クリス・チブナル 『ホワイトハートの殺人』2025/09/15



幹線道路に置かれた男の死体が見つかる。
裸で椅子にくくりつけられ、下半身は古い布袋に入れられ、頭に大きな牡鹿の枝角が装着されていた。
死体はフリートコムの村にあるパブ<ホワイトハート>の店主、ジム・ティエナンだった。

リバプールからウェセックス警察に転属してきたばかりの刑事課巡査部長ニコラ・ブリッジは苛立っていた。
契約書に署名した後にわかったのだが、ウェセックス警察が三州統合警察という新しい警察署に統合されることになっていて、新庁舎の完成が遅れているので、あと二年ほど廃業になった銀行の建物に常駐しなければならない。
その上、刑事課には彼女の他にふたりの刑事しかいない。
その内のひとり、経験豊富な刑事と聞かされていたイケメンの二十代後半のハリー・ウォードは社会人雇用プログラムを通じて入署したので刑事の経験などない。
もう一人のメル・ハーディマンは痩せた陰気な禿頭の男で、どうしたら有益な人員になりうるのか。
手が足りないと上司に電話して訴えると、契約書に載っていない広報役も押し付けられる。
のんびりするどころではない。

ニコラはメルに調査を任せ、新米刑事ハリーを相棒に聞き込みを始める。
思いがけず、百年前にも鹿角を用いた連続殺人事件があったことがわかるが・・・。

最初にニコラたち以外にも村民たちが出てくるので、誰が誰だか関係性もわからず、困りました。
しばらく読む進むとわかってきたので、やっと落ち着いて読んでいけるようになりました。
イギリス・ミステリは小さな村で起こる事件を扱っているものがいいです。
読んでいくうちにだんだんと明らかになっていく村人たちの隠された過去がどう事件と繋がっていくのかが面白いんです、と言いたいところですが、私は下世話なことが好きなんで、事件よりも登場人物たちの個人的なことが楽しみで読んでいます。
この本では「ニコラと夫のマイク」や「ニコラとハリー」などの関係性がどう変化していくのかが気になります。

クリス・チブナルは脚本家で、「ブロードチャーチ」というドラマでイギリスのアカデミー賞や王立テレビ協会賞など数々の賞を取っているようです。
Amazonで4話まで見られるようなので見てみます。
この作品が作家としてのデビュー作らしく、二作目はこれからのようです。

松嶋智左の「流警」シリーズの二冊2025/09/16



お祭りをやっているというので行くと、程よく神輿がやって来ました。
この神輿は男の人ばかりでしたが、女の人も担いでいるのもありました。
声が高いせいか担ぎ声が金属音っぽかったです。


『流警 傘見警部交番事件ファイル』
南優月巡査部長は傘見警部交番の警務係だ。
彼女は被疑者を護送中に事故を起こし、捜査一課を一年も経験しないで出され、傘見警察署へ異動していた。
彼女にとって傘見警察署は流刑の地だ。
傘見警部交番は元は傘見警察署だったが、地域の人口が減少し、産業も衰退した結果、警部交番に格下げされ、今は総勢十七人の署員が勤めている。

東大出身のキャリア、榎木孔泉が県警本部の地域部長から傘見に異動してくる。
彼は迎えの車にも乗らずにやって来て、専用住宅があるというのに職員寮に住み、自分で料理を作るようだ。
傘見に配属されたことに全く不満はないようで、恬淡な態度を取っている。
優月はそういう孔泉の態度が解せなかった。
交番長は警視正という階級に拘らず、普通に接するようにと言うが、優月は素直に頷けない。
何かしくじって傘見に飛ばされたのか、それとも上と揉めたのか・・・。

