ジル・ペイトン・ウォルシュ 『セント・アガサが揺れた夜』2026/02/02

<イモージェン・クワイ>シリーズの四作目ですが、作者がお亡くなりになっていますので、シリーズの最後の作品となります。


セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師イモージェン・クワイの自宅に、フランセス(フラン)・ブリャンとジョシュ・コリフッドのカップルが下宿している。
ある日、フランから演劇クラブ<キッド・プレイヤーズ>の役員会を家で開いてもいいかと聞かれ、イモージェンは承諾し、役員会を傍聴することにした。

<キッド・プレイヤーズ>は、稽古場が火災で焼け、火災保険に入っていないかったため破産目前だったが、大富豪の息子マーティン・モトルが救済を申し出てくれたという。
ところが彼のつけた条件がとんでもないものだった。
これから上演する『ハムレット』をモトルが演出し、主役を演じるというのだ。
困ったことにモトルはひどい大根役者なのだ。
普通に演じると、とんでもないことになる。
そう考えて、急遽、全幕が一時間ぐらいで終わる<粗悪な四つ折本>を使うことにする。

ところが『ハムレット』の公演中、モトルは思いもかけない行動を取る。
昨年、セント・アガサ・カレッジの学寮の塔から<ハーディングの悪ふざけ>をしようとした英文学科のフェロー、ジョン・タレンタイアーが転落死していた。
モトルはタレンタイアーの死は単なる事故死ではなく、殺人だと示唆したのだ。

同じ頃、寮から学生がいなくなる。
イモージェンはいきがかり上、彼女の養母に会いに行く。

何も関係のなさそうな二つの出来事だったが…。

過去の恋人の裏切りを未だに忘れられないイモージェンは、高齢の男性との穏やかな付き合いの中に幸せを見出しています。
しかし、それはいつか来る別れの影がつきまとうものでした。

シェイクスピアのテキストにはいくつかあります。
昔、学んだとは思いますが、記憶が…。
本の中に『ハムレット』に関する蘊蓄など色々と出てきますので、気になる方は読んでみて下さい。
各カレッジにはそれぞれ変な伝統的ないたずらがあるのでしょうか?
<ハーディングの悪ふざけ>は危ないのにねぇ。
後、ネタバレになるかもしれないので、詳しくは書きませんが、イギリスの裁判の…。

最後がとても美しく、いい終わり方です。

<シリーズの順番>
④『セント・アガサが揺れた夜』(本書)

ジョアン・フルーク 『ピンクレモネード・ケーキが振りかぶる』2026/01/17

お菓子探偵ハンナ・スウェンソン・シリーズの29作目です。


ミネソタ州レイク・エデンの保管官助手のマイク・キングストンが退職したいと言い出す。
<クッキー・ジャー>を経営するハンナ・スウェンセンと町の仲間たちはミネアポリス市警の刑事ステラ・パークスの助けを借り、なんとかしてマイクの退職を阻止しようと考える。
ステラはマイクに長期休暇を取らせ、ロング湖にある彼女の両親のキャビンに彼を連れていき、のんびり過ごさせることにする。

そんな時に、レイク・エデンで野球のオールスター・トーナメントが開催される。
トーナメントの前に招待選手の元メジャー選手のバーニー・ノーノー・フルトンは地元の女子校生を車の後部座席に乗せ、勝手にパレードをして、町の人々を激怒させる。
どうもノーノーは過去にも色々な人々を怒らせているようで、その一人がハンナの母のドロレスだった。
ノーノーは野球大会の前夜に開かれた晩餐会で、またもやドロレスを侮辱したため、ドロレスは「復讐してやる」と宣言してしまう。

翌日、野球大会の最中に売店にいるハンナのところにドロレスがやって来る。
しばらくして携帯電話を落としたことに気づいたドロレスは探しに行くが、なかなか戻ってこない。
ドロレスを探しに行ったハンナはバットを持って立っている彼女を見つける。
ドロレスは観客席の下でノーノーの死体を見つけたと言う。

