原田マハ 『常設展示室』 ― 2019/05/14
六編の短編に出てくる六人の女性たちのお話です。
彼女たちはみな美術館の常設展示室にある一枚の絵に引きつけられ、その絵をきっかけに人生の舵をきっていきます。
ピカソ≪盲人の食事≫
フェルメール≪デルフトの眺望≫
フェルメール≪デルフトの眺望≫
ラファエロ≪大公の聖母≫
ゴッホ≪ばら≫
マティス≪豪奢≫
東山魁夷≪道≫
ゴッホ≪ばら≫
マティス≪豪奢≫
東山魁夷≪道≫
気になったのが、一作目のお話です。
主人公の美青がある朝起きると、「視界全体がぎゅっと圧縮されてしまったような感じ」になり、何度もドアにぶつかりそうになったり、階段を踏み外したり、壁にぶつかりそうになったりします。
眼科のドクターに診てもらって分かった病名が「glaucoma」。
緑内障です。
病院に行った時は「ほとんど手がつけられないほど進行」してしまっていて、進行を遅らせるための手術をすればしばらくはしのげるけど、近い将来、視力を失うと言われ、仕事を辞めて手術を受けることにしたというのです。
緑内障患者の私だから気になるのですが、緑内障のことを知らない人が読むと、勘違いをされる恐れがあるなと思いました。
不幸にも美青のように気づかずにいて緑内障が進んでしまっていたなどということはあります。
でも、早いうちに見つかると今の医療では失明することはありません。
緑内障は怖い病気だ。
なったら必ず失明するとは思わないで欲しいです。
緑内障が見つかって20年以上経つ私ですが、失明はしていません。
このままいくと死ぬまで大丈夫と思っています。
物や人にぶつかったりすることは普通の人よりも多いとは思いますけど(笑)。
人間ドックに行くと、眼圧を測ったり、眼底写真を撮ってくれますので、それで発見できることもあります。
私はコンタクトレンズを買いに行って、眼科で眼圧を測ってわかりました。
大きなコンタクトレンズ屋に併設されている眼科では緑内障は見落とされる可能性があります。
眼圧を測らないし、新米眼科医がバイトでやっています。
私が後期の緑内障ですと言っても若い医師は信じなかったですよ。
ついでにこの物語で紹介されている絵を紹介しておきましょう。
≪盲人の食事≫はピカソの「青の時代」の作品です。
ピカソ22歳、パリで画家修行を初めて三年、まだ有名になる前、友人が自殺をした後の作品です。
本の中ではこう書かれています。
「ピカソが描きたかったのは、目の不自由な男の肖像じゃない。どんな障害があろうと、かすかな光を求めて生きようとする、人間の力(アビリティ)、なんです」
一つ一つをじっくり味わっても短時間で読める、シンプルで読みやすい作品集です。
出てくる絵を見に行きたいと思わせられました。
≪ばら≫は国立西洋美術館で、≪道≫は国立近代美術館で見ることができるようです。
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