近藤史恵 『間の悪いスフレ』2023/10/27

ビストロ・パ・マル・シリーズの『タルト・タタンの夢』、『ヴァン・ショーをあなたに』、『マカロンはマカロン』に続く四巻目。
テレビドラマの「シェフは名探偵」の原作です。


全七作の短編集。

「クスクスのきた道」
常連の早川夫妻の娘、結莉亜が音楽専門の高校、仙女学園に合格し、<パ・マル>で合格祝いをするが、結莉亜はご機嫌斜めで、両親と喧嘩を始める。
翌日、結莉亜が一人で店に現れる…。

「未来のプラトー・ド・フロマージュ」
<パ・マル>はコロナ禍でテイクアウトを始める。
そんな中に、場違いと思える中学生ぐらいの少年が来て、何回もテイクアウトをしていく。
高築は少年が河原でテイクアウトした料理を食べているのを見かける。
気になる<パ・マル>の面々。

「知らないタジン」
オーナーが今度は料理教室を開こうと言い始める。
人当たりのいいスーシェフの志村が講師となって始めるが、意外と評判がいい。
二回目の料理教室の日、生徒の一人がタジンが原因で彼氏と喧嘩したという。
何故なのか?

「幻想のフリカッセ」
クリスマスも近付いた頃、店に二人の兄弟がやって来る。
二人はフリカッセを食べ、自分たちの母親の味とそっくりだと言う。
それを聞いた志村が「料理がお上手なお母様なんですね」と訊くと、「料理が得意だった人が、いきなり料理下手になるってこと、あるんですかね?」と問い返される。

「間の悪いスフレ」
高築のいとこ、畠中博己が相談があると店にやって来る。
結婚相談所で知り合った彼女に<パ・マル>でプロポーズをしたいというのだ。
当日、間の悪いことにデザートのスフレが出された時に畠中はプロポーズを始め、彼女は考えさせてくれと答える。彼を慰めるパ・マルのみんなだった。
しかし、次の週…。

「モンドールの理由」
二軒のフランス料理店を経営している羽田野がやって来て、辞めたいと言っている才能のある料理人を来週連れてくるので、フランス料理の業界に残りたくなるような料理を作って欲しいと頼む。
果たして変人シェフ三舟の作った料理は彼の決心を翻させることができるのか?

「ベラベッカという名前」
店に同業者の横尾がオーナーかシェフに相談したいとやって来る。
彼の店は従業員の定着率が悪く、悩んでいるという。
彼のレストランを辞めた人に話を聞いてみると…。

どのお話も短いですが、上手くまとまっています。
しかし、差別やコロナ禍などの社会問題を扱っているわりに、謎解きの部分がサラッと終わり、物足りないのが残念です。

出てくるどの料理も美味しそうです。フランス料理はこの頃食べていないので、食べたくなりました。
<パ・マル>のような気さくなお店がないかしら?