佐野洋子 『あれも嫌い これも好き』2010/10/03



佐野さんの今まで読んだエッセイ集三冊よりも早い時期に出た本です。自分はエッセイ書きではないと謙遜なさっていますが、いえいえ、とってもおもしろいです。
 
まず、話題が豊富です。そして、なんといっても、私は私。世間の人がどう思おうが、私はこう思う、という世間に媚びない、潔さが気持ちいいのです。
 
森鴎外の娘、森茉莉のことを「偉大なナルシスト文学者」なんて言ってるところなんか、言い得て妙で、笑っちゃいます。
 
勘違いしないでください。佐野さんは茉莉さんの本が大好きなんです。『茉莉のひとりごと』の挿絵を描いています。この時、「夢かと嬉しかった」なんて書いてますから、どれほど好きなのかわかりますね。
 
ちなみに、こんな本(↓)。

かわいい表紙ですね。天使と花、左下には鴎外と幼い茉莉さんがいますね。この本欲しいです。
 
茉莉さん(の書いたもの)を愛するがうえの毒舌も冴えています。
 
佐野さんと茉莉さんは実際にお会いしたことはなく、佐野さんが下北沢を歩く茉莉さんを何度か見たことがあるそうです。
 
佐野さんの見た茉莉さんは、「変なバアさん」から始まり、「森茉莉のまわりには五センチ幅ぐらいのぼうっとした霧がかぶさっていて、森茉莉は霧ごと移動していた」なんて!
 
極めつけは、「ボッチチェリの春の海色のセーターと(茉莉が)呼ぶセーター」を、「緑色の胃薬を飲んだ次の日のウンコ色」と言うんですよ。ハ、ハ、ハ・・・。
 
幸せは外から来るものではなく、内から作るもの。そういう意味で茉莉さんは幸せな人だったでしょう。
 
佐野さんはこう書いています。

「私は森茉莉から沢山のものを学んだ。幸せで美しい世界は存在するものではなく、自分で勝手に創り出すものである、もうそれは、事実がどうであれ強引に創り出すものであって、それが出来る魂を大切に大切に手入れをしなくてはいけないという事であった」

この二人は会っても話が合わず、どう考えてもお友達にはなれそうにありません。
雲の上を歩くように、夢の世界に漂う茉莉さんと、なんでも見てやろうと、ギラギラした目でキョロキョロあたりを伺う、昔の日本の正しいバアさん志望の佐野さん。こりゃ、全然違うわ。

私の理想のバアさんはこのお二人です。
 
でも、育ちの悪い私は茉莉さんのようにはなれそうもありませんが、佐野さんのようにもなれそうもなく、う~ん、足して二で割るバアさんでいくしかないかも。ちょっとどっちつかずの存在感のない、幸薄のバアさんになりそう。
 

追伸:この本に出てくる、小さなバー、素敵ですね。行ってみたいのですが、どなたか知りませんか?

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