中山七里 「ドクター・デスの遺産』 ― 2021/02/11
刑事犬養隼人シリーズの第4弾。
映画にもなっているので、テーマはおわかりですよね。
「安楽死」です。
警視庁本部へ小学校低学年の男の子からの通報が入る。
昨日も電話をしてきた子だが、通信指令センターの倉科恵子はいたずら電話だと思いほっておいたのだ。
しかし、あまりにも必死なので同情心が湧き、電話を刑事部捜査一課の内線に回し、同期の高千穂明日香にこの子と話してもらうことにする。
高千穂は生活安全課が志望だったのに捜査一課に回されたという変わり種で、少年犯罪に興味があった。
高千穂は万が一を考え、ペアを組んでいる犬養隼人を道連れにして、その子どもに会いに行くことにする。
前回同様、高千穂は犬養に対してとりつく島もなく、彼に対する嫌悪感を隠しもしない。そのくせなにかと犬養を巻き込もうとするのだ。女心の読めない犬養にしたら、組みたくない相手だ。
家に行きインターフォンを鳴らしても反応がないので、斎場に行って話を聞くことにする。
母親の馬籠小枝子から犬養が話をきく。
夫の健一は肺がんだったが、医師による直接の死因は心不全で、抗がん剤の副作用で心不全を起こすこともあると言われたとのこと。
息子の大地から話を聞いた高千穂によると、主治医が看取る前に別の医師と看護師が来たと言っていると言う。
大地から再度話を聞くと、医師はお昼前に看護婦と一緒に来て、注射をしてすぐに帰った。それから父親が静かになったので、母親が慌てて別の医者を呼び、その医者が死を確認したというのだ。
事件性があると思った犬養は急いで鑑定処分許可状を発行してもらい、鑑識を呼び、遺体を解剖することにする。
解剖結果からわかったことは、検体の血液のカリウム濃度が異常に高いことだった。馬籠健一は塩化カリウム製剤の注射によって殺害された可能性が出てきたのだ。
最初は口を割らなかった小夜子だったが、犬養が防犯カメラの映像や近所の人の証言、銀行口座の取引、そして息子の大地をダシにして説得を試みた結果、やっと話し始めた。
<ドクター・デスの往診室>というサイトがあり、二十万円で安楽死を請け負うというので、小夜子は健一の同意の下、申し込んだというのだ。
<ドクター・デス>とは積極的安楽死を推奨したアメリカの病理学者ジャック・ケヴォーキアンの異名で、サイトの管理人は同氏の遺志を継承する意味で<ドクター・デス>の名前もまた継承する所存だという。
馬籠健一の件は氷山の一角であると見なした犬養たちは、ドクター・デスが次の安楽死に着手する前に捕まえようとする。
サイバー犯罪対策課の協力を得、サイト管理者の居場所を突き止めようとするが、海外のサーバを複数経由していてたどれない。顧客データも抽出できない。
唯一コメント欄に書き込みをした閲覧者のアドレスだけがわかる。
その中から積極的安楽死に理解を示す者たちを拾い上げ、優先順位をつけ、連絡することにする。
やがてまた通信指令センターに不審な電話がくる。
安楽死や尊厳死については様々な意見があります。それらを参考にしながら、自分や家族ならどうしたいのか、今から考えておくことが必要ではないでしょうか。
うちの父も義父母も延命治療は行わず、自然な経過にまかせ、苦しまずに亡くなりました。本人はどう思ったかはわかりませんが、端から見ると幸せな最期だったと思います。
自分や家族の時はどうなるのかはわかりませんが、苦しまずに逝けるよう、今から願っています。
刑事犬養隼人シリーズ、第五弾『カインの傲慢』は昨年の5月に、第六弾『ラスプーチンの庭』は今年の1月に出版されています。
<今日のわんこ>
私が立ち上がると、兄犬は駆けつけ、こうやってかまって光線を発射しています。
可愛いので、抱き上げて膝の上にのせます。そうすると、静かに膝の上でずっと寝ています。
自由に動けないので困りますが、可愛いので許します、笑。
弟は10秒も膝に乗っていません。すぐに飽きて動き回ります。
犬でも性格が違いすぎて、ついつい兄の方ばかり可愛がってしまいます。
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