「喝采」を観る2026/01/19

原題は「The Great Lillian Hall」。
日本語のタイトルが「喝采」ですが、う~ん、他にも同じタイトルがあるよね。
ジェシカ・ラングが主人公のリリアン・ホールを演じています。
モデルはブロードウェイ女優のマリアン・セルデスで、脚本は彼女の姪が書いたそうです。


大女優のリリアン・ホールはブロードウェイで「桜の園」を上演するため、稽古を続けていた。
ところが稽古中に台詞を忘れてしまう。
プロジューサーは医師の診断を受けるようにリリアンに告げる。

医師が下した診断は、幻視を見るレビー小体型認知症。
リリアンは演出家であった亡夫の幻を見ていた。

舞台に上がりたいリリアンは認知症のことを隠していたが、アシスタントのイーディスに気づかれてしまう。
イーディスの親がレビー小体型認知症を患っていたのだ。

やがてリリアンが認知症を患っていることを演出家のデヴィッドに知られるが、デヴィッドはなんとしてもリリアンを主役で「桜の園」を上演したかった。

最初は加担することを断っていたイーディスだったが、リリアンの熱意に負け、手伝うことにする。
しかし、リリアンの病状は徐々に進行していく…。

はっきり言うと、よくあるお話ですが、リリアン役のジェシカ・ラングがよくて、気になりませんでした。
76歳だそうです。
若い頃の映画を見たことがありますが、まだまだ活躍できますね。

映画ではイーディスとデビッド以外にも娘のマーガレットや隣人のタイとのことが描かれています。
女優のリリアンと娘の関係は難しいですね。
娘に負い目があり、自分の病気のことを言いだせないリリアンの気持ちがよくわかりますし、娘の方の気持ちもわかります。
最後に分かり合えてよかったです。
それにしてもドレスを着た時と普通の時が違い過ぎですww。
タイ役は72歳のピアース・ブロスナン。
とってもいい年の取り方をしています。イケジジです。

実は私、チェーホフを見たことがないのです(恥)。
そろそろ戯曲でも読んでおこうかと思います。

豪徳寺に行く2026/01/18

東京のお寺巡りで、世田谷区にある豪徳寺に行ってきました。
ネットでは外国からの観光客でにぎわっていると書いてあったのですが、その通りで、全体の三~四割ぐらいかな。
招き猫が人気みたいです。

豪徳寺駅から歩いて約12分。


山門に着きます。御覧の通り、外国からの観光客が門の前にいるので、今までのお寺とは違い、人が写真に入ってしまいます。


正面に仏殿があります。
覗き窓から仏像を見ることができます。


左手には三重塔。猫や十二支の動物たちの彫刻があるらしいのですが、近くに寄れず、遠くてわかりませんでした。


仏殿を左に行くと、人が並んでいます。
これが有名な招き猫のいる招福殿です。


門の前に招き猫がいました。
後で中に入ることにして、先に井伊家の墓所に行くことにします。


ここから入ると墓所になります。
奥には豪徳寺の再興(1633年)を支援した井伊直孝や有名な井伊直弼の墓があります。


広い墓所です。


井伊直弼のお墓。
外国の方が二、三人いましたが、井伊直弼など知っているかしら。
江戸時代の偉い人のお墓だとしか思わないでしょうね。


招福殿に戻って、お参りするために並びます。
お参りしてから左手に行くと、招き猫たちが並んでいます。


左手に並んだ招き猫。


こちらは右手に並んだ招き猫たち。


左右に並んでいるのですが、通り道が狭くて人が多いのでゆっくりしていられません。


大小の可愛い猫たちですww。


人ごみを抜けると法堂(本堂)がありますが、修繕しているので、中は見られませんでした。
本堂の左手に社務所があり、授与品をいただくことができます。


書院(?)。


裏門。右手に駐車場があります。


地蔵堂。


登楼。

豪徳寺の招き猫のお話を紹介しましょう。
江戸時代前期に彦根藩主の井伊直孝が鷹狩の帰りに通りかかった時に、寺の門前にいた白猫たまに手招きをされ、寺に立ち寄り過ごしていると、突然、雷が鳴り、雨が降り始めました。
雷雨を避けられた上に、和尚との話も楽しめたということで、殿様はその幸運にいたく感動し、寺を支援し、井伊家の江戸における菩提寺に定め、豪徳寺と改称したそうです。
寺に福を招いた白猫は崇められ、その姿を模した置物が作られるようになったそうです。