またもや死体を見つけてしまうハンナたち。
第一容疑者はドロレスか…。

ハンナは、飼い猫が元夫が殺されていた家に入れなくなったので、歯医者のノーマンの家に居候しています。
ふたりはとってもいい雰囲気です。
マイクはそれがショックなのかもしれないですねぇ。
もう結婚しちゃえばいいのにと私だけではなく、町の人々も思っていることでしょう。
シリーズを長引かせるのもそろそろ止めてほしいですわ、ということを考えていたら、なんと最後に驚くことが起こります。
フルークさんも考えますねぇ。

30作目は「Pumpkin Chiffon Pie Murder」で、これから刊行されるようです。
放火事件が起こり、現場で遺体が見つかり、放火犯を捕らえるために、ハンナが同窓会パーティを開催するらしいです。
ノーマンとの関係は進展があるのでしょうかねww。

デ・ラ・モッツ&モンス・ニルソン 『死が内覧にやってくる』2025/12/26

スウェーデン・ミステリの新シリーズ。


ストックホルムの国家殺人班の犯罪捜査官ピエテル・ヴィンストンは娘のアマンダの十六歳の誕生日パーティに出るためにスコーネ地方の田舎町エステリエンにやって来た。
元妻のクリスティーナが再婚してエステリエンに住んでいる。
ここ三年ばかり、誕生日パーティの参加を断っていたが、失神発作が起こるようになり、疾病休暇を取るように言われたため、娘の誕生日パーティに参加することにしたのだ。

ヴィンストンはなんとか苦手なパーティを乗り切るが、パーティの翌日にクリスティーナに誘われ、ギスレブビーチにある物件の内覧に行くことになる。
ところがそこでセレブな不動産ブローカーで有名なジェシー・アンダーソンの遺体を見つけてしまう。
ジェシー・アンダーソンはギスレブビーチの海際に豪邸を建てるという不動産プロジェクトを立ち上げ、早々に建築許可をとりつけ、地元民の怒りをかっていた。
彼女は住民を懐柔するために、村の自治会が欲しがっていた彫刻を買って、内覧物件に飾り、その家が売れば彫刻を村に寄贈すると言っていた。
皮肉なことにジェシー・アンダーソンはその彫刻、真鍮製の巨大な釣り針、ザ・フックに刺さって死んでいたのだ。

たまたま現場にいたため、ヴィンストンはアドバイザーとして初めて殺人事件を担当する地元シムリスハムン署の犯罪捜査官トーヴェ・エスピングの捜査を手伝うことになる。

北欧ミステリというと、風光明媚な土地ととっつき難い住民たちが出てくる暗いトーンのお話という感じですが、このお話は全く違い、明るいです。
ヴィンストンは上質な三つ揃いのスーツを着て、高級革靴を履き、モレスキンの革製のノートを使っているというスウェーデンらしからぬ人で、潔癖症。
動物が苦手で、車が牛たちで通れないのに牛が怖くて追い払えず、借りたコテッジにいる猫にも近づけないという、情けない人です。
対するエスピングは、地元出身で自分に自信があり、捜査を一人でやりたくてたまらず、ヴィンストンが邪魔で仕方がないという女性です。
うまく行きそうもない二人ですね。

スコーネ地方は元デンマークだったということもあり、方言も独特で独自の文化があるそうです。
次回が楽しみなシリーズです。

ローラ・チャイルズ 『ブレンド・ティーは死を占う』2025/12/20

お茶と探偵シリーズの27作目。


「インディゴ・ティー・ショップ」のオーナー、セオドシア・ブラウニングとお茶のソムリエ、ドレイトン・コナリーは、悲惨な幽霊話が伝わる古い館、ブリトルバンク・マナーで撮影されている『暗黒の運命』という長編映画の撮影現場でケータリングをしている。
ケータリングと言っても、食事ではなくクラフトテーブルという、出演者とスタッフのために軽食と飲み物を出すものだ。

セオドシアは監督のジョッシュ・モロの気まぐれから紅茶占いの占い師役をさせられる。
ところが、その撮影中に、モロ監督が感電死してしまう。
彼が座っていた椅子に何者かがワイヤーを巻き付けていたのだ。

ティドウェル刑事と恋人のライリーから事件に関わらないように釘を刺されたのもあり、セオドシアは関わるつもりはなかったが、友人のデレイン・ディッシュがモロと短期間ではあるが付き合い、別れたばかりだということがわかり、彼女は容疑者の一人となり、セオドシアに泣きついてきた。
仕方なく、事件のことを調べ始めるセオドシアだった。

