ヘニング・マンケル 『笑う男』2022/10/28

刑事ヴァランダー・シリーズの四作目。


前作の『白い雌ライオン』で正当防衛とは言え人を殺したことで、ヴァランダーは罪悪感に苦しみ、一年以上も休職をしていた。
医師には病気退職して早期年金取得者となることを勧められている。

デンマークのスカーゲンにある安いペンションに二度目に滞在していた時に、ヴァランダーは自分の警察官としての日々は終わり、昨年受けた心の傷で、自分は二度と立ち上がれないほど変わってしまったと思った。
そんな頃、彼に会いに友人で弁護士のステン・トーステンソンがやって来る。
彼の弁護士である父親が自動車事故で亡くなったという。
スピード運転をしていた車が転覆しての事故死だと、警察は言っているらしい。
しかしステンは不審な点があるので、何が起ったのか調べて欲しいというのだが、ヴァランダーは断る。
そしてその日の午後、彼は医者とビュルク署長に電話をかけて、辞職の意を告げる。

正式に辞職届を出すためにイースタ署に行く日の朝、ヴァランダーは新聞にステン・トーステンソンが亡くなったという死亡広告が載っているのに気づく。
同僚のマーティンソンに電話をすると、ステンは事務所で撃たれて殺されたという。
それを聞き、ヴァランダーは復職してステン・トーステンソンの事件を担当することにする。

ステンの父・グフタフの車を調べ直しているときに、ヴァランダーはステンが正しかったことを確信する。
グフタフは殺されたのだ。グフタフとステンの死には関連があるのだ。

グフタフが事故に遭った日に、クライアントのアルフレッド・ハーデルベリを訪ねていたことがわかる。
ハーデルベリは世界的な規模の実業家で、ファーンホルム城を買い取り事業の本拠地にしており、ここ数年グフタフの唯一のクライアントだった。
ヴァランダーはファーンホルム城に行き、秘書から話を聞く。

ファーンホルム城からの帰途、グフタフの秘書のドゥネール夫人からすぐに電話をしてほしいという連絡がくる。
家に行くと、昨夜何者かが庭に入り、芝生を掘り起こしたようだという。
芝生には地雷が埋まっていた。ドゥネール夫人を殺そうとしていたのだ。

弁護士親子の死と秘書のドゥネール夫人の裏庭爆発事件は計画的犯行であると結論づけるヴァランダー。
そんな時にトーステンソンの事務所で脅迫状が見つかる…。

ヴァランダーは骨の髄まで警察官の血が流れていると思います。
辞めてしまうと廃人になってしまうんじゃないですかぁ、笑。
1年以上も休んでいても、すぐに復活するんですから、超人と言ってもいいぐらいです。
ドラマのように臓器移植には重みを置いていませんが、最後はヴァランダーの単独行動プラスドンパチが見られます。

今回は新しいメンバーとして、女性の新任刑事アン=ブリット・フーグルンドが出てきます。
女性が警察官として働くことはスウェーデンでも大変なことなのですね。
ヴァランダーは彼女が有能なことにすぐに気づき、いっしょに行動します。
そういうところはヴァランダーの良さですね。

ヘルパーと結婚したお父さんは幸せそうなのですが、ヴァランダーに対する言動は変化なし。相変わらず会いに来ないとガミガミ文句ばかり言っています。
そもそもヴァランダーが警官になったのが気に入らなかったようです。
親子の関係は日本とそんなに変わらないのかもしれませんね。

人を殺したことがトラウマになっているヴァランダーですが、次の事件にも何か影響があるのでしょうか。
次の作品『目くらましの道』はドラマではシーズン1の第一話になっています。
ドラマとどんな違いがあるのか、楽しみに読みます。

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