家に招き猫を連れてきました。
これは「招福猫児(まねきねこ)」といい、人を招いて「縁」をもたらしてくれますが、福そのものを与えてくれるわけではないそうです。


願いが叶うごとに1月に大きな招き猫を奉納していくそうですが、そのまま家に置いておいてもいいそうです。
まだ若い人は幸運が何回も来るように、小さなものから大きくしていくといいかもしれませんねww。
そうそう、世田谷線に招き猫電車が走っているそうです。

豪徳寺駅からお寺までの間にカフェやらお土産物屋などがあります。
スウェーデンカフェがあるというので、寄ってコーヒーとシナモンロールを頼んでみました。


カルダモンの味がしました(当たり前よねww)。
駅の近くに墨絵があったので、またパンを買って帰りました。

ジョアン・フルーク 『ピンクレモネード・ケーキが振りかぶる』2026/01/17

お菓子探偵ハンナ・スウェンソン・シリーズの29作目です。


ミネソタ州レイク・エデンの保管官助手のマイク・キングストンが退職したいと言い出す。
<クッキー・ジャー>を経営するハンナ・スウェンセンと町の仲間たちはミネアポリス市警の刑事ステラ・パークスの助けを借り、なんとかしてマイクの退職を阻止しようと考える。
ステラはマイクに長期休暇を取らせ、ロング湖にある彼女の両親のキャビンに彼を連れていき、のんびり過ごさせることにする。

そんな時に、レイク・エデンで野球のオールスター・トーナメントが開催される。
トーナメントの前に招待選手の元メジャー選手のバーニー・ノーノー・フルトンは地元の女子校生を車の後部座席に乗せ、勝手にパレードをして、町の人々を激怒させる。
どうもノーノーは過去にも色々な人々を怒らせているようで、その一人がハンナの母のドロレスだった。
ノーノーは野球大会の前夜に開かれた晩餐会で、またもやドロレスを侮辱したため、ドロレスは「復讐してやる」と宣言してしまう。

翌日、野球大会の最中に売店にいるハンナのところにドロレスがやって来る。
しばらくして携帯電話を落としたことに気づいたドロレスは探しに行くが、なかなか戻ってこない。
ドロレスを探しに行ったハンナはバットを持って立っている彼女を見つける。
ドロレスは観客席の下でノーノーの死体を見つけたと言う。

またもや死体を見つけてしまうハンナたち。
第一容疑者はドロレスか…。

ハンナは、飼い猫が元夫が殺されていた家に入れなくなったので、歯医者のノーマンの家に居候しています。
ふたりはとってもいい雰囲気です。
マイクはそれがショックなのかもしれないですねぇ。
もう結婚しちゃえばいいのにと私だけではなく、町の人々も思っていることでしょう。
シリーズを長引かせるのもそろそろ止めてほしいですわ、ということを考えていたら、なんと最後に驚くことが起こります。
フルークさんも考えますねぇ。

30作目は「Pumpkin Chiffon Pie Murder」で、これから刊行されるようです。
放火事件が起こり、現場で遺体が見つかり、放火犯を捕らえるために、ハンナが同窓会パーティを開催するらしいです。
ノーマンとの関係は進展があるのでしょうかねww。

