久しぶりの谷根千2011/08/19

先日、暑い中、二、三週間ぶりに谷根千に行ってきました。
暑くなると人が少なくなり、谷根千も一時の休息をしているようです。

昼食を食べようという事で、イタリアンかそばか。
そういえば土用丑の日に鰻を食べそこなっていたので、鰻にすることにしました。
いつもは上野に行くのですが、今回はに一回入ったことのあるお店にまた行ってみました。
特上を二人で頼み、ビールで喉を潤し、のんびりしました。
相棒はちょっと機嫌が悪かったのですが、ビールと鰻を見るとニコニコ顔になっています。単純な奴です。


鰻は携帯のカメラでは美味しく写りませんが、見てください。鰻のしっぽの方が器に入りきれなくて折り曲がっています。上はこの折り畳みがありません。
タレが濃く、甘いですが、美味しいです。
あっさり系が好きな人は別のところで鰻を食べた方がいいです。
こってり系が好きな人にはぴったりの鰻です。
相棒が気に入ったのは、鰻の骨。ピールのつまみに良いようです。


ポリポリとした歯ごたえがいいですね。


座敷には20~30人ぐらいがはいれるようです。

お腹がいっぱいになったところで、今回の用事、出来上がった手作りバッグを取りに行きました。三カ月ぐらいかかったでしょうか?
軽い皮のショルダーです。中のワインレッドの布地がアクセントです。
これから自転車に乗ることが多くなるので、毎日使います。


根津の小路には小さな手作りのお店がたくさんできました。
女性がやっているお店が多いようですね。
気に入ったお店に入って、何か作ってもらってもいいでしょう。
私はこの頃、若い職人さんを応援しています。

物欲まみれの私ですが、日暮里駅前にあるエドウィン・ショップのぬいぐるみたちもお気に入りです。


ぬいぐるみもプーさん、ミッキーマウスとミニーマウス、ドナルドとディジーダック(写真)、キティちゃんなどがあり、小さいのは2000円代、大きいのは
5000円代で買えます。
実は私、ここのジーンズ地のぬいぐるみを集めています。
大分前にドナルドを買ったのですが、恋人のディジーが売り切れていたのです。
この前行ったらディジーがいたので、早速買い、無事に二人は一緒になれました。

まだまだ奥が深い谷根千です。

J.B.スタンリー 『とんでもないパティシエ』2011/08/14

ダイエット・クラブ・シリーズの五作目。


いつもかわいらしい表紙ですが、今回は特に涎が出そうです。

ジェイムズは地元紙の編集長のマーフィーと別れました。そのため、もう一度ルーシーと仲良くなれればと思っています。
そんなジェイムズとは違い、父親のジャクソンはクリスマスの日に料理教室を開いているミラと結婚式をあげることとなりました。
新婚の二人のためにジェイムズは家を出ようと決心します。そのため家を買うことにします。

結婚式にはミラの姉妹と甥と姪が来ました。
妹のポーレットは有名パティシエでお菓子の女王と呼ばれています。どうもミラの家系は料理が上手いようです。しかし、ミラとは大違い、性格に難があります。
ポーレットは町のみんなに辛らつなことを言い、嫌われていきます。
彼女はミラの結婚式に出すケーキの試作品を作っていたホテルの厨房で死んで発見されます。死因はサルモネラ菌でした。

デブ・ファイブの出番です。
でも保安官事務所に勤めているルーシーはジェイムズたちを事件に近寄らせないようにします。
デブ・ファイブの危機です。

今回は有名パティシエが登場するので、ケーキが美味しそう。特に女王のバターとラムのフロスティングをかけた「エッグノッグ・ケーキ」が食べたいです。十層の「チョコレートファッジ・ケーキ」でもいいですねぇ。

ダイエット・クラブといいながら、ダイエットになっていないような感じですが、次回はたぶん、ちゃんとダイエットをするのでしょうね。
ジェイムズは○○なんですから。(○○は読んでのお楽しみ)

読んだ本5冊2011/08/13

大分前に読んだ本が溜まってしまい、内容も忘れつつあるので、またまとめて書きます。(といっても、まだあるのですが)

