ジェフリー・ディーヴァー 『12番目のカード』2006/10/16

リンカーン・ライム・シリーズの日本語翻訳本の最新版がでました。このシリーズはおもしろいので、大好きです。

ハーレムの高校に通っているジェニーヴァが博物館で自分の祖先の記事を読んでいるとき、一人の男が部屋に入ってきます。
身の危険を感じたジェニーヴァは機転をきかせ、逃げます。
一見するとただの強姦事件だと見えたのですが、ジェニーヴァは執拗に狙われ続けます。
これはただの事件じゃないと感じたライムとサックスたちは、事件を追っていきます。

まだ半分しか読んでいませんが、一体残されていたタロットカードの12番目、「The Hanging Man」は何を意味するのかに興味があります。
タロット占い的には悪い札ではないそうです。

ジェフリー・ディーバーは本当に上手いミステリー作家だと思います。

『12番目のカード』終了2006/10/18

『12番目のカード』は、500ページぐらいあるのですが、読み始めるとあっけなく読み終わってしまいました。

殺し屋に思えた黒人の男性は、ジェニーヴァの父親でした。
友人のラキーシャが決心したことは、書き方のせいで、ジェニーバァを殺すことのように思えるのですが、ジェニーバァが一番嫌っている生き方、子どもを生むために高校をやめることでした。

タロット・カードから、殺し屋の仕事が判明します。
ジェニーバァが襲われたのは、彼女が犯人を見たためと思われたのですが、突き詰めていくと、なんと彼女の祖先に関したことからで、思わぬ人が犯人でした。

犯罪もライムのような人がいると、なかなか上手くいかないようです。
彼の分析力と推理力にはいつも感心します。
アメリカのミステリーはこういう科学分析が出てきたり、プロファイリングがあったりするので、私は好きなのです。
相変わらず、一筋縄ではいかないディーヴァーでした。

湯河原へ行く2006/10/21

           湯河原の海

今日は新幹線に乗って熱海で降り、湯河原まで行きました。
ずっと海の側に住みたいと思い、最初は鎌倉や葉山がいいと思っていたのですが、通勤と値段を考えると無理があります。
いろいろと考え、思い切ってリゾートとしてマンションを買って、週末だけ使ってもいいな、と思い始めました。
思いついたら吉日。相棒をたきつけ、湯河原まで行ってきたのです。
見たマンションのギャラリーは駅から3分ぐらいのところにあり、マンションも同じぐらいのところに建てられています。
50代、60代の夫婦が買っているそうです。
私たちがいる間に即決して買った夫婦がいました。
どうも60代ぐらいで、旦那はフラフラしていました。
このマンションで心配なのは、警備員が9時~5時までしかいないこと。
7、8階に温泉があるのですが、100家族が使って、お風呂がきれいなままなのかどうか。
一日一回ぐらいしか、お風呂のマットを取り替えなくなりそうです。
なんかいろいろと考えてしまいますが、そんなことより、一番の心配はお値段です。
私たちには買えそうもありません。
中古の安い物件を見ることにしました。

湯河原の町はのんびりとした、地方都市です。住むには刺激が少ないかも。やはり、週末のんびりしに行くところですね。
一泊したかったのですが、相棒が6時過ぎに用事があったので、すぐ帰ってきてしまいました。絶対に次回は泊まりたいと思います。

江國香織 『いつか記憶からこぼれおちるとしても』2006/10/22

この本は題名が素敵だったので、買ってみました。

ある私立女子校の生徒たちの話です。
同じクラスで友人だったり、ただ話したりしたことのある子だったり、各章に別れて一人一人のなんの変哲もない日常生活が書かれています。
題名の通り、1週間もしないうちに、記憶の中に埋もれてしまいそうな、そういう話です。
題名と同じように内容は読むとすぐに忘れてしまいました、笑。
ただ、「売り」をやっている女の子の不思議な感覚が、わかるようなわからないような。
彼女は誰かに愛されるという経験をしていないので、誰かに愛されると、逃げてしまうのかしら?
どの話にも人間関係の気薄さを感じます。

江國さんの本のひょっとして、はずればかり読んでいるのでしょうか?
同じ高校生を扱ったのでも、山田詠美の『放課後の音符』の方がよっぽど上質な短編集に思えます。
好き嫌いの問題でしょうかね。

レベッカ・ブラウン 『家庭の医学』2006/10/23

『体の贈り物』を書いたアメリカの作家レベッカ・ブラウンが母親の入院から最期までを描いた本です。
本の各章はおもしろいことに、医学用語です。「貧血」、「薄暮睡眠」、「転移」、「無能力」など。
何でも一人でやる、自立した人であった母親が、体調が悪くなり、貧血であることがわかります。
輸血をするのですが、調べていくと内出血をしていることがわかります。
出血を止める手術で腫瘍が見つかり、その腫瘍はいろいろなところに転移していました。
手術ではもはや全部取ることができません。そのために化学療法を始めます。

治療と治療の間隔は3週間。体重は減り、髪は抜け、吐き気と痛みが襲ってきます。
やがて、化学療法がきいていないことがわかり、母はホスピスに面倒をみてもらうしかないことをレベッカ達兄弟は悟っていくのです。
彼女たちは母親の自宅で母親の面倒をみることにします。
やがて母は幻覚を見るようになり、徐々に食欲が落ちていきます。
そして、母親は最期を迎えるのです。
母親が亡くなってから、兄弟は母の大好きだった場所のひとつの渓谷に行き、遺灰を撒きます。