九品仏浄真寺に行く2026/01/16

しばらく旅行に行けそうもないので、東京都にある神社仏閣に行ってみることにしました。
今回行ったのは九品仏浄真寺で、九品仏駅から歩いて約三分のところにあります。


参道から歩いていくと、総門があります。


総門から入って左手に閻魔堂があり、この日は閻魔様はお休みでしたww。


まっすぐ行って右手に東門。


正面に変わった形の薬医門があり、この奥が社務所です。


向こうに見えるのは山門(仁王門)。


立派な門で、左右に仁王様がいます。



裏側に梯子がありました。


上って見たいです。
潜って右手に本堂、正面に下品堂があります。


下品堂に仏像が三体、安置されていますが、一体が修繕のためいらっしゃいませんでした。


このようなお堂が左から下品堂、上品堂、中品堂と三つあり、その中に三体の仏像が安置されています。
だから九品仏というんですね。


上品堂から見た本堂(龍護殿)。
本堂にあがり中を見させていただきました。


本堂の横にある庭。


石庭。


薬医門から入って左にある観音堂。
沢山のお地蔵様が並んでいます。


浄土宗に属する寺院で、江戸時代初期の開山だそうです。
このお寺も春や秋に来ると風情がありそうです。

村山由佳 『しっぽのカルテ』2026/01/15



信州の森の中にある『エルザ動物クリニック』では、ぶっきらぼうな院長で獣医の北川梓(39)と頼れる二人の動物看護師、柳沢雅美(37)と萩原絵里香(31)、そして心に傷を負う受付と事務を担う真田深雪(25)の女性四人が働いている。

第一話:天国の名前
職人の土屋高志は外構の工事をしている時に一匹の生まれたばかりの子猫を見つける。母親と他の四匹の兄弟は死んでいた。
去年の正月に外構工事を請け負ったクリニックのことを思い出し、急いで子猫を連れていく。
子猫は助かり、高志にも懐き、高志もまんざらでもないようだが、頑なに子猫を引き取ることを拒む。何故なのか?

第二話:それは奇跡でなく
年老いた中型犬ロビンの飼い主の新井久栄は悩んでいた。夫が亡くなり、ロビンには自分しかいないというのに、持病の心臓が思わしくなく、ロビンには介護が必要だ。
どうしようもなくなって、思い切って『エルザ動物クリニック』に行って、安楽死の相談してみる。

第三話:幸せの青い鳥
新婚の里沙には自分にはもったいないと思うほどのイケメンの夫、直輝がいるが、直輝は里沙が愛してやまないオキナインコのタロウのことを嫌っている。
ある日、タロウが直輝が食べていたチョコレートを食べてしまう。
急いで『エルザ動物クリニック』に連れて行くが、直輝は自分がしたことを軽く考えているようだ。
北川はタロウと里沙のために、禁じ手を使う。

第四話:ウサギたち
あれから高志は『エルザ動物クリニック』のハーブガーデンの整備や薪置き場作りの仕事を引き受けていたが、それ以外にもお金の発生しないボランティア作業をやりに『エルザ動物クリニック』に来るようになっていた。
たまたま仕事で行っている学校の教頭からウサギの引き取り手の心当たりがないかと聞かれ、『エルザ動物クリニック』に相談する。
その後、引き続きウサギは学校で飼うことになるが、そこにはある男の子の必死の訴えがあった。

第五話:見る者
院長北川梓の過去と深雪の現在の話。

よくある動物病院の軽いお話かと思って読んでみたら、とんでもありませんでした。
院長の生い立ちからして変わっていて、動物と飼い主のことだけではなく、人間関係や社会問題もしっかりと書かれていますし、生きとし生けるものの命について深く考えさせられるお話です。
特に第二話が今の私に刺さりました。二匹のシニア犬がいるのですもの。


もう持って来いはしなくなった11歳のヨーキー弟。


13歳兄は寒さに弱くなったみたいで、朝、震えていたので、今は私のベッドの上に電気毛布を敷き、その上で寝せています。
気持ちいいのか、なかなか起きませんww。

そういえば私も「野生のエルザ」を見て、獣医になりたいと思ったことがありましたww。
続編希望のおすすめの本です。

「おくびょう鳥が歌うほうへ」を観る2026/01/14

年末に見たい映画がなかったのですが、1月に入り、次々と見たいものが上映され始めています。

この映画は原題が「THE OUTRUN」で、シアーシャ・ローナンがプロデュース兼主演です。
エイミー・リプトロットによる原作があるそうで、そのうち翻訳がでそうですね。


ロンドンの大学で生物学を学んでいた29歳のロナは10年ぶりに故郷のオークニー諸島に帰る。
故郷には離婚した両親が住んでいる。
双極性障害を患っていている父親はトレーラーハウスに住み、農園で働いている。
母親は宗教に熱心で、家によく信者の女性たちが出入りしている。

ロンドンでのロナは酒で身を持ち崩していた。
仕事も恋人も、すべて失った。
暴力事件に巻き込まれ、やっと思い立ち、ロナはAA(Alcoholics Anonymous)の施設に入り、90日間の断酒をやり遂げる。