まず、北森鴻さんの「裏・京都ミステリー・シリーズ」。


『ぶぶ漬け伝説の謎』と『支那そば館の謎』の二冊があります。
何度も書いていますが、北森さんが亡くなってしまったので、魅力的な主人公が出てきても、もう続きが読めません。真に残念です。
このシリーズの主人公も私は好きです。

主人公は有馬次郎。元怪盗(怪盗って今もいるのかしら?)で、今は大悲閣千光寺という貧乏寺の寺男をしています。ちなみに千光寺って本当に京都にあるんですよ。山の中にあり、伊勢湾台風の影響でワイヤーで補強されているというんですから、もし、寺の建物が山からずり落ちることがあったら・・・。ちょっと想像するだけでも怖いかも。

次郎は住職の慈悲により寺で面倒をみてもらえることになりますが、その顛末は本を読んでください。
彼がちょっと迷惑なキャラクターの地元弱小新聞の記者、折原けいに邪魔され(?)ながら、ふりかかってくる事件を、昔の稼業と仲間を使いながら解くというユーモア・ミステリーです。


上田早夕里 『ショコラティエの勲章』、『ラ・パティスリー』


五冊と言いながら、実は違うといういい加減さですが、気にしないでください。

『ラ・パティスリー』は神戸の洋菓子店に現れた記憶喪失のパティシエの謎の話。ケーキが食べたくなります。
『ショコラティエの勲章』は、老舗和菓子店<福桜堂>の店員絢部あかりが、お菓子にまつわる色々な謎を解いていくというものです。

この2冊、食いしん坊の私の胃袋を直撃しました。
それにしても洋菓子職人にもシェフとか使うなんて知りませんでした。お菓子業界に就職しようと思っている人にも参考になる本です。お仕事シリーズに見事入りました(笑)。

宮部みゆき 『心とろかすような―マサの事件簿』


この本、前に読んだような記憶があります。といっても一番最初のしか記憶にないのです。たぶん最初だけ読んで図書館に返してしまったのでしょう。

蓮見探偵事務所に持ち込まれる事件を解決していくのが、短大を卒業後、調査員として働いている加代子が飼っている元警察犬のマサです。
現代に巣くう家庭の問題―家庭内暴力や虐待等―を扱っています。読後はせつなくなります。
カラスのアインシュタインとか犬のハラショウなど、登場動物も個性豊か。
マサが初めて登場する『パーフェクト・ブルー』も読んでみようと思っています。

東川篤哉 『放課後はミステリーとともに』


謎解きはディナーの後で』が本屋大賞になり、そのすぐ後に出版されたのがこれ。

舞台は私立鯉ヶ窪学園。主人公は自分のことを○○という高等部2年で探偵部副部長の霧ヶ峰涼。(名前がねぇ~。こんなんで笑わせなくても・・・)
探偵部ってどんなんと思うでしょう。普通の探偵部です。自分たちで事件を解くという部ですよ。そう、学校で起こる奇妙な事件を解いていく部なんです。そんな部あるはずないと思うでしょう。私もそう思います。
一応顧問もいて、ビーカーでうまいコーヒーを入れるという生物教師、石崎。生物や化学の教師がビーカーでお湯を沸かしたり、ラーメンなどを作ったりするなんて、お約束事みたいになってますねぇ。
登場する刑事たちの名前が祖師ヶ谷大蔵とか烏山千歳。私鉄沿線コンビですって。

はい、ベタなミステリーです。すぐに読めてしまいますから、暇つぶしにはもってこいです。

奥田英朗 『家日和』


これはミステリーではありません。奥田さんですから、短編ユーモア小説です。

ネットオークションにはまる主婦や会社が倒産して主夫になった男、妻と別居し巣作りをする男、在宅のバイトをやっている主婦、文学賞を取った小説家とエコ妻、カーテン&カーペット屋をはじめた夫とイラストレーターの妻という、どこにでもいるような人たちを描いています。
そうそう、こういう人いるよな、とか、え~、こんな人いるの~、など叫びながら(別に叫ばなくていいのですが)読めます。
『我が家の問題』という続編らしきものも出版されているので、図書館で借りて、笑おうと思っています。

