山岸涼子 『舞姫ーテレプシコーラ 11』2007/01/28

バレリーナになることを目標に、頑張っている姉妹の話です。
山岸凉子は前にロシアの少女ノンナがプリマになるまでの過程を描き、今度は日本の少女のことを描いています。
それだけバレエが日本で身近になったということですね。
日本人バレリーナが華々しく活躍している現在を考えると、山岸が『アラベスク』を書いていた当時と隔世の思いがあります。

千花と六花(ゆか)の姉妹はバレリーナを夢見て、練習に励んでいました。
妹の六花は、踊るのが好きですが、泣き虫で自分に自信のない、姉の千花の後をついていく子です。
才能はあるのですが、自信のなさから、伸び悩んでいます。
姉の千花は将来を期待されていましたが、怪我で膝を痛めてしまいます。
ある医師の手術の間違いから、靱帯移植手術までするのですが、膝は元通りにはなりませんでした。
バレリーナになることしか考えていなかった千花は悩みます。
踊ることのできない自分は、何の価値もない、そう思い詰め、ビルから飛び降りてしまいます。
姉の死後、悲しみを乗り越え、六花は「トゥオネラの白鳥」を自分で振り付け、踊ります。
それは、彼女のコリオグラファー(振り付け師)としての才能が花開いた瞬間でした。

『アラバスク』でも、才能はあるのに、自分に自信のない少女がでてきました。
彼女はある教師に認められ、彼に支えられながら、立派なプリマに成長していきます。
この漫画でも、六花は周りに支えられ、姉の死を乗り越え、成長していきます。

この巻で第一部が完結しました。第二部が今年の春から始まるそうです。
第一部を読んでいて、気になることがひとつあります。
酒飲みで仕事もしない父親に、お金を稼ぐために、ポルノ写真のモデルをやらせられていた少女のことです。
彼女は、おばさんが元バレリーナで、そのおばさんからバレエをならっていて、驚異的な踊りを踊る子でした。
彼女が第二部に出てきて、六花と何らかの繋がりを持つのでしょうか?
いえいえ、是非ともまた登場してもらいたいものです。

美しいバレエの世界の影の部分もわかる、おもしろい漫画です。
『のだめカンタービレ』もそうですが、こういう芸術を扱った漫画が増えると、日本のすそ野が広がり、若い芸術家が益々出てくることでしょう。
『アラベスク』と一緒に読むことをお勧めします。