断酒をしても、酒への渇望はなくならない。
過去のフラッシュバックがふとした時に蘇る。

父親がうつ状態に陥り、ベッドで動けない時に、ロナはテーブルの上にあった酒に指を浸し、なめてしまう。

やがてロナは孤島に行き、一人で生活する…。

オークニー諸島の風と波が荒ぶるロナの心を表しているようでした。
安定しない家庭環境の中で育ってきたロナは寂しさを抱えて生きてきたのでしょうね。
そのため恋人との関係もうまく行かず、都会での生活にも適応できず、酒を飲んだ時の高揚感が忘れられず、酒にのめり込んでいきます。
お酒の飲めない私は酔うと気持ちがよくなるのは羨ましいですがww。
宗教に逃げざるおえなかった母の痛みと苦しみを知ることにより、ロナは今までのことに折り合いができ、少しずつ再生への道を辿り始めたのではないでしょうか。

AAの集会の初めにみんなで唱えているのが『メイドの推理とミステリー作家の殺人』に出て来た「二ーバーの祈り」です。
どんなに日が経とうが、酒への渇望がなくならないといいます。
ロナのこれからがよくなることを祈らずにはいられませんでした。
嬉しいことに最後にささやかな奇跡が起きましたww。


シアーシャ・ローナンがとてもいいです。
オークニー諸島は、いつもあんなに波が荒いのでしょうか。

内藤了 『SOUL 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花』2026/01/12



椿が満開になり、


梅の花が咲き始めました。
まだ寒さが続きますが、花があるだけで気分がよくなりますよね。

さて、「警視庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」シリーズの七作目が出ました。


警察庁特捜地域潜入班は今まで部屋がなく、班長の土井火斗志所有のオンボロキャンピングカーが班室の代わりになっていた。
ところが今までの働きが認められたのか、警察庁本部の資料検索室が班室として与えられた。
そして新たに本庁の通信官と兼任だった万羽福子と生活安全局の駆け出し刑事で連絡係だった丸山勇の二人が特捜地域潜入班の専任となった。

まだ部屋が片付いていないという時に、刑事局刑事企画課課長の反町秀造が一通の手紙を持って来る。
差出人は東京拘置所で教誨師を勤める住職の若原唯善で、彼の担当する五十四歳の死刑囚・西口治が、フリーマガジンの盂蘭盆会を扱った記事の写真を見たのをきっかけに、新たにサラリーマンと社長夫妻、三名の殺人を告白したという。
西口は元来の嘘つきで死刑確定者でもあるので、拘置所の所長に取り合ってもらえず、特捜地域潜入班の力を借りたいというのだ。

潜入班は西口の刑が確定するまでの経緯を調べていき、土井と成瀬が若原に会いに行く。
住職は、西口は虚言癖とは違い、計算ずくのような気がする。
嘘だらけのままで受ける処刑は『罪の償い』ではなく、『ただの死』だ。
彼を『人』として死なせてやりたいと語る。

割り切れない気持ちのまま、潜入班は西口の人生を調べていくが…。

盂蘭盆会の写真がちょっとご都合主義のような感じでした。
そんなオカルトっぽい写真は普通は載らないのではないでしょうか。
西口の人生を探っていくうちに浮かび上がる事実が悲しいものでしたが、はっきり言うと、西口はどんな家庭に生まれても、死刑囚にまではならなくても、何らかの事件に巻き込まれそうに思います。
住職の『人』として死なせてやりたいという言葉がありがたいですね。
死刑の是非については、考え続けていかなければならない課題です。

二回続けて東京が舞台になっていますが、メンバーが四人になった潜入班は、次回からまた地方に赴き、今まで以上に活躍してくれそうです。

高円寺の長仙寺に行く2026/01/11

美しい庭園があるというので、真言宗の長仙寺に行ってみました。
ここは駅から近くて、歩いて2、3分です。


仁王門に「日王山」と書いてあり、左右に仁王像があります。
区のHPによると、「1704年(宝永元年)、中野の宝仙寺にいた住僧・貞秀がこの地に一庵を建て、日王山阿遮院と号した」とされているそうですが、開山はそれ以前で、初代住職は宥観和尚ではないかということです。