休みに見たDVD三本2011/08/12

ひとつずつ書いていると時間が経って忘れてしまいそうなので、三本一緒に紹介します。
まず、『ナルニア国物語 アスラン王と魔法の島』。


『ナルニア国物語』も三作目。
お兄さんのピーターとお姉さんのスーザンはアメリカに行っているので、登場しません。大きくなっちゃたんです。もう物語を信じない年代になってしまったんです。

従妹の家にあずけられたエドマンドとルーシーはうんざりしています。従妹のユースチスが彼らのナルニア国の話を馬鹿にするからです。
ところが、壁に架かっていた海の絵に描かれている船がナルニア国のみたいと言って見ているうちに、絵から水があふれ出し、いつしかアドマンドとルーシー、そしてユースチスはナルニア国へ。
三人はカスビアン王子と再会し、行方不明の七人の貴族を探す旅へと出かけます。

一作目と二作目に比べると意外性があまりなく、三作目でマンネリかしら?
今回はスーザンのお姉さんからの心理的自立が描かれています。
調べてみると七作まであるようで、順次映画が作られるのでしょうね。映画館には行かないけれど、DVDでは見ますわ。
ライオンちゃんが活躍してくれないので、残念。もちろん出てきますが。


『(500)日のサマー』


ニュージャージー出身で建築学部を出たのに、何故かカード会社に入社し、カードライターをしているトム・ハンセンとミシガン出身のキュートなサマーとの恋話。

1月8日に二人は出会います。と言っても、サマーが会社に社長の助手として入社してきたからなんだけれど。
オタクの同僚が彼女に話しかけ、無視され、音楽を聴いていたトムの方がサマーに「その歌好きよ」と話かけられます。
サマーは「愛は絵空事よ」、二人の関係は友達よと冷静です。一方トムは、どんどんとサマーに対する思いがつのります。サマーはたとえベッドインしてもトムを友達としてしか認めません。

結局、トムはサマーに振られます。何故振られたのか、納得のいかないトム。落ち込み、自暴自棄になり、果ては会社まで辞めちゃいます。

トムはサマーのことを運命の人と思い込むのですが、サマーはそうは思っていません。
この2人の心の擦れ違いとトムの思い込みの激しさが笑いを生みます。
トム君、本当の運命の出会いはいつか訪れるから、ガンバレ!


『ジェイン・オースティン 秘められた恋』


ジェイン・オースティン、その人を描いた映画です。
この写真ではわかりずらいですが、ジェイン役はアン・ハサウェイです。私は知らないで見ました。私の中のジェインのイメージと合わない人なので、これは困ったと思ったのですが、ジェインの映画だと思わずに見ると問題ありません。
ジェインは地味な内向的で物静かな、人をじっと観察するような人だと思うのです。アンはどこにいても人の目を引く、社交的な女性ぽいですよね。
実際にこういうことがあった確立は低いとか。実際のジェインは思いをじっと胸に秘めたままだったと思いますよ。

ジェインは貧しい牧師の娘でした。
この頃、女性は結婚するしか生きる道はありませんでした。
ジェインの家族は近所のウィスリーという金持ちの男がジェインにプロポーズすることを期待して待っていました。
ジェインは彼のことはどうとも思っていませんでした。彼女は愛のある結婚がしたかったのです。
しかし、母親はこう言います。(お母さん、怖いです)
「愛のある結婚を選んだらこの始末。無一文で村人から馬鹿にされる」(こんなこと言われるお父さん、かわいそう)
父親は、「よく考えてごらん。人の心を最も打ち砕くのは貧しさだぞ」と言います。

都会からトム・ルフロイという男が来ます。素行不良で田舎に送られた男です。
彼の田舎を馬鹿にしたような言動やジェーンの書いた文をくさしたことにジェーンは憤慨します。
トムはことごとくジェーンをムカつかせるのですが、いつしか二人は・・・。

ジェーン・オースティンは自らの悲しい恋の経験から、貧しい女性が愛する金持ちの男を手に入れ、幸せに暮らしましたという小説を書くようになったと言いたいのかしら?
それはそれでいいのですが、表面的ね。
休み中に、もう一度、ジェインの作品を読み直しましょうか。

