てきた少女のように、無心に何も願わず手を合わせることが、今必要なのかもしれません。
そういう気持ちにさせられる本でした。
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