元気をもらえるレストランのお話2025/01/24



長月天音 『キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン』
今回の悩める女性は、株式会社オオイヌの製菓工場で働く森久保かなめ。

かなめは製菓工場に異動する前は「シリウス」豊洲店で店長を目指して頑張っていた。
しかし、製菓部に異動してきてからは、お菓子の製造ではなく事務仕事ばかりやらされている。
製菓部長は経営が破綻したカモメ製菓の元二代目社長で、他の二人の社員やベテランパートの何人かもその頃から働いている。
そのためか製菓部長の牧野は「シリウス」から異動してきたかなめを嫌っているようだ。

その雰囲気を察した他の社員たちもかなめにはよそよそしい態度を取る。
こんな閉鎖的な製菓部でやっていけるのか。
異動願いを出した方がいいのではないのか。
三十歳を前に悩むかなめ。
そんな時に恋人の史から別れを告げられる。

そんなある日、かなめは四月から始まる春のデザートの打ち合わせで神保町にある本社を訪れる。
この時に出会ったのが、営業部の新田つぐみ。
つぐみによると、経営陣から営業部と製菓部が一丸となって『シリウス』のデザートメニューを魅力的に改善し、客単価アップとティータイムの売上を確保して業績の回復に繋げろとうい指示が出たそうだ。
かなめはつぐみと一緒にティータイムの売上げを生み出すというプロジェクトに関わることになる。
しかし、このプロジェクトのことを牧野製菓部長に告げても、相変わらず他人事のような反応しか返ってこない。

そんな頃、かなめはつぐみに「キッチン常夜灯」に連れられて行く。
「キッチン常夜灯」の料理とシェフたちや常連客との交流により、いつしかかなめの気持ちも前向きになっていく。

「キッチン常夜灯」シリーズも三作目。
ヒロインもチェーン店の店長のみもざさんから本社営業部のつぐみさん、そして製菓部のつぐみさんと変り、三人三様のお仕事上の悩みが書かれています。
仕事をしていると良いことばかりではなく、大変な思いをすることもあります。
そこをどう乗り越えていくのかが、その人の技量なのでしょうね。

「キッチン常夜灯」シリーズ
③『キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン』(本書)



沖田円 『丘の上の洋食屋オリオン』
『洋食屋オリオン』は昔、あずきさんというおばあちゃんシェフがひとりで切り盛りしていたが、今は孫のくるみさんがシェフとして料理を作っている。
店内のスタッフはデザートを作る真湖さんと菜園の世話もしているアルバイトの蒼くんの二人。
他に看板猫の十八歳になる黒猫、ネロがいる。
メニューは古臭いが、あずきさんからくるみさんが受け継いだ味で、何度食べても世界で一番美味しいと思える味だ。

「第一話 世界で一番のトマトソースオムレツ」
両親が亡くなった時から叔父さんに育てられた潤は希望の大学に合格し、町を出て行く。叔父さんは四月に恋人と籍を入れるという。潤はそんな叔父さんのためにサプライズを考える。

「第二話 わたしとカリカリパンチェッタのカルボナーラ」
カオルはキャバクラ『Crimson Diva』のナンバーワン・キャストだったが、とうとう他のキャストにナンバーワンの座を奪われてしまい、店を辞めることにする。
店のお別れ会の前日、顧客に連れられて行って以来、月に一度は通っていた『洋食屋オリオン』に行くと、臨時休業。
デリバリーに出かけるらしく、なんと一緒に行かないかと誘われる。
連れて行かれた先は『スナックこえだ』。
里香という女性がママだが、彼女には意外な過去があった。

「第三話 過ぎた日の煮込みハンバーグ」
三十五歳の由紀は学生時代からの夢を叶えた二人の子を持つ専業主婦。
しかし、ママ友たちのつき合いや、毎日同じことの繰り返しに、これが自分が望んだ幸せなのかと疑問を持つようになる。
この頃、思い出すのが、高校のときに同じ美術部だった美弥子のこと。
由紀は美弥子の独特な絵が好きだった。
美弥子が連れて行ってくれた『洋食屋オリオン』で煮込みハンバーグを食べながら、美弥子は絵で生きていきたいという夢を語った。
何もやる気になれない日、由紀はひとりで『洋食屋オリオン』を訪れる。
そこで見たのは・・・。

「第四話 きみとベリーリーフのシーザーサラダ」
尾形美和は、二十年前の小学校の時の初恋の人、佐久間新から教えてもらった『洋食屋オリオン』を訪ねる。
当時、二人は同じような家庭環境で、朝早くに登校していた。
花に詳しい新は美和に花のことを教えてくれた。
美和は新が教えてくれたことを覚えやすいように物語を書き、新に見せた。
夏の終わりに美和は転校してしまい、それ以来彼とは会っていない。
オリオンに入った時、美和はスタッフの男の子の顔を見て驚く。

「第五話 三つ星のレシピとぼくらの話」
ネロとくるみの出会いとあずきさんとくるみさんのお話。

オリオンのテーマは、くるみのお母さんたちやあずきさん、オリオンにやってくるお客さんたちが寂しくないように、心がほっとして、温かくなれる料理を出すことだそうです。
オリオンの料理は定番料理ばかりですが、定番が飽きずに食べられて、いいんですよね。

『キッチン常夜灯』や『洋食屋オリオン』のようなレストランがあればと、読むたびに思います。
もしこういうレストランが見つかった人は幸運だと思って通ってください。
そして、もしよろしければ、私にそっと教えて下さい。
コメントは私が許可を出さなければ他の人は見られませんからww。

『洋食屋オリオン』がシリーズになるといいなと思います。
二冊ともに、読むと元気になれますので、落ち込んでいる方、読んでみてください。