デレインに頼まれる前から首を突っ込む気満々のセオドシア。
彼女に付き合うドレイトンもドレイトンですが、それが彼の若さを保つ秘訣なのかもしれませんww。

さて、いつも楽しみなお茶会をひとつご紹介しましょう。
「詩のお茶会」です。あまり日本人には詩などは縁がないですが、西洋人には好きな人が多いようです。
テーブルの上には日本人が大好きなウェッジウッドのワイルドストロベリーの食器とピンク、青、ピーチ色のランチョンマット、ロバート・フロスト、ウォルト・ホイットマンの詩をプリントアウトしたもの、ガーベラをいけた花瓶、キーツ、シェイクスピア、ロバート・バーンズの胸像、詩集、何十本と言う小さな白いキャンドル…。
お茶会のメニューはオスカー・ワイルドのベリーのスコーン、T・S・エリオットのティーブレンドに挟んだシェイクスピア風サラダ、ウィリアム・ブレイク風シーフードのベイク、デザートはエリザベス・バレット風のブラウニーとエズラ・パウンド風のケーキ。
お茶はルイス・キャロルのカモミール・ティーとエミリー・ディキンソンのダージリン・ティー。

ここに出てくる名前はイギリスやアメリカで有名な詩人たちです。
余興としてドレイトンとセオドシアがお茶にまつわるお気に入りのフレーズを3つ紹介します。
探せたものを原文で載せておきますね。(訳は本書による)
小説家で批評家のヘンリー・ジェイムズが『The Potrait of a Lady (ある貴婦人の肖像)』の冒頭に書いている文です。

「Under certain circumstances there are few hours in life more agreeable
than the hour dedicated to the ceremony known as afternoon tea.」
(アフタヌーンティーという名で知られる会に人生の数時間を費やすのは、何物にも代えがたい)

イギリスの小説家、ジェーン・オースティンの有名な言葉。

「I would rather have nothing but tea.」
(私はお茶以外、なにもほしくない)

もう一つのラルフ・ウォルド・エマーソンの『木箱に入ったお茶は多くの詩情と洗練された感情が詰まっている』はすぐには探せなかったので、誰かわかったら教えてください。(ごめん、調べるのが面倒なの)

セオドシアは今までミステリのお茶会、ヴィクトリアンのお茶会、チョコレートのお茶会、ラベンダーのお茶会、グラムガールのお茶会、プリティ・イン・ピンクのお茶会などを開催していたようです。
今回は詩のお茶会の他に『ティファニーで朝食を』のお茶会とヴィンテージのお茶会も開催します。
どんなものか興味がある方は是非本を読んでください。

28作目の『Peach Tea Smash』ではオペラ友の会の資金集めのパーティの最中に会長の夫が殺され、セオドシアは調査を依頼されるようです。

ティー・ショップにお茶会に殺人捜査と忙しいセオドシアですねww。


リン・メッシーナ 『公爵さま、謎解きディナーです 行き遅れ令嬢の事件簿⑦』2025/11/15

前からですが、自分のブログを開けようとしたり、写真やブログをアップしたり、コメントを見ようとすると、時間がかかり、ひどい時には時間切れになってしまいます。
他の会社のブログではそういうことはないので、朝日ネットの方の問題ですかね。
とてもストレスフルなんですけど。どうにかしてもらいたいものです。

「行き遅れ令嬢の事件簿」シリーズの七作目。


ケスグレイブ公爵夫人になってから初めての事件であるフランス人シェフの生首事件を解決したベアトリスだったが、その事件が新聞に取り上げられ、ベアトリスが勝手によその屋敷に入り込み、生首を持ち上げて調べたなどと書かれ、彼女への世間の評判は最悪だった。

そこで、ベアトリスの母の親友だったレディ・アバクロンビーがベアトリスの評判を改善しようと、社交界のセレブたちを招いた謎解きディナー開催を思いつく。
ベアトリスは反対したのだが、うまく丸込められてしまい参加することになる。

しかし、謎解きディナーの当日、出席者の一人、プジー卿が殺されてしまう。
他のセレブたちは我先にと帰ろうとするが、ベアトリスは彼らを阻止する。
なぜなら彼らの中に犯人がいるはずなのだから。