私は門の前の幟が気になりました。
「ペットのお墓」って書いてあります。
調べてみると、ペットの遺骨を納めるための供養塔(ペット墓)があるようです。
詳しくはお寺に聞かなければならないようです。都心ですからお高いのでしょうね。そろそろ考えておかなければ…。


門から見えるのは庫裏と枯山水の庭です。


入るのを躊躇します。


入って左に石登楼や五重塔、石橋などが見えます。
池もあるのですが、水はありません。


冬なので、苔は茶色くなっているみたいですね。
写真の右手に「歯神様」と言われている如意輪観音の石仏がありあます。


写真を引き延ばしてみましょうか。


昔の人に右手を頬にあてる姿が歯痛を我慢するように見えたそうです。
この石仏の右手に階段があります。


上って行くと、本堂です。


本堂には不動明王像がまつられており、戦火を免れた室町時代の作と言われています。


寄贈された石仏。


これも寄贈されたのかな。


古い灯篭。
冬ではなく、他の季節に来ると、緑が美しいのでしょうね。


仁王門にハトがいたので、写真を撮ってみると…。


アラ、鬼瓦が見えます。


怖いですねぇww。

新宿にあったパン屋の墨會が転居していたので、パンを買って帰りました。
お腹がすいていたら、イートインで食べたかったな。

朝井まかて 『グロリアソサエテ』2026/01/10



大正十三年(1924年)、サチは昨年の地震の後、京都に居を移していた宗教哲学者、柳宗悦(1889-1961)の家で女中として働き始める。
サチは東京で生まれ育ったが、地震で父を亡くし、兄の勧めで大阪の遠縁の家に避難したが、京都の家で女中を求めていると追い出され、奉公先が決まるまで出町柳の八百久で居候をさせてもらっていた。
柳家は八百久から紹介された。

柳家には声楽家の奥様、兼子と子どもが二人、そしてばあやがいる。
時にばあやにいけずをされるが、奥様や子どもたちは優しく、柳家はサチには居心地のいい家だ。

柳家の家計はすべて兼子の稼ぎによりまかなわれている。
柳は好き勝手に金を使うばかりで、金を稼ごうとはしない。
その上、家ではいつも不機嫌で黙っている。
兼子がやっと留学費を貯め、ドイツに行きたいと言っても、反対するばかりで、兼子のことを「エゴイスト」だとまで言う。
兼子は女性たることと芸術家たることを両立したかったのだ。

柳宗悦の家には陶芸家の河井寛次郎や英国帰りの陶芸家の濱田庄司たちが訪れ、共に小道具市を巡り、「下手物」を買い、日用の品に美を見出していた。
彼らはそれらを後に「民藝」と名付ける。
サチはそんな彼らを身近で見守るが…。

このお話では1924年から1937年までのことが描かれています。
柳は1924年から木喰仏の調査を行い、1925年から「民藝」の言葉を使い、1926年に「日本民藝美術館設立趣意書」を発表、1934年に日本民藝協会設立、1936年に東京駒場に日本民藝館を創設し、柳は初代館長になります。
その後、この本に関係することでは、沖縄への工芸調査とそれにともなう方言論争などの活動をしたそうです。

私は柳宗悦よりも兼子(1892-1984)の方が気になりました。
兼子は凄いですよ。スーパーウーマンです。
柳と兼子は恋愛結婚で、声楽を続けることを条件に結婚したそうです。
彼女の声楽でお金が稼げると思っていたのかどうかはわかりませんが、柳の民藝運動の大きな助けになったことは確かです。
他の有名人の伝記などを読むと、柳だけを責めることができません。
この頃は何かを成し遂げるためには男は家庭を犠牲にし、金のような下賤なものなんかには構わず、大義のために戦うべきだという感じですものね。
兼子はお金のためもあるんですが、様々な場所でリサイタルを行い、夫の反対にもかかわらずドイツに留学し、ベルリンではドイツ人を驚愕させるほどのリート歌手だと言われながらも日本に戻り、夫を支え続けます。
戦中は軍歌を歌うことを拒否し、1961年に柳が死んでからも歌い続け、85歳まで公式のリサイタルを行い、92歳で亡くなる二カ月前まで後進の指導をしていたんですって。
やっと80歳になって歌が歌えたなという気がする。長生きしてよかったと思うというようなことを言ったそうです。
ひょっとして柳が亡くなってからの方が歌に集中できてよかったかもしれませんねぇww。

