「型破りな教室」を観る ― 2025/01/08

2011年、アメリカとの国境近くにあるメキシコ北東部タマウリパス州のマタモロスは犯罪組織間の抗争が絶えない危険地帯で、麻薬と殺人が日常的、貧しいスラムが拡がっている。
そんな地域にホセ・ウルビナ・ロペス小学校がある。
ENLACE(メキシコの共通テスト)の成績が全国最下位レベルで、教師もやる気がなく、学校の設備も最低で、世間では「罰の学校」と言われている。
新学期、出産で辞めた教師の代わりに、六年生のクラスにセルヒオ・ファレス・コレアが赴任して来る。
彼はネットで見た授業法をもとに、独自の型破りなアプローチで授業を始める。
始めは戸惑っていた生徒たちだったが…。
三人の生徒に焦点が当てられています。
一人目はパロマ。
彼女は父とゴミの山のすぐ近くに暮らしています。ゴミの山から廃品回収をして、それを売ってなんとか生計を立てています。
知的に勝っているため、他の子たちとは上手くいかず、大人しく見られ、一人でいることが多いです。
セルヒオの授業を受けているうちに宇宙工学者になるという夢を持つようになります。
二人目はニコ。
兄と二人で浜辺の廃墟のような家に住んでいます。
兄はギャングの一員で、ニコも学校に行くのを辞めて、そろそろ仲間にならないかと言われていますが、セルヒオの授業を受けてから、もう少し学校にいたいと思い始めます。
パロマに淡い恋心を抱いています。
三人目がルペ。
ルペは長女なので、夜勤で働く母の代わりに妹や弟の面倒をみています。
セルヒオの授業で哲学に興味を持ち、大学の図書館に行き、哲学の本を借りて読み始めますが、母親がまた妊娠してしまい、学校を辞めて赤ちゃんの面倒をみなくてはならなくなります。
ついでに校長のチュチョ。
デブなのを生徒たちから揶揄されていますww。
授業中に学校内を歩いて回っている時にも食べ物を食べながらというのは、日本では考えられないことですよね。どうも独身らしいので、食べる以外に楽しみがないのかもww。
彼も始めはセルヒオに懐疑的だったのですが、いつしか彼の協力者になっていきます。
身体を使い、授業にも協力していますよ、笑。
実話をもとにした映画です。
ENLACEで23人の生徒の中10人が全国上位0.1%のトップクラスになったそうです。
パロマは実在の人物で、大学図書館の司書役として映画に登場しています。
ニコとルペは実在していませんが、彼らのような子どもはメキシコではどこにでもいるのでしょうね。
パロマが現在も生きていて、活躍していることは嬉しく思いますが、ニコとルペのような子どもたちのことを考えると、なんとも言えない気持ちになります。
彼らにとって現実を受け入れて暮らしていくのが幸せなのか、それとも…。
メキシコの現在の状況はわかりませんが、子どもたちが身の危険を感じずに暮らして行ける生活をしていると思いたいですが。
私は最後までルペちゃんのことが気になりました。
主演のセルヒオ役のエウヘニオ・デルベスはアカデミー賞を取った「コーダ あいのうた」の音楽教師役の俳優です。
映画としては面白く見ることができました。
しかし、良かったねで終われない映画です。
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