ベアトリスは犯人捜しを始めるが、悩む。
このままではベアトリスのせいで公爵さまに迷惑をかけ、彼の評判も地に落ちるのではないのか。

だが、公爵さまは気にしていない。
ケスグレイブ公爵という存在は完全に別格。唯一無二の存在なのだ。

さて、ベアトリスは本物の殺人事件を解いて、名誉挽回できるのか。

ベアトリスも変わっていますが、それ以上に公爵さまは変わっています。
ベアトリスの「頭脳明晰さ」が魅力的に見え、彼女の「探偵癖」を愛しているんですもの。どう考えても普通ではないでしょう。
「割れ鍋に綴じ蓋」、「蓼食う虫も好き好き」、「似合う夫婦の鍋の蓋」、「似たもの夫婦」。
他に何かありましたか?

そうそう、彼女のおじさん家族たちも変わっていましたよね。
おばさんは言うに及ばず、従妹のフローラはまだ翻訳されていない番外編で殺人事件を解決しようとして、自分の力を過信してしまったようです。
読んでいると彼女が滑稽に思えてしょうがありません。
フローラの悪いところがベアトリスとどうも似ているようです。
フローラのこれからが心配ですね。

公爵さまの家族も何やらありそうです。
少し触れてありますが、次回に詳しく紹介されるのではないのかしら。

このシリーズは来年三月に十四巻目が発売されるようです。
日本では八巻目『A Malevolent Connection』の翻訳が来年の今頃になりそうです。
ケスグレイブ公爵の叔父さんがベアトリスの幸せを台無しにしようと目論んでいるようです。
やっぱり公爵の親戚もおかしいのか…。


<今日のわんこたち>


パパに抱かれたわんこたちはママが写真を撮ろうとすると、目をそらします。
カメラの光が嫌なのかしら。

アリスン・モントクレア 『奇妙な花嫁候補 ロンドン謎解き結婚相談所』2025/11/09



前よりも黄色が強くなったと思います。
そろそろここのイチョウは葉が落ちそうです。


ロンドン謎解き結婚相談所シリーズの五作目。


アイリス・スパークスとグウェン・ベインブリッジが経営する<ライト・ソート結婚相談所>に予約なしで様々な人たちがやって来る。
とにかく娘をすぐに片づけたいという父親、自分が死んだ後に昆虫学者の夫に後添えを望む、余命わずかな女性、オックスフォードの卒業生で蛾を愛する22歳の女性…。

その頃、グウェンは精神医療裁判所に身分変更の申し立てをしていた。
同じ頃、モリソン卿から<ベインブリッジ・リミテッド>の取締役会に出席することを求められる。
取締役会ではグウェンの後見人のオリヴァー・パースンが動議を提出し、最高経営責任者からベインブリッジ卿を解任するように求めた。
動議は否決されたが、今度は精神医療裁判所の審議でパースンは取締役会での出来事を口実に、グウェンの身分変更の申し立ての同意を取り下げたいと言い出す。
グウェンは一週間で近友を召喚しなければならなくなる。
絶体絶命の状況に陥るグウェン。
それだけではなく、夫に後添えを望んだ女性、アデラ・レマーゲンの遺体がエセックス州の森で見つかる。
警察は自殺だと判断するが、アデラはグウェンと彼女の夫の再婚相手を探す代わりに自殺はしないと約束していた。

アイリスはグウェンの苦しみを少しでも和らげるために、他殺を疑っているエセックス州警察ラウトン署のヒュー・クイントン巡査の捜査を手伝うことにする。

グウェンは近友にふさわしい人がいないかと考え続け、やっと一人思いつく。
そして喜びのあまり愚かな行為をしてしまう。
その夜、パースンが撲殺された。

二つの殺人事件の容疑者になるアイリスとグウェン。
彼女たちは今までのように自分たちの力で事件を解決できるのか…。

グウェンは夫が戦死したと知らされた時とひとり息子の監護権が義父母に奪われたと知った時の二回、自殺未遂をし、1944年3月17日に精神医療裁判所から精神疾患者と宣告されました。
それから二年が経ち、息子の監護権を取り戻すために身分の変更を申し出たのですが、いくら貴族でも、女ですから、軽んじられているんです。
その怒りが突如として出現してしまい、彼女が不利な立場になることがあります。
今回もそうですが、アイリスという得難い友人が助けになります。
前のドールハウスのお話もそうでしたが、戦後のアメリカもイギリスも同じような状況だったのですね。

