アーナルデュル・インドリダソン 『黒い空』 ― 2025/08/05
アイスランド・ミステリ。
<犯罪捜査官エーレンデュル>シリーズの日本では八作目ですが、アイスランドでは十作目。

レイキャヴィク警察犯罪捜査官のエーレンデュルは同僚にも娘にも連絡をよこさず、行方不明のままだ。
シグルデュル・オーリは警察官になってからもっとも小さな事件とも言えない事件に関わっていた。
母親から頼まれたもので、彼女の親友が関わる事件だ。
日曜日にアパートの入り口の郵便受けに新聞紙が入っていないことがあり、誰が持ち去っているのか調べてもらいたいというものだ。
そんな頃に旧友のパトレクルと彼の義兄のヘルマンから相談される。
ヘルマン夫妻はスウィンガー・パーティ(夫婦交換パーティ)に参加していたが、セックス中の写真を撮られ、金を払わなければその写真をネットに載せると脅されているという。
ヘルマンの妻は大臣の補佐役をしている。
パトレクルはシグルデュル・オーリならどうにかできるのではないかと言う。
シグルデュル・オーリはヘルマン夫妻を脅迫しているカップルのうちのリーナという女に会いに行く。
リーナたちは脅迫には慣れていないらしいので、警察がどう対応するか、その法的な根拠を説明するだけで足りるかもしれないと思ったからだ。
しかし、呼び鈴に応じる人間はいない。
ドアは施錠されていなかったので、シグルデュル・オーリは中に入ってみる。
すると、リビングルームは荒らされており、女性が倒れていたので、近づき、かがみ込んだ、その時に、野球バットのようなものが彼の頭めがけて振り下ろされる。
なんとか逃れ、応援を頼みながら男を追うが、逃げられてしまう。
リーナは脅迫相手に殺されたのだろうか。
シグルデュル・オーリが単独で調べていくと、思わぬことが浮かび上がる。
この小説は2009年に書かれ、小説の時代は2008年。
「アイスランドの経済界が鰻登りの勢いだったころ」(あとがきより)の話です。
主人公であるエーレンデュルが未だに行方不明のままで、今回の主役はシグルデュル・オーリです。
彼は離婚したばかりで、彼と元妻と、そして彼と彼の父母との関係が多く書かれています。
彼がちょっとひねた性格になったのも頷けます。
小説の中では公の事件になっていませんが、シグルデュル・オーリが関わるものはもうひとつあります。こちらは胸糞が悪くなるものですが、最後までシグルデュル・オーリが関わってくれてよかったです。
シグルデュル・オーリの父親が言っています。
「いつも一番ひどい目に遭うのは子どもなんだ」
<シリーズの順番>
①『湿地』
②『緑衣の女』
③『声』
④『湖の男』
⑤『極寒の町』
⑥『印』
⑦『悪い男』
⑧『黒い空』(本書)
九冊目(本当は十一冊目)は「Furðustrandir (Strange Shores)」。
待ちに待ったエーレンデュルが登場します。
数年前の嵐の夜に行方不明になったマチィルドゥルと幼い頃に行方不明になった弟ベギー。
この二人の失踪事件をエーレンデュルが解明していくようです。
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