レジナルド・ヒル 『探偵稼業は運しだい』2011/08/11



これってシリーズの五作目だそうです。一作目と二作目は十五年前に翻訳されたのですが、それ以降中断していたそうです。読んでみたところ、結構おもしろいと思いました。

シックススミスはかっこいい探偵かと思うと、なんと小柄で禿げかけた、冴えない四十代の独身おっさんです。こういう彼でもガール・フレンドや頼りになる女友達はいます。意外と人好きのする人で、探偵とはいえ頭脳を使うよりも体を使い、本人も認めているように運のよさで何とかやっていくという人です。

今回の舞台は高級ゴルフクラブ<ロイヤル・フー>。
知り合いの警官から紹介されたからと、郡の古い家柄出身のクリスチャン・ポーフィリがジョーに会いに来ます。<ロイヤル・フー>はポーフィリの一族が創設しました。
彼はゴルフで不正を働いたと非難されていたのです。
一体誰が彼をはめようとしたのか、それを探るのがシックススミスの役割です。

私はゴルフは頚椎症が悪化したため、一回コースを回っただけで終わりになってしまいました。今はやる気にはなれません。
この本の中のゴルフの話題はついていけませんが、ゴルフ自体は謎解きとは関係ないので、ゴルフを知らない人が読んでも大丈夫ですよ。

実際には登場しないのに、ちょっと気になるミラベル伯母さんや、看護婦でガール・フレンドのベリル、怪力のボクサーのジョージ、弁護士のブッチャー(女性です)など、これまたお約束の主人公を取り巻く人たちもおもしろく、軽く読めるユーモア・ミステリーです。
暇つぶしにどうぞ。

大崎梢・威風堂書店・シリーズ1~32011/08/10

日常に潜む謎を解くミステリーを探していました。
ありましたよ。
「威風堂書店事件メモ」という副題の『配達あかずきん』、『晩夏に捧ぐ』、『サイン会はいかが?』の三冊がとってもいいんです。
威風堂という書店に持ち込まれる謎を、いわばホームズの役回りのバイト店員多恵とワトソンがわりの正社員の店員杏子のコンビが解くというシリーズです。

本屋についてとっても詳しいので、大崎さんってどういう人かと思って紹介文を読んでみると、元書店員だったそうです。やはりね。本屋に勤めていないと、こういう風に本屋の仕事を書けませんわ。
今度から書店員の視点で本屋を見てみることにします。
それにしてもお客さんってとんでもないことを聞くのですね。本の題名も作者も知らずに、「かわいそうな話なのよ」、「女の子がたくさん出てきて、みんなとっても貧しいの」なんて言われても、困りますよね。(探していたのは『あゝ野麦峠』だそうです)
私は店員さんには近づかないです。本屋で漂い、本の海に沈んで、自分でおもしろそうな魚を釣った方が面白いものね。
「あ、これ、おもしろそう」とピンときて選んだ本がおもしろかったなら、これほど幸せなことってないですよね。

この本が幸せな一冊でした。お仕事シリーズの一冊にしましょう。


一作目の『配達あかずきん』と三作目『サイン会はいかが?』は短編集です。
どの話も味があり、ホロっとさせられます。こんなに本屋に隠された物語があるなんて、予想していませんでした。

二作目の『晩夏に捧ぐ』は長編です。


元同僚の書店員だった美保に頼まれ、多恵と杏子は長野に行きます。美保の勤める老舗書店に幽霊がでるというのです。

この老舗の本屋がいいんです。

「まるう堂の店内はこれといった派手な演出はなかった。けれど、初めて訪れた杏子もすぐになじんでしまうような和やかさがあった」
「棚が話しかけてきますね」「そう言ってもらうと、本屋冥利に尽きるよ」

「棚が話しかけ」るってどういうのでしょうね。こういう本屋があったら、行ってみたいです。

私の好きな書店ってどちらかといえば小さな店です。大きくなると、本が多すぎて、見るのがめんどくさくなるのです。
小さければどこでもいいわけではありません。おもしろいもので、ここはダメっという書店があるんです。意外と駅ナカの書店がよかったりします。
何が違うんでしょうね。今度行って、どこがよく、どこが気に入らないか考えてみますね。
不思議なことに、いつ行っても、気に入った本がある確率が高い書店があります。私と同じ趣味をしている店員さんがいるということでしょうか。

とにかく人間味があり、ほんわかする本です。
『サイン会はいかが?』に坂木司さんがあとがきを書いています。二人とも日常に潜む謎を書くということで、似ているのかな?