孔泉の世話係になった優月は彼とともに行動するが、彼の思惑がわからず、彼に振り回されることとなる。

孔泉はどうもコニュ障があるようですが、捜査能力は抜群で、傘見地区に起こった殺人事件や傷害事件、警察官の不祥事などをうまく解決に導いていきます。
ついでに優月が傘見に飛ばされるきっかけになった出来事の裏を的確に見抜きます。
最初の方では優月のやる気のなさがとても嫌で、そのせいなのか話がつまらなく、読むのを止めようかとも思いましたが、だんだんと面白くなっていきますので、安心して読み進んでいって下さいww。
孔泉の警察官としての矜持は素晴らしいです。

流警 新生美術館ジャック』
総合アミューズメント施設『フェリーチェパーク』の五月オープンに先駆け、『新生美術館』が四月に開館することになり、開館式典が始まろうとしていた。
県警本部警備部警備第一課の巡査部長・志倉悠真は警備部長の随行兼警護の任務に就いていた。

式典開始の八分前に、激しい爆発音が轟き、美術館は狐面をつけた集団に占拠される。
その時、美術館の中にいたのは、副知事の秦玖理子と一人の少女、そして警備部長の榎木孔泉だった。

犯人たちは現金十億円と地元の陶芸家の作品が盗作であることを公表するように要求する。
孔泉たちは県警と密に連絡を取りながら、狐集団の正体を探りつつ脱出の機会を伺う。

犯人たちの真の目的は何なのか。
そして孔泉たちは無事に脱出できるのか。

読みながら似たような話を思い出しました。そういえばドラマでもありましたよね。
二番煎じみたいとも思いましたが、可愛い凜ちゃんが出てきたので許します。
彼女がいたからこそ悪巧みが明らかになったんですものね。
孔泉さん、めちゃ副知事に嫌われていましたが、彼のような男は副知事のような女は相手にしたくないでしょうね。
孔泉に人間らしさが少し出てきたようです。

読み始めは一作目の南優月巡査部長がいつ出てくるのかと思いましたが、最後まで出てきませんでした。
このシリーズは毎回孔泉が異動していき、異動先で孔泉と関わる警察官が主人公として語るお話なんですね。
だから次々と職場が変わっていくという意味で「流警」なんですか。

三作目も八月に出ていて、なんと舞台が温泉街です。
特に孔泉さんの裸は見たくないのですがww。
まだ電子書籍になっていないようなので、そのうちに読みます。

「DREAMS オスロ、3つの愛の風景」を観る2025/09/18

見るかどうか迷っているうちに終わりそうになったので、「オスロ、三つの愛の風景」三部作のうちの「DREAMS」を見に行って来ました。
原題は「Drømmer」です。


17歳のヨハンネはフランス語講師のヨハンナに恋する。
それは初めての恋で、二十四時間、ヨハンナのことを思う毎日。

学生カップルが誕生日プレゼントとして編み物好きのヨハンナに自分たちで編んだマフラーを渡しているのを見て、ヨハンネの気持ちは暴走する。
ヨハンナの住所をネットで調べ、告白しようとマンションに押しかける。
泣き出したヨハンネを見て、ヨハンナは友人とトラブルがあったと思い、部屋に招き入れて話を聞いてくれる。
編み物を習いたいというと、教えてくれることになる。

ヨハンネはヨハンナの部屋に九回ほど行ったが、最後の日にヨハンナは冷たく、ヨハンネはヨハンナの部屋を飛び出してしまう。
やがてヨハンナは学校を辞め、それ以来、二人は会っていない。

一年が経ち、ヨハンネは自分の味わった気持ちを忘れないようにと手記を書く。
誰かと自分の気持ちを共有したいと思い、詩人の祖母に手記を見せる。
とてもよく書かれていたので、祖母は手記を出版したいのかとヨハンネに尋ね、同時に母にも見せるべきだと言い出す。
母が手記を読んだことから、話は思わぬ方向に進んで行く。

