中山七里 『作家刑事 毒島の嘲笑』2022/09/06

作家でありながら刑事でもあるという、毒島真理のシリーズ第三弾。
彼は週に一回、警視庁の刑事技能指導員として登庁し、それ以外の日は作家家業に勤しんでいるようです。


エー、表紙の絵は誰?雰囲気からして絶対に毒島ではないと思いますが。
中山さんがOK出したということは、彼の中では毒島ってこういう感じなのですかね…?

1.「大いなる」
保守系出版社改新社が放火された。左翼の犯行を疑った警視庁公安一課の淡海奨務は捜査を開始する。
現場で同期の高千穂と話していると、出版関係に詳しいという刑事技能指導員の毒島がやって来る。一見、親しげで温厚そう。淡海は毒島から保守系出版社についてレクチャーを受けるが、なり行き上、毒島と行動を共にすることになってしまう。
その後<急進革マル派>を名乗る組織が犯行声明を出す。

2.「祭のあと」
改新社に放火した犯人は逮捕できたが、彼は<急進革マル派>など知らない、単独犯だと言い張る。
淡海は誰が犯人に左翼思想を植え付けたかを探るために、彼の生活範囲圏内を当たろうとするが、上手い手が浮かばず悩んでいた。
ところが、供述した内容を教えに毒島に会いに行くと、なんと毒島はその場所から招待されていたのだ。
当日、出版社の社員のフリをして淡海は毒島のお供をする。
しかし、そこでも殺人が…。

3.「されど私の人生」
淡海が有楽町で行われている集会に参加中の左翼運動家でプロ市民の鳥居拓也を監視していると、なんと毒島が演説を始める。
それは<鶴民>で働く女性の過労死に関する集会だったが、毒島の興味は過労死ではなく、女性が飛び降り自殺をしたということだった。
しばらくすると、また<鶴民>で働く女性が自殺をした。
淡海は毒島から連絡を受け、現場に向かう。

4.「英雄」
淡海は<急進革マル派>がマスコミ各社のHPに沖縄県名護市キャンプシュワブで抗議行動を実施するという書き込みをしたため、沖縄に出張っていた。
淡海が抗議行動を監視していると、なんとそこに毒島が現れる。次に書くものの取材に来たというのだ。と、そこに火炎瓶が投げられる。
別の日、淡海がキャンプシュワブのゲート前で監視していると、毒島がまた現れる。彼は前回演説をしていた作家・瑞慶覧万平の近況を調べていたという。
機動隊がデモ隊を排除しようとした時、参加者が鉄パイプで作られたプラカードを使用したことをきっかけに、戦闘が始まってしまう。
最終的に機動隊が警杖を使い、鎮圧するが、瑞慶覧万平が首の骨を折られて死んでいた…。

5.「落陽」
淡海が鳥居のマンションを監視していると、またまた毒島が現れる。
近く衆院議員選挙が行われる予定で、プロ市民の鳥居が何らかの行動を起こすのではないかと思われている。淡海がその日に鳥居は秋葉原に行ったと話すと、毒島は何を買ったのか気にする。
公示日に鳥居は九段下の高級レストランで共民党廣瀬賢人候補の選挙参謀梅野と会い、廣瀬候補の街頭演説の日程表を貰っていた。何故敵陣山縣候補のではないかと疑問を持つ毒島。
やがて鳥居のゴミから、鳥居が爆破テロを計画していることがわかる…。

毒島の主義は、犯罪捜査は徹頭徹尾論理的でなければならない。感情は邪魔。興味はあくまでも事件解決。解決しちゃったら、それでお終い。手柄はいらない。欲しけりゃやるよ。
なんか人をおちょくっているような感じですが、怒ったら負けですわね、笑。
今回はそれほど彼の毒舌が生かされていないようで、ちょっと物足りなかったです。
その上、内容が左翼とかテロとかなので、最後のどんでん返しには驚きましたが、前作よりも楽しめなかったです。
初めて毒島シリーズを読む方にはお勧めません。
一作目の『作家刑事毒島』か二作目の『毒島啓治最後の事件』を読んでみてください。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2022/09/06/9523950/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。