広瀬隆 『原子炉時限爆弾―大地震におびえる日本列島』2011/08/09

今日は長崎に原爆が落とされた日。
長崎出身の緑内障友は家族で黙とうをしたことでしょう。

Googleマップで普通では見られない広島の原爆ドームの中が見られます。


この本は昨年出版されていました。広瀬さんはこう書いています。

「地震が起こったら、原子炉の頑丈さにはほとんど意味がない。水が流れる回路のすべて、どこにも破壊が起こらないということが保証されなければ、大事故は防げない」

実は2010年6月17日に福島第一原子力発電所二号機で電源喪失事故が起こっていたそうです。この頃、日本国内は南アフリカのワールドカップで大はしゃぎ。マスコミも報道しなかったそうです。
この時から今の状況は予想できたのではないでしょうか?

他の原発はどうかというと、浜岡原発や滋賀原発、柏崎刈羽原発、六ヶ所村再処理工場、東海村などの建っている土地を地質学的に調べていくと、直下か近くに活断層があるか、ある可能性が高いのだそうです。
なんでそんなところに原発施設を建設したのでしょう?
通産省の役人が知っていて隠ぺい工作をしていたとか。その役人、滋賀原発、柏崎刈羽原発、高速増殖原型炉もんじゅ、浜岡原発に関わり、今は某国立工業大学の教授をやっているそうです。この人は自分の利益だけを考えて、そういうことをしたのでしょうか?良心はないのでしょうか。

今、日本国内にあるすべての原発が止まったとしても、「日本を崩壊させる末期的な大事故ざっと2000回分ほどの危険物を管理していかなければならない」のです。
「高レベル放射線廃棄物は100万年監視しなければならない」と2009年にアメリカ政府が発表したそうです。

ようするにずっと冷やし続けなければならないのに、地震が起きて、今回のように冷却装置が稼働しなくなったら、どうなるのか。第二のフクシマになります。
地震は来るかどうかわからないのだから、そんな仮のことは考えられないと言う人がいるかもしれませんが、危機管理って最悪のことを考えてやるものですよね。そのことも考えずに原発を推進していたなんて・・・。
ホント、3.11までの私たちは幸運だったとしか言えません。

地質学的説明が多い本なので、読むのが面倒という私のような人でも、ザッと読むだけでも参考になります。ただし、読んだ後、眠れなくなるかも。
地震が来てほしくないと切に思います。

インド仏教指導者、佐々井秀嶺2011/08/08

佐々井秀嶺さんの本、『必生 闘う仏教』と彼の自伝、山際素男著 『破天 インド仏教徒の頂点に立つ日本人』、そしてテレビ番組の放送内容を本にしたもの『男一代菩薩道』の三冊を読みました。


彼のことは五木寛之の『海外版インド 百寺巡礼』で知りました。インドでアンベートカルの意志を継ぎ、インド仏教徒の指導者として君臨しているのが佐々井さんです。

これら三冊の本には彼の人生の軌跡が書かれています。けっしてそ聖人の人生ではありません。
どちらかというと、彼は思い込みの激しい人のようです。それだからこそ、悩みも深いのです。
女好きで、何故自分はこんなにも女が好きなのかと苦しむような人です。
女性にもてたのでしょうが、それを赤裸々に語るところなんか飾りっけのない人だなと思います。
こういう生臭い所がインドという風土に合うのかもしれません。

仏教というと、一人で悟りを開くという静的なものという印象ですが、インドの仏教は不可触民解放と結びついているため、どうしても動的にならざるえないのです。彼は「闘う仏教」と言っています。
闘うと言っても、もちろん仏教ですから”不殺生”です。しかし、仏教徒になるからには、「非暴力を貫くためには、自己犠牲を含む必要最小限の力の行使をみずから選択しなければならない場合があることも、覚悟しておかなければ」ならないのです。
インドで仏教徒であることは、なんと厳しいことでしょう。