10代の少女の純粋な初恋を大人たちが勝手にレッテル付けをしている感じです。
祖母と母が手記を巡って議論を戦わせているところが、世代の違いなどもあり、面白かったです。
森の中でアメリカ映画「フラッシュダンス」(1983年)のことで祖母と母親が言い合いをしているのが一番印象的な場面でした。
そういえば台詞のある男性が、カウンセラーか精神科医かわかりませんが、彼しか出てきませんでしたね。

初恋で躓いたヨハンネですが、これからいい出会いがあるでしょう。頑張れ。

ノルウェー語を二カ月ちょっと習ってどれぐらい聞き取れたかというと、フィンランド語同様に簡単な挨拶と「はい」「いいえ」、あなたを表すdu、否定のikke、接続詞、英語と似ている語ぐらいしかわかりませんでした。
そんなもんですね。
フィンランド語は発音が簡単ですが文法が難しく、ノルウェー語は発音が難しく、文法が今のところ簡単です。
フィンランド語講座は続け、ノルウェー語とスウェーデン語、オランダ語って似ているらしので、次はスウェーデン語を独学でやってみようかと思います。
どの言語も英語同様にものになりそうもないですが、ボケ防止ということでww。

ピーター・トレメイン 『修道女フィデルマの慧眼 修道女フィデルマ短編集』2025/09/20

モアン王国の王女にしてドーリィ(法廷弁護人)でもある修道女フィデルマが旅先で遭遇する事件を描いた短編集。
日本で出版されているフィデルマ・シリーズの12冊目。


「祝祭日の死体」
フィデルマはモアン王国の武人で王族でもあった聖デクランのゆかりの地をまわるという巡礼の旅に参加していた。
聖デクランの祝祭日、巡礼の最終地である礼拝堂で、フィデルマは石棺の中の聖デクランの亡骸の上に殺されたばかりの若い女性の遺体が入っているのを発見する。
遺体に違和感を覚えるフィデルマ。

「狗のかへり来たりて……」
オゴーン修道院の礼拝堂で、フィデルマはひとつの彫像に目を奪われる。それは二十年前に聖遺物箱を盗もうとした修道院の庭師タニーに殺されたシスター・ウーナをモデルにした彫像だった。
修道院の中にタニーが犯人であるとされたことに疑念を抱く者たちがいるようだ。
修道女となっていたタニーの娘から話を聞いたフィデルマは、シスター・ウーナを知っているものたちから話を聞くことにする。

「夜の黄金」
フィデルマはエイナック・カーマン、すなわちカーマン祭に開かれる女性会議に来賓として招聘された。
ダロウ修道院長であるラズローンと話していると、ラシグ族のリーガッハが飲み比べ競争に参加していたオスリガの闘士のルシーンが死んだと知らせに来る。
現場に行き、遺体を確かめると、ルシーンは毒物で殺されたことがわかる。
フィデルマはリーガッハに頼まれ、ルシーンの死の真相を調べることになる。

「撒かれた刺」
フィデルマはブレホンのトゥアマから急遽呼び出され、ドリムソーンという小村を訪れた。
十六歳のブリーンという少年が殺人および窃盗の罪で告発されており、その少年の弁護士を引き受けてほしいというのだ。
フィデルマは盗まれたという銀の十字架の行方が気になる。

「尊者の死」
尊者ゲラシウスが不自然な亡くなり方をした。
フィデルマは彼の死の真相を突き止めることになるが…。

五編の短編集ですが、残念なことに、フィデルマのよい相棒であるエイダルフが出てきていません。
短編集は日本独自にまとめたものなのですね。
短編であってもフィデルマの慧眼はいつもと同様にすばらしいです。
次回はエイダルフも出てくる長編を訳してもらいたいものです。