本の中に出てくる「近友(きんゆう)」というのは「指名された第三者としてミセス・ベインブリッジの申し立てを助ける人」だそうですが、イギリスの裁判用語なんでしょうか。
原書でなんと書いてあるのか確かめたいところですが…。

来年の1月に八作目が発売されるようです。
六作目は『Murder at the White Palace 』で、依頼人たちのために大晦日の夜会を開催しようと、二人は空きビルを探し回りますが、そこで遺体を見つけてしまうようです。
グウェンの監護権を取り戻すための裁判がどうなるのか、そして次なる二人の活躍が楽しみです。

ケイティ・ティージェン 『事件現場をドールハウスに』2025/11/04



舞台は第二次世界大戦が終わったばかりの1946年10月、バーモント州エルダーベリー。

メープル・ビショップは驚いた。
医師でフランスの野戦病院で亡くなった夫のウィリアムが残した遺産がたったの十二ドル六十七セントだというのだ。
これでは家のローンも返せない。
どうやって暮らしていけというのだ。

いつものように金物屋に買い物に行くと、店主のベン・クレンショーからとてもいい申し出がある。
メープルは法律の学位を持ち、弁護士資格も持っているが、町の弁護士事務所はメープルが女だからと雇ってはくれなかった。
それならば、メープルの唯一の趣味であるドールハウス作りを生かし、ドールハウスを売ってお金を稼ぐしかない。
そう決心したメープルに、彼の店の空いたスペースを使い、ドールハウスを売ってはどうかというのだ。

メープルの最初の客は町のトラブルメーカーのイライジャ・ウォレス。
彼の妻のアンジェラがメープルのドールハウスを気に入って、買ってくれたのだ。
しかし、翌日、メープルが出来上がったドールハウスを届けに行くと、納屋で首を吊って死んでいるウォレスを見つけてしまう。

警察は自殺と判断したが、メープルは納得がいかなかった。
実は彼女には特殊な才能、「一度目にした場面を完璧に覚えて再現できる」という写真記憶(カメラアイ)、があった。
メープルは自分が見た現場を再現したドールハウスを作って保安官事務所に持っていき、保安官を説得しようとするが、聞いてもらえず、事務所から追い出されてしまう。

保安官の甥で保安官事務所で働き始めたばかりのケン(ケニー)・クワークがメープルが置いていったドールハウスを返しに来て、メープルに一緒にウォレスの件の調査をしようという。
この提案にメープルは飛びつくが…。

戦争で家族が亡くなったり、PTSDで働くこともままならない帰還兵たちに対して、アメリカ政府は手厚い保証はしてくれなかったようです。
メープルのように資格を持っている有能な女性であっても、女というだけで採用してもらえませんでした。
アンジェラはDVの犠牲者ですが、その状況に甘んじていなければなりませんでした。
そんな時代に、天涯孤独の身となったメープルは自らの才気煥発さを生かし、どん詰まりに思えた人生を切り開いていきます。

コージーミステリーによく出てくる、主人公と対抗する意地悪な女性が出てきたと思ったら、一巻目で退場となってしまいました。
最後には敵対していた保安官とも仲良くなり、やっとメープルは町の人たちに受け入れられるようになったようですが、最初からうまく行き過ぎではないでしょうか。
一巻目からこれでは後はどうなるのか、結構、私の好きなお話なので、次で落胆しないかと心配になります。

ジオラマで事件現場を再現するということはアメリカで実際にやっていたようです。
「法医学の母」と呼ばれたシカゴの大富豪の娘、フランシス・グレスナー・リーが事件現場のジオラマを制作し、捜査官の訓練に使っていたそうです。
詳しくはあとがきにも書いてありますので、興味を持った方は読んでみてください。

二巻目は『Murder in Miniature』で、9月に出たばかりです。
ケニーの幼馴染で消防士志望の若者が小屋の焼け跡から遺体となって見つかり、メープルは火災が事故なのか放火なのか突き止めることになり、小屋のミニチュアを作ります。
英語の勉強のために読んでみようかどうか考え中です。(この頃ペーパーバッグも高いのよねぇ)