佐々井は日本には戻らないと言っていたのですが、彼のことを日本に紹介した山際さんの死をきっかけに、2009年に44年ぶりに一時帰国したそうです。
2004年にフジテレビが彼のインドでの活動を放送したのですが、2009年には第二弾として日本に帰国した彼に密着取材して番組を作り放送したようです。
再放送してくれませんかね。ア、テレビがないか・・・。


日本に帰国して、彼は宗派の違いを超えた仏教の実践を唱えています。

「仏教では釈迦以来”出家”の必要性を説きますが、それは断じて「世捨人」や「傍観者」になることではありません。いったん自我中心の世俗的価値観から距離をおき、慈悲心をもって、みるべきものに目を凝らし、聞くべき声に耳を澄ます。そして再び世俗社会に飛び込んでいくことだと、私は思います」

「座禅や瞑想は、立ち上がってからなにをするか、そのためにあると思います。
そしてまた、社会的実践の支えとなるべき「瞑想」は、時も場所も形式も選ばないはずです。いうなればこの人生すべてが、瞑想なのではないでしょうか。生きる姿勢そのものがヨーガのアーサナ(座法)であり、座禅であり、呼吸や会話が念仏であり題目であり、現実社会で慈悲を実践していくことが仏道である、と私は考えます」

お葬式以外では人々の生活とかかわらなくなってしまった現在の仏教を痛切に批判していますね。
彼の言う仏教なら信じられそう。

人の心をすぐに変えることはできません。彼の戦いはこれからも続きます。
それにしてもインドは理解するにはとてつもなく難しい国ですね。

池井戸潤 『下町ロケット』2011/08/07



めずらしく相棒が読みたいと言って買ったので、ついでに私も読んでみました。
直木賞を取った本で、内容がベタだけれどサクサクと読めます。
読後感もスッキリとしていて、この本って会社に勤める男の人の好きそうな本ですね。

佃航平はロケット開発の研究をしていましたが、ロケット打ち上げが失敗したことから責任を取って辞めるというような感じで研究の道を諦め、大田区にある従業員200名程度の実家の町工場を継ぎました。
順調に業績が上がっていたのですが、ある大企業が取引を止めると言ってきたことから運がつき、銀行から融資を断られるは、特許を巡って法廷闘争に巻き込まれるは、倒産の危機か!という状態になってしまいます。
しかし、地道に、誠実にやってきた佃を天は見捨てなかった。
諦めていたロケット開発にかかわるチャンスがやってくるのです。

中小企業の歓びと悲哀がよく伝わってきます。こういう人たちがいたからこそ、今の日本があるのです。
夢をいつまで持ち続けていけるのか。現実を見ろ、青臭いことをいうなと必ず言う人がいるでしょう。
でも、「カネ」よりも「ユメ」を取ったっていいじゃない。
それでなくても今は「ユメ」を持ち辛い世の中なのだから。

経理担当の殿村さん、大好き。
(相棒に私がこの本の中で一番好きな人って誰だと思うというと、当てられてしまいました)
彼の言う、目先の利益だけを考えないで、十年先、二十年先のことを考えようという視点が、今の社会(特に政治)に抜け落ちているような気がします。

これは絶対にドラマになるなと思って帯を見ると・・・。
三上博史主演で8月21日から放送されるんですね。しかし、WOWWOW。と言っても我が家はまだ地デジ対応のテレビを買っていないので、どっちにしろ見られません。
しかし、弁護士が寺島しのぶってどう?(本では弁護士が男なので、特に寺島さんが嫌いってわけじゃないです)


「ものつくり」に関して、関係あるかな?
御徒町から秋葉原へ続くJRの高架下に職人の店が集まった所があります。
2k540 AKI-OKA  ARTISAN」という不思議な名前。この頃マスコミで取り上げられているので、知っている人も多いでしょう。
先々週の水曜日に行ったら休みだったので、再度行ってみました。まだ全部できあがっていないようで、工事をしているところがありました。入り口がなかなか見つからなくて、御徒町から歩いたのに、秋葉原側まで行ってしまいました。


小さなお店ばかりなので、ちょっと入りずらいです。
日傘の骨が壊れてしまい、気に入っていた傘だったので捨てられずにいたのですが、思い切って傘屋さんで聞いてみると、直せるものなら直して下さるとのこと。今度持っていきますわ。
早く工事を終わらせて下さいませ。