アンソニー・ホロヴィッツ 『マーブル館殺人事件』2025/09/22

<アティカス・ピュント>シリーズの三作目。


スーザン・ライランドはクレタ島でパートナーのアンドレアス・パタキスいっしょにホテル経営をしていたが、彼と別れ、イギリスに帰国した。
フリーランスの編集者として働いていたところ、≪コーストン・ブックス≫の発行人、マイケル・フリンから呼び出される。
故アラン・コンウェイの代わりにエリオット・クレイスが書き継いだ<アティカス・ピュント>シリーズの続編を編集してほしいというのだ。
エリオットは英国でもっとも成功した児童文学作家ミリアム・クレイスの孫で、書く才能がないというわけではないが、いかんせん素行が悪かった。
断りたかったが、金銭的に逼迫していたので、そうもいかない。
とりあえずスーザンはエリオットの書いた原稿を読んでみることにする。

アティカス・ピュントはベンスン医師の診療所でレディー・マーガレット・チャルフォントに再会する。
彼女は再会を喜び、相談したいことがあるから手紙を書くと言って去っていく。
その後送ってきた彼女の手紙に切羽詰まった様子が見受けられ、ピュントは助手のジェイムズ・フレイザーとともに列車でコート・ダジュールに向かう。
しかし、ピュントは間に合わず、レディ・チャルフォントは毒殺されてしまう。

途中まで読んだ原稿はエリオットの家族関係が反映されているようだった。
エリオットから不穏な話を聞き、スーザンは彼の祖母ミリアムのことを知ろうと家族や関係者から話を聞いていくと、余計な詮索はするなとミリアム・クレイス財団から脅される。

前回のことがあるというのに、スーザンは再び深みにはまっていくことに…。

ホロヴィッツに慣れたのか、三冊の中では一番読みやすくて面白かったです。
エ、真相ってそうなの…と、ちょっと物足りなく感じましたが。
前回までのあらすじを覚えていなくてもたいした問題はありませんでしたが、できれば『カササギ殺人事件』から読みましょう。
アメリカのスリルやバイオレンスたっぷりのミステリよりもこんな感じの人間ドラマのあるミステリの方が好きです。

それにしてもスーザンはお馬鹿さんですねぇ。
止めればいいのに、自分から火中に飛び込んでいくのですから。
私は何回も止めな、と声をかけましたよ。
編集者って人格に問題がある人が多いんですかね。

ニャンコが出てきたのに、スーザンが猫嫌いであまりかまわず、ニャンコが痛い目に遭って可愛いそうでした。

<シリーズの順番>
③『マーブル館殺人事件』(本書)



ちょっとおかしな映画、二作品2025/09/23

よく覚えていませんが、どなたかのブログで面白いと書いてあった古い映画を見てみました。


「リハーサル 再起をかけて(REHEARSAL)」(2015年)
元舞台俳優で舞台監督のロングフェローはロンドンの老舗ハイゲート劇場を買い取りチェーホフの「桜の園」を上演するが、客の入りはイマイチで、破産の危機に直面する。
次にチェーホフの「かもめ」を上演する予定だが、劇場プロデューサーのクライブは背に腹はかえられないと、ハリウッドの売れてるアクション・スター、ブライズ・レミントンに出演依頼をする。
契約書には配役の承認権を与えるとまで書いてあったので、ブライズは相手役を自分好みの女性にし、ロングフェローたちの足元を見て、リハーサルに遅れて来たり、台詞を覚えてこなかったりと好き勝手を始める。
映画嫌いのロングフェローはブライズのやり方を受け入れられないが、劇場存続を考えると強く出られない。
一体、舞台はどうなるのか・・・。

それほどオススメという映画ではないのですが、演劇好きにはいい映画かもしれません。この映画をススメてた人、演劇をやってたような・・・。
ロングフェロー役の人、イケオジです。
英語の聞き取りにはいいでしょう。
とにかくアクション・スターの若造にむかつきますけどねww。
演劇人と映画人は合いそうもありませんね。


「ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式(Death at a Funeral)」(2007年)
父親が亡くなった。長男のダニエルは弔辞を読まなければならない不安で押しつぶされそうだ。引っ越そうと思っていたのに、思った以上に葬儀代がかかり、妻と喧嘩になる。
それなのに葬儀の朝に葬儀会社が運んできた遺体が別人だった。
作家の弟ダニエルはニューヨークからファーストクラスでやって来たというのに、葬儀代を出し渋る。
従姉妹のマーサは婚約者サイモンを父親に紹介しようと葬儀に連れてくるが、彼の気分を落ち着かそうと飲ませた安定剤が、弟の持っていたドラッグだった。
サイモンはおかしな行動を取るようになってしまう。
それだけでも大変なのに、葬儀の前に見知らぬ小さな男が現れ、ダニエルに話があると言う。
二人になって見せられたのが・・・写真だ。
これは一大事。ママに知られるとえらいことになる。隠さなければ・・・。
ドタバタ喜劇の始まり、始まり。

しめやかな葬儀になるはずが、とんでもない葬儀になってしまい・・・ませんでしたが、兄弟といとこたちで繰り広げるドタバタが面白くて、笑ってしまいます。
お下品なところや不謹慎なところもありますが、ブラックまでいかず、まあ私の許容範囲内にとどまっていますので、コメディ好きの方は安心して見てくださいw。
そういえばなんで葬儀を教会でしないんだろう。

堀川惠子 『透析をやめた日』2025/09/26

前に読んだ『教誨師』を書いた堀川惠子さんの本が話題になっていると聞き、読んでみました。


堀川さんは元放送記者で、テレビ局を辞めた後にドキュメンタリー番組の制作を始め、その時にNHKのプロデューサーだった林新さんと出会ったようです。

林新さんは32歳の時に難病の「多発性嚢胞腎」を発症し、1995年、38歳で透析を開始しなければならなくなります。
透析は週に3回、透析施設に通い、1回に四時間ほどかかります。
テレビの仕事は激務で有名ですが、たとえ夜明けまで仕事をしていたとしても、透析をしなければ、命にかかわります。
林さんは学生時代に剣道で鍛えていたといいますから、激務に耐れるほど体力のある人だったのでしょうね。
「いつ死んでも悔いはないようにと、全力で疾走するかのような人生」の人だったようです。

透析患者が毎日どのような生活をしているかなど全く知りませんでした。
食事の面では水分制限やカリウムやリン対策など色々とすることあり、好き勝手に食べることができません。
食べることの好きな私に耐えられるかしらと思うほどです。

日本の透析患者数は35万人弱で少しずつ減ってきてはいるようですが、人口比では世界3位で、他に台湾と韓国だといいますから、東洋人に多いということでしょうか。
一ヶ月の透析には約40万かかりますが、医療費の助成制度があるので、患者の自己負担は最大でも月二万円に抑えられているそうです。
日本の透析医療は慢性透析患者の合併症率が低く、透析導入後の生存期間も長いことから、世界トップレベルだといいます。

透析以外に腎臓移植という選択肢もあります。
堀川さんが自分がドナーになると言ったことから林さんも移植を考え始めます。
2007年、ドナー検査の結果、林さんの79歳になる母親がドナーになります。
しかし、2014年、「多発性嚢胞腎」の症状が肝臓にまで及んだので堀川さんがドナーとなる「肝腎同時移植」を考え始めますが、「肝腎同時移植」は難しいため、なかなか話が進みません。
2016年4月、透析を再開。母の腎臓は九年間保ちました。
2017年3月、背中に激痛が起こり、慶應病院に入院しますが、透析中の激しい痛みが続き、大量の鎮痛剤が投薬されます。
その後退院して、再度透析クリニックに通い始めます。
そんな時に「肝腎同時移植」の権威である医師から電話が来て、彼の指示で日赤医療センターに入院し、移植の判断待ちをしますが・・・。

ドキュメンタリー番組などを制作していると様々な人に会うので、病気の治療に関する情報を私のような人間よりもたやすく手に入れることができるのではないかと思っていました。
しかし、この本を読む限りそうではなかったようです。
当てにならない移植医師や主治医に翻弄される姿が哀れでなりませんでした。