ブレイク・マーラ 『ロンドン、ドッグパーク探偵団』2025/09/02



人間だけで駒沢オリンピック公園に行ってきました。
ここは毛の多い大きいわんこが沢山います。
ちょっと歩いただけで4匹発見しました。
朝の八時を過ぎたら暑いので、わんこの散歩はしないと思っていたら、結構います。
写真はカフェのMr. FARMER。ブレックファーストを7時からやっています。
野菜が美味しいです。
久しぶりに訪れたら、オーダーはQRコードで、清算は機械になっていました。
モバイルオーダーが当たり前の世の中になってきていますね。
まだ付いて行けそうですが、もっと年を取るとどうなるやらww。

さて、本の方は表紙のわんこたちがかわいいので読んでみました。


ルイーズ・マロリーはミニチュア・ダックスフンドのクラウスのママで、コンサルティング会社を経営している。
パートリッジ・パークでスコティッシュ・テリア、ハミッシュのママで事務弁護士のイリーナ・イワノワと四人(正確には二人と二匹)で、早朝のお散歩をしている時に、犬たちが男性の死体を見つける。
その死体は昨年パルボウイルスで死んだアルフィーというコッカプーを飼っていた元犬仲間のフィリップ・クリーシーだった。
フィリップとはアルフィーが死んでから疎遠になっていたが、ルイーズはフィリップの死の真相を突き止めようと決心する。

同じ頃に、何者かが毒入りの食べ物を道に置き、何匹かの犬が食べてしまうということが続いていた。

パートリッジ・パークのドッグランで出会った犬飼いたちが作ったチャットグループに集う仲間(「pack"パック"」)たちは情報交換を行い、結束を固め、犯人に迫っていく。

日本とは違い驚いたのが、同じドッグランを使っている犬飼たちが「パートリッジ・バーク」(バークは「bark”吠える”」のこと)というチャットグループを作っているということです。
日本でそんなグループってあるのかしら?私が知らないだけ?
そういうわけで、お話の中で犬飼いたちのチャットが飛び交っています。
「この人誰?」ってことが多々あり、私の記憶力が悪いせいでもありますが、あまり楽しめませんでした。
続けて読むうちに名前を覚えていくはずなので、楽しめるようになるかしら?
ちょっと自信がありませんわww。

二作目は『Bone of Contention』。
ボクサー犬のハーキュリーズのママ、ヤズが運河沿いのベンチで死んでいる男性を発見。
その男性を最後に目撃したのがフレンチ・ブルドック、タンクのママで『クロニクル』紙の記者であるクレアだったため、警察は彼女を勾留します。
パックたちがクレアのために真犯人を突き止めようと再び立ち上がります。

リン・メッシーナ 『公爵さま、執事には負けません』2025/07/16

「行き遅れ令嬢の事件簿」シリーズの六作目。


ベアトリスはケスグレイブ公爵のダミアン・マトロックと結婚し、公爵夫人となった。
しかし、使用人に会うのが怖い。
彼らは事あるごとに「奥さま」を連発し、「奥さま」と呼ばれるたびにベアトリスはビクッと縮みあがるのだ。

覚悟を決めて、家政婦と話しに地階へ行ったベアトリスは、間違って執事の作業部屋に入ってしまい、執事のマーロウと従僕のジョセフの話を聞いてしまう。
ジョセフがムッシュー・アルフォンスの不幸な死についてベアトリスに調査をお願いしたいと言うのを、マーロウは女性に殺人事件の調査はできないと断言してはねつけたのだ。
マーロウがベアトリスや女性を軽蔑するのは彼の勝手だが、人殺しを突きとめる才能を物笑いの種にされ、頭に来たベアトリスはアルフォンスの件を調査すると、マーロウに宣言する。

ムッシュー・アルフォンスはヨーロッパで一番有名なフランス人シェフで、二年前に銀行家のメイヒューに雇われた。
ジョセフによると、昨日、殺される前に、家政婦のミセス・ウォレスに仕事を辞めると言っているのを聞いたという。
ムッシュー・アルフォンスは”小型のギロチン”の刃を調整している時に誤って自分の首を切断してしまったのだから、事故であると判断されたらしい。