『青木繁展―よみがえる神話と芸術』@ブリジストン美術館2011/08/06

青木繁といえば、教科書に≪海の幸≫が出ていたのを覚えています。が、それ以上に興味は持ちませんでした。
赤瀬川さんの『日本美術応援団』(だと思うのですが、記憶が曖昧。他の本だったかも)で≪海の幸≫を取り上げているのを読んで、実物を見たいと思いました。
ブリジストン美術館で『青木繁展』をやっているのを知り、重い腰をあげて行ってきました。
彼は1904年(22歳)から1911年(28歳8か月)という短い期間で彼独自の世界を展開し、後世に残る作品を残しました。


[第1章: 画壇への登場―丹青によって男子たらん 1903年まで]
木炭画や鉛筆画などが多く展示されています。
その中で、黒田清輝の「昔語り」に描かれた芸妓の上半身の下絵を模写した作品である「舞妓」はデッサンの木炭の濃淡で髪の一本一本、着物の布のしわなど緻密に描かれており、後で見た師であった黒田のデッサンとそっくりでした。


これは黒田の「舞妓」。会場で比べてみて下さい。

[第2章: 豊饒の海―≪海の幸≫を中心に、1904年]
有名な≪海の幸≫が画壇に発表されたのが1904年です。
現物を見て分かったのですが、下絵や碁盤の目が消されずに残っています。
こういうことは実物を見ないとわからないことです。


一人、恋人の福田たねらしき白い女性の顔がこちらを見ています。不思議な絵です。
晩年の彼が神話の世界を描きましたが、この絵も実際の漁の様子ではなく、彼の描く物語の世界のようです。

私は彼の描く海に魅せられました。まるで印象派の描いたような絵筆のタッチです。


海は彼の中で特別なものだったのでしょうね。

[第3章: 描かれた神話―≪わだつみのいろこの宮≫まで 1904-07年]
彼は何枚も自画像を描いています。その絵を見ながら、キリストのように思いました。


彼はキリストのように、絵に殉教しようと思っていたのかしら?
第5章を見ている時に、キャプションに「彼が洗礼を受けた」と書いてあるのを見てやっぱりと思いました。


この「わだつみのいろこの宮」を見て、ある画家を思い出しますね。そう、ラファエロ派のロセッティやバーン・ジョーンズ。
日本の神話を描いているのですが、日本的というよりも西洋的な感じがします。
この絵を自信をもって展覧会に出品したのに、評価は低かったといいます。

[第4章: 九州放浪、そして死 1907-11年]
絵は売れず、恋人に子供ができ、故郷の父親が死に、結核にかかります。手紙で困窮している様子がわかります。
この展覧会で、私が一番好きなのは「夕焼けの海」と絶筆の「朝日」です。
どちらかというと暗いトーンの絵が多かったのに、晩年のこの2枚の絵は淡いトーンに変っていて、静謐さに満ちています。



自分の命が尽きようという時の青木の心象は、あくまでもこの絵のように穏やかなものだったのでしょう。それは諦念かもしれませんが。

[第5章: 没後、伝説の形成から今日まで]
彼は友人に恵まれていたようで、友人の坂本らは繁の死後、遺作展の開催や画集の発行に奔走してくれました。彼が今日にこのように評価されているのは、友人のおかげですね。

8月9日から展覧会の後期になります。後期には紙作品(水彩・素描)はすべて入れ替わり、「大和武尊」(東京国立博物館所蔵)は展示されないそうです。

この青木繁展の他にコレクションも展示されています。思いがけず、またかわいいジョルジェットちゃんにも会えました。ピカソのサルタンバンクもいました。

震災の影響で美術館も売店も18時までしか開いていません。ティーショップは17時半になるとオーダーストップです。
ここではカフェオレを頼むと、ミルクとコーヒーが別々に出てきて、自分で好きなように濃さを調節できます。2杯分あるので、嬉しいですね。
サンドイッチは「赤トンボ」から取り寄せているそうです。前回は食べられたのですが、今回は12時で売り切れになってしまったそうです。どうしても食べたい場合は予約しておくといいそうです。