歌田年 『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』 ― 2022/04/03
『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』に続く二作目です。
一作目が結構面白かったので、二作目も期待して読みました。
三つの短編からなる日常に潜む謎解きです。
物に関する蘊蓄が好きな人にお勧め。今回はアメコミやコスプレ、フィギア関係です。

<FILE01:猫と子供の円舞曲>
八月最後の金曜日、新宿にある渡部紙鑑定事務所の紙鑑定士兼紙営業士、渡部圭の事務所に小学校低学年ぐらいの少女、古戸梨花がやってきます。
梨花が持ち込んだのは、紙粘土らしきもの。いくら紙鑑定士だからといって紙粘土は専門外ですが、渡部は一応話を聞いてみます。
梨花によると、近所の野良猫が片目をつぶされているのを見つけた。そばにこれが落ちていて、猫の毛と血がついていたというのです。
彼女が心配しているのは、この紙粘土の塊がクラスメイトの谷君のもので、彼が猫を虐待した犯人ではないかということでした。
梨花のことがほっておけず、千円(小学生から取るのか!)で引き受ける渡部でした。
<FILE02:誰が為の英雄>
九月半ば、渡部は野良猫虐待事件で世話になった團文禰に事件の経過を報告にいきます。その時、團がアメコミ(American comics)『B.O.D.Y.GUARDS』に出てくるブルー・ライダーのフィギュアを納品に行くというので、送っていくことにします。
その三日後、團から電話が来ます。フィギュアは母親が誕生日の息子に贈ったもので、息子は気に入らなかったようだ。息子の部屋から持ち帰る時に母親がフィギュアを階段から落としてしまい、修理を頼まれ、家まで取りに行った。どこが気に入らなかったのか、母親と話しているうちに、息子がアメコミ、『B.O.D.Y.GUARDS』の二巻が不良品だと言い、何冊も買いに行かされていることがわかった。ついては渡部に調べて貰いたいと言うのです。
雑誌は紙ですから、渡部の出番です。どこが不良品なのか、わかるか渡部。
<FILE03:偽りの刃の断罪>
十一月半ば、前回の重大事件で知り合った神奈川県警の石橋和夫刑事が事務所にやって来ます。
ある家が強盗に襲われ、夫が刺殺され、家の一部が焼かれた。夫婦とコスプレ趣味を通じて交流のあった春見という男に嫌疑がかけられている。
春見の無罪を信じる石橋は、この事件ではコスプレがカギになると思うので、渡部に知恵を貸して欲しいというのです。
わからないことは専門家に聞け、というわけで、またまた團に会いにいく渡部でした、笑。
前作では「伝説のモデラー」土生井が考えて、渡部が彼の意のままに動き回りました。今回も土生井が出てきますが、残念ながらちょっとだけです。
彼の代わりが、フィギュア作家の團です。彼もいいキャラしてます。
ミステリーとしては軽目ですが、登場人物たちがいい感じで、終わりがほんわかしているし、蘊蓄も面白く、楽しめました。
続編も出そうですね。次は因縁の<自然堂紙パルプ商会>とのことでしょうか。
今月のおやつ。

豆源のおかきと豆類です。
甘いおやつとしょっぱいおやつは各月一回、パンは月2回ぐらいの割合で頼んでいます。
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