緩和ケアはがん患者と心不全患者などだけが受けることができるとは知りませんでした。
他の患者は苦しみながら死ねと言っているみたいですね。何か抜け道はないのでしょうか。
実際に林さんは緩和ケアを受けられずにお亡くなりになっています。

第一部では林新さんの壮絶な死にざまを描き、第二部では堀川さんが実際の透析医療現場を取材して、終末期の透析患者を巡る諸問題を明らかにし、今後のあるべき医療のかたちを世に問うています。
渾身の第二部は本でお読みください。

これから腹膜透析が一般的になり、透析患者の苦痛が少なくなり、終末期の透析患者が尊厳に満ちた生と死を甘受できる医療は実現できるのでしょうか。
私自身、薬の影響で腎臓の働きが落ちてきていると言われているので、人ごとではないです。

急いで書いたので、まとまりがない文ですが、一読をオススメしたい本です。

トリミングの日2025/09/27

少しは涼しくなると思ったら、まだまだ暑い日が続いています。
もうすぐ10月。そろそろ秋らしくなって欲しいものです。

わんこたちは9時過ぎにトリミングに行きましたが、暑いのか舌を出していました。
今回はいつもと違ったトリマーさんにしてもらいました。

ヨーキー弟の珍しいウインク姿をお見せしましょう。


舌が余計ですねww。


横顔は凛々しく見えますね。


ちょっと微笑んだ感じ。

トリミング前の様子は、こんなんでした。


結構ボサボサですね。


いつもおやつに鶏の柔らかいと書いてあるジャーキーを小さくちぎってあげていたのですが、昨日兄が吐き出したので、チュールを少しずつあげることにしました。


兄の顔がいつもと違って、なんとも貧相な顔です。


どうしたんでしょう。トリマーさんがいつもの人と違うので、悲しかったのでしょうか。


顔のカットがちがうからなのかしら?


何かを訴えています。

今回の体重は兄、3.2㎏、弟、3.6㎏。
アラ、弟の体重が減っていません。兄が残した朝ご飯も食べているので、痩せないのねwww。

写真ではわかりませんが、弟の左目の上に黒いシミができています。
獣医さんはただのシミみたいだと言っていますが、広がるようだと生検をしましょうということになりました。
メラノーマかなんかだと大変です。
近頃、たまに見ている犬ブログのわんちゃんが急に病気になり、1~2週間後にお亡くなりになりました。
うちのわんこたちよりも若かったです。

年を取ると人間も犬も何が起こるかわからないので、何が起こってもいいように、今から心がけておきましょうね。

「ファンファーレ!ふたつの音」を観る2025/09/28

原題は「En Fanfare」。


指揮者のティボはオーケストラのリハーサル中に倒れ、白血病だと診断される。
骨髄移植のドナーを探すことになるが、適合検査の結果、妹と血縁関係がないことがわかる。
ティボは養子だったのだ。
生き別れた弟がいることがわかり、ティボは会いに行く。

弟のジミーはかつて炭鉱で栄えた町の学食でパートタイムで働いていた。
母親は亡くなり、父親は誰かはわかっていなくて、近所の家族に引き取られたという。
ティボの養父母はジミーを引き取ろうと思ったが、ちょうどその時に妹を妊娠したため、引き取れなかったらしい。
初めは自分に兄がいたことを受け入れられなかったジミーだが、養母の説得が功を奏して、ドナーになることに同意する。

ジミーは音楽好きで、町の吹奏楽団でトロンボーンを吹いている。
彼に絶対音感があることにティボは気づく。
吹奏楽団がコンクールに参加することになるが、指揮者が異動し、誰が指揮者になるかでもめる。
ティボは指揮者になるなんて自信がないというジミーを勇気づけ、指揮を教える。ジミーは指揮をすることになるが、コンクール当日に思いもかけないことが起こる。

