宮島未奈 『成瀬は天下を取りにいく』2025/06/30

2024年の本屋大賞作品。文庫本になったので、読んでみました。
図書館で何人待ちかと見てみると1200人以上です。すごいですねぇ。
1200番台の人は来年に読めるといいですね。
私のように文庫本(679円)を買った方がいいかも。

六編の短編集です。


「ありがとう西武大津店」
中2の1学期の最終日に、成瀬あかりが島崎みゆきに変なことを言い出す。
この夏を西武に捧げるというのだ。
大津市唯一のデパート西武大津店は八月三十一日に営業終了する。
八月になったら毎日、びわテレビの番組、「ぐるりんワイド」が西武大津店から生中継するらしい。成瀬は毎日映りに行くという。
初めは関わるつもりのなかった島崎だったが、ついつい成瀬といっしょに映りに行くのだった。

「膳所から来ました」
また成瀬が島崎に変なことを言い出した。
いっしょにM-1グランプリに出ようというのだ。
島崎は出ることにする。
成瀬がツッコミ、島崎はボケで、西武ライオンズのユニフォームを着る。
コンビ名は『ゼゼカラ』だ。
ついでに文化祭の自由発表にも出ることになってしまう。
一体、どうなるのか。

「階段は走らない」
敬太が西武大津店が来年8月末で営業終了するというニュースのツイートを見ていると、幼馴染みのマサルからメッセージが来て、日曜日に西武に行こうと誘われる。
約束通りに西武に行くと、小学校時代の同級生にバッタリ会ってしまう。
その流れで、マサルの事務所に行き、飲み、小学校卒業三十年ということで、西部が閉店する前に同窓会を開こうということになる。
実はマサルには会いたい奴がいた。そいつとは1989年の暮れに西武の大階段で別れて以来会えないでいた。
連絡先もわからないあいつと会えるのだろうか。

「線がつながる」
成瀬は滋賀県立膳所高等学校に入学する。入学式の日、成瀬は坊主頭だった。
いっしょのクラスになった大貫かえではできるだけ成瀬に近づかないようにするが、班活動(部活動)見学の時に会ってしまう。成瀬はカルタ班に入るらしい。
班活動がどうでもよくなった大貫は班には入らず、東大を目指して勉強に打ち込むことにし、塾に通うことにする。
八月に同じ塾に通うクラスメートの須田に誘われ、東大のオープンキャンパスに行くと、成瀬がいた。
成瀬は大貫に行きたいところがあるから付いてきてくれないかと頼む。
訳もわからず付いていく大貫。果たして行った先は?

「レッツゴーミシガン」
第四十五回全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会団体戦Dブロック1回戦で、広島県代表錦木高校の西浦航一朗は滋賀県代表膳所高等学校の五番席に座る彼女に目を奪われる。素振りのフォームが独特で、見ているうちに目が離せなくなったのだ。お節介な幼馴染みの結希人がその子に話しかけてくれ、あさってに大津港で待ち合わせをしてミシガンに乗る約束をする。
さて、どうなるのか。

「ときめき江州音頭」
成瀬と島崎のゼゼカラは高校一年生の時からときめき夏祭りの総合司会をしていて、今年で三回目となる。
その打ち合わせの後に、島崎がとんでもない秘密を打ち明けた。
驚いた成瀬は島崎の友人が来たのをいいことに、ロクに話もせずに家に帰った。
それからの成瀬は不調に襲われる。数学が解けないのだ。
成瀬、巻き返しができるか。

この六編の短編の他に「大津ときめき紀行 ぜぜさんぽ」という作者の宮島さんが成瀬に膳所を案内してもらうというエッセイもあります。

さて、皆様、「膳所」の読み方がわかりますか。
実は読み方は出ています。「ぜぜ」なんです。
本当にある町です。
成瀬が通う膳所高等学校は滋賀県でトップレベルだそうです。

成瀬は小さい頃から何でもできる変わった子だったらしく、小学校低学年のうちは皆にすごいと思われていたのですが、次第に気にくわないと思う女子が増え、避けられるようになったようです。
でも、人のことなんて気にしない、一人で大丈夫という子だったので、高校生になれば嫌がらせをする子もいなくなるし、いいんじゃないですかね。
少し発達障害の傾向があるのかもしれないですね。
成瀬は二百歳まで生きるとか、大津にデパートを建てるとか、大きい夢を持っています。
成瀬が言うと本当になりそうですね。

私のようにひねた大人は読まない方がいいww、小学校高学年からYA(ヤングアダルト)向けの本です。
とても読みやすく、楽しいお話です。
人と同じでなくてもいい、あなたはあなたと勇気づけられる人が多いと思います。
夏休みに読んでみると、季節的にいいかもね。