ベアトリスは公爵さま抜きで、一人で調査を始める。
まずは家政婦から話を聞いて、それからメイヒューから話を聞かなければ。
意気揚々とメイヒュー邸に赴くベアトリスだった。

さて、ベアトリスはマーロウの鼻を明かし、使用人たちの尊敬を勝ち取ることができるのか。

ベアトリスの想像力は普通ではないですね。
そういう彼女だからこそ公爵さまが気に入ったのでしょうが、これからも殺人事件に首をつっこみ、危ない目に遭いそうです。
彼女に翻弄されそうなケスグレイブ公爵家の使用人たちが可哀想に思えてきました。

狡猾な銀行家のメイヒューとの丁々発止の会話が今回の目玉です。
私は貴族社会の仕来りが面白かったです。
ベアトリスはそれほど身分が高くなかったので、使用人と気楽に暮らして来たようです。結婚して公爵夫人になりましたが、公爵は爵位の一番上ですから、やりたい放題、権力は使い放題ww。いいですね。
公爵さまはいつまでベアトリスを溺愛するんでしょうね。
新婚の二人はいちゃいちゃしすぎです。

このシリーズは今年の三月に十三冊目が出版されています。
七作目は『A Ghastly Spectacle』。
公爵夫人になっても殺人事件の調査を止めないベアトリスのために、レディ・アバクロンビーが殺人ミステリの晩餐会を開催します。その中で起こる架空の殺人事件をベアトリスが解くはずでしたが、本物の殺人事件が起きてしまうようです。

翻訳者が頑張ってくれてるらしく、今年中に七作目が出版されるようです。


<シリーズの順番>
⑥『公爵さま、執事には負けません』(本書)

サラ・ハーマン 『うちの子が犯人なわけない』2025/07/11



三十一歳のフローレンスは10歳の息子を持つシングルマザー。
元ガールズ・グループのボーカルをしていたが、子どもを産んで正気を失い、再結成の時にバンドを外された。
その時からずっとカムバックを狙っている。
定職にもつかず、行き当たりばったりの生活をしている。
息子の学校のママたちをバカにし敵対心を持っているため、ママ友も友だちさえいない。

息子のディランが校外学習に行った日にとんでもない事件が起こる。
アルフィー・リズビーが行方不明になったのだ。
ディランによると、その日、彼はアルフィー・リズビーと組んでいたが、彼がゴミ箱を探しにいっている間にアルフィーはいなくなったという。
ディランはそれを言わなかったため、学校に戻ってからアルフィーがバスに乗っていなかったことがわかり大騒ぎとなったのだ。

ディランが元夫のもとに行った後に、フローレンスはディランのベッドの下にアルフィーのリュックサックを見つける。
その中にあった日記帳にディランがアルフィーに「殺してやる」と言ったことが書かれていた。
まさかディランが・・・。
フローレンスは日記帳を燃やす。

息子の嫌疑を晴らすため、フローレンスは双子が同じ学校に通う弁護士のジェニー・チョイを巻き込み、犯人探しを始める。

原題が「All  The Other Mothers Hate Me」です。
はっきり言って、フローレンスが嫌われるのは仕方ないです。
彼女はイギリスにいるイケイケのアメリカン・ガールで、容姿に自身があり、男は睫毛をパチパチすりゃあ落ちると思っているのですから。
友だちになったジェニーから痛烈なことを言われています。

「あなた、容姿が衰えたらどうするつもり?代わりの策があるわけ?ああいう手管には賞味期限があるのよ」

その通り。
他にもここには書きませんが色々とえげつないことをしています。
そんなフローレンスですが、最後の方でやっと気づきます。

「やっとわかった。この十年間、あたしはずっと楽な道を選び続けていたのだ。
(中略)決まった仕事も恋人もなく、ほかのママたち全員から嫌われている」

自分の息子を助けるために犯人探しをしていたのですが、やっと最後に正しいことをやろうと思うフローレンス。
満身創痍にはなりましたが、ちょっとは利口になったかな。

母の愛は強しというお話でした。
『ババヤガの夜』とは違った意味で、読む人を選びます。
私は何度も読むのを止めようかと思いました。
はっきり言ってフローレンスみたいな女性、大嫌いwww。