西條奈加 『初瀬屋の客 狸穴屋お始末日記』 ― 2025/08/16
『わかれ縁』に続く、狸穴屋お始末日記シリーズの二作目。

狸穴屋は公事宿。
村と村、町と町、あるいは家と家の諍いや同じ屋根に住む者同士の悶着などの公事、つまり訴訟を手助けするのが公事宿だ。
狸穴屋は離縁に特化した公事宿。
絵乃は借金と浮気を繰り返す亭主と離縁するために狸穴屋で手代見習いとして働き始めた。
そして、離縁が叶った後、ふた月が経った。
「祭りぎらい」
女将の息子、佐枝吉の知り合いの笛師が女房の父親から離縁を申し渡された。何とか離縁に至らぬように力を貸して欲しいというが。
「三見の三義人」
三見村が上林村を相手に二百五十年前から公事を起こしているが、いつも負けている。今回は勝てるのか。捨て身の三見村の三人の客が考えた策は・・・。
「身代わり」
評定所留役の浅井南堂の養子である浅井集堂が南堂を訴えた。何か理由があるのか。調べていくと・・・。
「夏椿」
『鶴勢屋』という商家の大女将が三十年連れ添った伴侶と離縁したがる理由とは。
「初瀬屋の客」、「証しの騙し絵」
三十年前に公事師を辞めさせられた元夫、日賀蔵と離縁し、今は別の夫と『初瀬屋』という旅籠を営んでいるお笠が狸穴屋にやって来る。日賀蔵が江戸に現れ、『初瀬屋』に宿泊している山縣屋と何か企んでいるようだというのだ。調べても特に何も出ては来なかったが、ひと月近くを経た師走半ばに、山縣屋の主人が狸穴屋にやって来て、いま一度訴を起こしたいという。
江戸時代の訴訟のことがわかるお話です。
公事師はただ単に公事を扱うだけではなく、客の幸せのために一肌脱ぐ公事師もいたのですね。
離縁でき、母親と一緒に暮らし始めた絵乃が落ち着いてしまい、あまり活躍していないのが残念です。
これなら女将の桐が主役の方が面白かったかもしれません。
次回に期待します。
最近のコメント