マイクル・コナリー 『チェイシング・リリー』2007/02/27

一緒に住んでいた恋人から追い出され、借りた部屋に「リリーはいるか」という電話がかかってきたら、どうしますか?
一回ぐらいなら間違い電話だと思ってほっておくのですが、何回もかかってきたら?
普通の人なら、次の日に電話局に電話をして、別の番号にしますよね。
ところが、主人公のピアスはリリーを探し始めるのです。

ピアスは先端科学のナノテク学者で、ベンチャー企業の代表も務める人です。
そういう人が何故知らない女を捜し始めるのでしょうか?

実は彼の姉は、このリリーと同じように失踪していました。
義父と一緒に姉を捜しているときに、偶然に姉を見つけたのですが、姉が義父から性的虐待を受けていたことを聞き、家には帰りたくないという姉の意志を尊重して、義父に姉はいなかったと嘘をついたのです。
結局姉は身を売ってくらしているうちに、シリアル・キラーに殺されてしまいます。
そう、彼は姉とリリーを同一視してしまうのです。
姉を見つけた時に、何故家に連れ帰らなかったのか。
連れ帰れば殺されることもなかったのにと彼は何度も思っていたのです。
姉の時にできなかったことを、今回はやろうと思い、見も知らないエスコート嬢なのに、ピアスはリリーを探します。
ところが、偶然に見えたことが、実はピアスを陥れるための罠であったことがわかります。
彼の心理状態を正確に知っている誰かの仕業だったのです。

さて、ピアスはどう見えない敵と戦い、リリーを探していくのか。
手に汗を握るミステリーです。