この本はサチの視点から書かれていますが、兼子の視点から書かれていたら、どんなになっていたでしょうね。
読んでみたかったです。
もしよろしければ、どなたか、兼子のことを書いてくれないでしょうか。

サチの隠された身の上が意外なものでしたが、最後に幸せになりそうな感じで終わっていたのでよかったです。
面白く読めましたけど、どことなく現実感のない柳家のことよりも、柳兼子のことが知りたいと思いましたけどねww。

ニタ・プローズ 『メイドの推理とミステリー作家の殺人』2026/01/08

メイドの秘密とホテルの死体』から四年後のお話です。


モーリーはいまや五つ星ホテル<リージェンシー・グランド・ホテル>のメイド主任となり、メイド研修生のリリー・フィンチに仕事を教えている。

世界的に名を知られるベストセラー作家、J・D・グリムソープが、改修されたばかりの<グランド・ティールーム>で重大発表を行うことになる。
モーリーは支配人のミスター・スノーから采配を任された。
ところがグリムソープがスピーチを始めた、その時に、彼は急に倒れて絶命してしまう。

因縁の女刑事スタークが再度現れる。
どうもスピーチ前に飲んだお茶に毒が仕込まれていたようで、お茶を供したリリーが疑われる。
「責められるのはいつもメイド」であることを知るモーリーは、リリーのために事件を解決しようと思う。

実はモーリーはグリムソープのことを知っていた。
おばあちゃんが彼の屋敷でメイドとして働いていたのだ。

あれから四年が経ち、モーリーの成長には目覚ましいものがあります。
恋人のファン・マヌエルと一緒に暮らし、アンジェラという友だちもでき、後輩を指導し、スタークにも互角に太刀打ちできるようにまでなっています。
まあ、たまに変なことを口走ってしまいますがご愛敬です。

今回の目玉は、現在とモーリーとフローラおばあちゃんの過去が交互に描かれているところです。
つくづく思うのは、おばあちゃんは本当にいい人だなぁということです。
最後までモーリーを信じてくれているんですもの。
彼女はモーリーに「希望の光を灯す方法を見つけてくれた」人です。
おばあちゃんの言葉がモーリーの生きるよすがになっています。
例えば、「一歩ずつ踏みだす。それがこの世でどこへ行くにもたどり着くための唯一の方法」。「表紙で本を判断してはいけません」などなど。

やっとスタークがモーリーの良さに気づくところがいいですね。
今回はメキシコに行っていて活躍できませんでしたが、彼氏のファンとちょっと危ない友人のアンジェラ、これからモーリーの片腕になりそうなリリー、そして刑事のスターク。この四人と他のホテルの面々がそろえば、怖い物なしですねww。

最後にミスター・ブレストンの言葉を載せておきます。

「孤独と虚しさ、その穴を埋めるために溜め込む。恐ろしい病だが簡単な治療法がある」(中略)「思いやり。辛抱強い耳。暖かい腕。(中略)」

またモーリーに会えて、とっても嬉しいです。
もっと嬉しいことに、昨年の四月に三作目『The Maid's Secret』が刊行されていたようです。
あらすじを見てみると、アラ、モーリーは昇進し、私生活でもいいことが起こったようです。その上、おばあちゃんが残した物が…。
おばあちゃんには隠されたことが沢山ありそうです。
翻訳される前に読みたいけれど、円安のためペーパーバッグでも高いのよ。
翻訳を待つしかないかしら…。

そうそう、おばあちゃんがクッションに刺繍した言葉はいろいろな説がありますが、「二ーバーの祈り(The Serenity Prayer)」と言って、アメリカの神学者、ラインホルド・ニーバーが作ったものと言われています。

「God, grant me the serenity
   to accept the things I cannot change,
   courage to change the things I can,
   and wisdom to distinguish the one from the other.」

単語が少し違っているものやもっと長いものもあるので、本を見ないとどれなのかわかりませんが、一応載せておきます。