逸木裕 『風を彩る怪物』 ― 2022/09/02
題名を見ると、ホラーかと思うかもしれませんが、全く違います。
オルガンに魅せられた人たちの物語です。
プロのフルーティストを目指し音大を受験し、失敗した名波陽菜は、姉の暮らす自然豊かな奥瀬見でしばらく過ごすことにする。
陽菜は出場したコンテストで、自分より遙かに個性も才能もある者たちの存在に気づき、打ちひしがれ、それ以来フルートを吹いていると唇や手が震え、まともに演奏できなくなっていた。
十歳上の姉、亜希は二年前に突然奥瀬見に引っ越し、カフェをやっている。
ホルンを吹く亜希は室内楽をやっていて、フルートの人が転勤でいなくなったので、陽菜を呼んだのだ。
カフェの手伝いをしている時に、「音」が聞こえて来た。
音を辿っていくと、そこにオルガン工房があった。
陽菜の耳の良さを知ったオルガン制作者の芦原幹は陽菜に<奥瀬見アイリスホール>から発注されたオルガン製作を手伝ってくれないかと頼む。
しかし幹の娘の朋子は、頑なに陽菜を拒む。
二人は衝突を繰り返す。
そんな中、思わぬ訃報が…。
果たしてオルガンは完成するのか。
オルガンとはパイプオルガンのことです。
日本ではあまり馴染みのないパイプオルガンですが、ヨーロッパではたいていの教会にパイプオルガンがあります。
信徒でなくても、教会でコンサートが行われることがあり、パイプオルガンを聞くことができます。
もう何十年も前に訪れたベルギーで、たまたま入った教会でパイプオルガンの練習に遭遇したことがあります。ヨーロッパでは日常的にオルガンが聞けるのかもしれませんね。
私はオルガンをコンサートホールや教会でしか聞いたことがなく、オルガンの音を自然の中の音と結びつけて考えたことがないので、オルガンの音が自然の音を模すということに驚きました。
とても厚い本ですが、余すことなくオルガンの魅力が書かれた、フルーティストとオルガンビルダーを目指す少女たちの成長譚です。
オススメです。
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