その後、吹奏楽団は市長命令で解散状態になり、楽器は閉鎖寸前の工場に移される。
工場を閉鎖させないために、ティボは工場で自分が指揮をするコンサートを開こうと提案する。
演奏するのは、工場の機械の音を曲にしたという「ボレロ」。
なんとか周りを説得し動き出すが、ジミーは参加しない。
コンサートはどうなるのか。


ジミー役のピエール・ロタンは前に見た「秋が来る時」でヴァンサン役で出ていましたね。
粗野な若者という役柄が多いんでしょうか。

白血病の治療方法はよく知りませんが、今は化学療法よりも骨髄移植を優先するものなのですか。
変なところが気になりました。

思ってもいなかった展開の映画でした。
骨髄移植までのいきさつはサラッと終わり、その後の兄弟の交流が詳しく描かれています。
兄弟の育った環境の違いで人生が大きく変わっています。
そのことに憤りを感じるジミーと後ろめたさを感じるティボでしたが、だんだんと音楽で繋がっていく二人の場面がいいですね。
「ボレロ」はどこで使うんだと思っていたら、いい具合にきました。
音楽の使い方がいいですね。
映画のラストはいいんだけど、でも人生は続いていくのです。
よかったね、で終われない映画でした。


一色さゆり 『ロゼッタストーンの暗号 コンサバターⅥ』2025/09/29

コンサバター・シリーズの六作目。


ルーヴル美術館での任務を終え、糸川晴香とケント・スギモトはロンドンに戻ったが、すぐに大英博物館の副館長になったばかりのウィンストン・キースに呼ばれる。
また大英博物館に籍を置いて、晴香には展示室のリニューアルを支える修復チームに入り、スギモトには大英博物館が抱えている最重要課題に取り組んでほしいと言うのだ。

スギモトは返還部門に所属することになったが、彼の元恋人であり、オークションハウス、キャサリンズでナチスの略奪品や文化財返還の問題に取り組んでいる調査チームの一員であるアンジェラが返還部門のチーム長になっていた。
返還部門の最重要課題は、不法または非道徳的にコレクションになった作品のリスト化だったが、なかなか進まない。
焦りを感じるアンジェラに脅迫メールが届く。

その頃、スギモトは美術特捜班のマクミランに会い、2つのこと頼む。
不法輸入されたカンボジア美術を調べることと行方不明になっている英国の暗号解読者ハンス・エドワードの詳しい情報を教えてほしいと。

晴香は新任レジストラーの陽曉東と親しくなるが、彼は何かを計画しているようだった。

やがてルーヴル美術館からエジプト美術の収蔵物が盗まれ、犯人からとんでもない要求が出される。

大英博物館に行ったことがありますが、とんでもなく広くて、一日で全部は回れません。途中で足が痛くなりました。
エジプトの展示室を見た時には、よくこんなに盗んで来たわね、と思うぐらい多くのミイラがありました。
石の神殿もあり、どうやって運んで来たんだろうと思いました。
持って帰るために、どれほど多くのものを破壊してきたのでしょうねぇww。
とにかく大英博物館はすごいです。

今回、晴香が関わる展示は「性の歴史」、「ペットの歴史」、「文字の歴史」、「お札の歴史」です。
「性の歴史」では葛飾北斎や喜多川歌麿などの春画、「ペットの歴史」ではエジプトの≪猫のミイラ≫、「文字の歴史」では解読を待っている15万の粘土板やシリンダー、「お札の歴史」では最古の紙幣からカラヴァッジョのリラ札などが取り上げられています。
蘊蓄が面白いので、興味のある方は読んでみて下さい。

そうそう大英博物館に猫なんかいるんですか?
調べてみると、今はいませんが本物の猫がいたことがあるようです。

お話が中途半端に終わり、次に持ち越されてしまいました。
できれば切りよく一冊で事件は終わって欲しいですね。


<シリーズの順番>
⑥『ロゼッタストーンの暗号 コンサバターⅥ』(本書)