病院で亡くなるのと、この本のような終末を迎えるのと、どちらがいいかと言われると、この母親のように愛する人たちに看取られたいと誰でも思うでしょうね。
彼女たちはホスピスの看護師の助けを借りて、自分たちのできる限りの看護をします。
日本だと看護する人の大変さなどがもっと前に出た内容になるのでしょうが、この本ではそうはなっていません。
いつも思うのですが、この違いはなんなのでしょうね。

私が密かにやりたいと思っていることが、書かれていました。
それは、遺灰を海に撒くということです。
日本では、お役所の許可を取らないと許されないのかもしれませんが、内緒で是非とも海に撒いてもらいたいと思っています。
相棒に言うと、嫌だといいましたが、そこら辺の鎌倉の海でいいの、というとそれならいいのだそうです。
飛行機と船が苦手なので、嫌なのでしょう。

介護という現代の問題をテーマにした「介護文学の先駆的な一冊」だそうです。
まあ、そんなご大層な本ではないと思います。
肉親の最期を迎えることを見据え、読んでおいていい本ではないでしょうか。

J.D.ロブ 『薔薇の花びらの上で』2006/10/24

イブ&ロークの13作目。
今回はネットで出会った男と初めてのデートに行った女性が、ドラッグを飲み物の中に入れられ、レイプされ、ドラッグの大量摂取で死んでしまい、死体をベランダから投げ捨てられたことから始まります。
女性を自分の思い通りにし、捨てるということに怒りを感じたイブは、父親から受けた性的虐待のトラウマに負けずに、犯人を追っていきます。
次に起こった殺人は、同じような手口なのですが、女性が違ったタイプでした。
1人目は、おっしゃれや住むところにお金を使うタイプなのに、二人目は本以外のものにはお金をかけない、地味なタイプでした。
犯人は二人なのか、多重人格者なのか?
(ネタバレあり)

今回の犯人は2人の若い、退屈した若者でした。
彼らは頭はいいのですが、道徳心に欠け、1人は甘やかされて育てられ、一人は物だけは与えられ、ネグレクトされてきました。
女性をネットで釣り上げるのは、彼らにとってはおもしろいゲームなのです。

大富豪ロークと結婚して一年が経とうとしていますが、やっとイブも丸くなり(?)、ロークが事件の手助けをするのを受け入れるようになってきています。
間にあるロークとイブのロマンスは、まあこの本のご愛敬ですかね。
部下のピーボディとマクナブの関係もやっとステディな関係になっていきます。
まだまだ何かありそうな、そんなイブ&ローク シリーズです。

森まゆみ 『寺暮らし』2006/10/26

著者の森まゆみさんは、「谷中・根津・千駄木」という雑誌を発行している人だそうです。
この雑誌から「谷根千」という略称が使われ出したそうです。
森さんは、地元に住みながら、地元についての雑誌を作っているのですね。
題名の「寺くらし」は、お寺の門の中にある(境内かな?)マンションを借りて住んでいるので、ついたものです。
意外とお寺の中に住んでいると、物売りはこないし、緑は多いし、風通しもいいしと、彼女が今まで住んでいたところに比べるといいのでした。

彼女は建物に興味があって、古くて壊されそうな建物を見て回っています。
同潤会代官山アパートが壊されることを聞き、見に行ったりしています。
同潤会アパートは青山が最も有名ですが、もともとは関東大震災後、海外からの義捐金をもとに財団法人同潤会がつくられ、被災者のための木造仮住宅建設や下町の不良住宅改良をし、都市中産階級のためのアパートメントハウスとしてかの有名な「同潤会アパート」を建設したそうです。
このアパートは代官山、青山、江戸川以外にも猿江、清砂、鶯谷、三河島など下町にもつくられているそうです。
歩いていると、同潤会アパートと書いてある建物があって、青山のとは違うだろうと思っていましたが、同じところがつくったものだったのですね。
青山にあるから、洒落た建物に見えましたが、他のものも斬新なデザインだったようです。
今は残されているところは、少ないのでしょうね。

谷根千に住んでいる彼女は、「町に癒され、町の人に助けてもらいながら生き延びてきた」といいます。
ちょっぴり地域に密着した彼女のようなくらしが羨ましくもあります。
マンションに住み、働いていると、地域とは隔離されています。
それが今は心地いいのですが…。

村上春樹 フランツ・カフカ賞受賞2006/10/30

インターネットの新聞を読むと、村上春樹がカフカ賞を受賞したことが報じられていました。
彼の作品はほぼ出るたびに読んでいます。彼の作品に漂う、喪失感のようなものにとても惹かれているのです。
何かが欠けていて、その何かを求めて、登場人物は動いているような気がするのです。
この頃は、といってももう大分経っていますが、オウム真理教の起こした地下鉄サリン事件の被害者や加害者側にインタビューをした本を出したり、神戸の地震にインスピレーションを与えられて書いた本を出したりしていますね。
最新作は今ひとつでしたが。
彼がこれからどこは向かっていくのか、興味があります。