ヘニング・マンケル 『背後の足音』 ― 2022/12/19
刑事ヴァランダー・シリーズの七作目。

父親が死んでから二年が経ち、ヴァランダーはまもなく50歳。
元妻は再婚すると連絡してきますが、ヴァランダーはというと…。
彼は不摂生が祟り、とうとう病気になってしまいます。
とにかくコーヒーばかり飲んで、食べるのがピザとかハンバーガー、サンドイッチなどで、野菜など食べていない感じですものね。
肥満、頻尿、多量の水分摂取とくれば、何の病気かすぐにわかりますね。
スウェーデンでは糖尿病が国民病だと本に書いてありましたけど、フィンランドとスウェーデンに多いようです。
会議中に意識を失うことがあったというのに、ヴァランダーは自分の病気のことを隠します。同僚に言っておいた方がいいと思うのですが。
夏至の日から数日後、公園で十八世紀の服装でパーティを開いていた三人の若者が行方不明であるという訴えがあった。
当初は事件性がないと見なして放置していたが、一人の娘の母親が再び警察署にやって来て、娘からウィーンの消印がある絵はがきが届いたが、筆跡がちがうと言い張り、警察はなにもしないと腹を立てているようだ。
マーティンソンは母親の言うことにどことなく真実味があると言う。
彼の予感が当たることがあると思ったヴァランダーは次の日にこの件を取り上げることにする。
ところが次の日、スヴェードベリが出勤して来ない。連絡もない。
彼が無断欠勤をするなどあり得ないことだ。
何かおかしいと思ったヴァランダーはスヴェートベリの住んでいるアパートまで行ってみる。
ベルを鳴らしても出てこない。アパートの中は静かだ。
マーティンソンに電話をして呼び出し、ドアを破ってスヴェートベリのアパートに入ると、スヴェートベリは死んでいた。
至近距離からライフル銃で頭を撃たれていたのだ。
スヴェートベリの看護師のいとこによると、彼は夏休みに暇がないといつものように彼女に会いに来ず、夏休みから帰ってきたばかりなのに疲れていると愚痴を言っていたという。
フーグルンドによると、夏休み前にスヴェートベリは姿を消した三人の若者の親に話を聞きに行っていたらしい。
彼は彼らしくないことに誰にも言わずに一人で勝手に判断して行動していたのだ。
スヴェートベリのもう一人のいとこ、コペンハーゲンの大学教授によると、彼が留守をする時にスヴェートベリに留守番をしてもらっていて、その時にルイースという名の女を連れてきていたという。
しばらくしてハーゲスタの自然保護地区で三体の若者たちの死体が見つかる。
三人とも額を撃ち抜かれていた。
若者たちの殺害にスヴェートベリが関与しているのか…。
やがて事件は袋小路に入りこみ、次なる犠牲者が…。
前回警官を辞めようと思ったマーティンソンはまた迷い始めます。
「時代が変わったんです。われわれの気づかないうちにスウェーデンは変わったんです。暴力は自然なものになったんです。われわれは気づかないうちに見えない一線を越えてしまったんです。若い世代はみんな確固たる地盤を失ってしまった。もはや彼らに何が正しいか、なにが間違いかを教える者がいないんです。だれもが自分だけの権利を主張する。そんなとき警察官でいることになんの意味があるんです?」
それなのにマーティンソンの息子のダーヴィッド君は警察官か道路工事人になりたいそうです。
ヴァランダーはマーティンソンに相談されたので、ダーヴィッド君を警察署の自分の部屋に呼び、質問を受け、制帽を被らせてあげます。
ダーヴィッド君はヴァランダーに会ってどう思ったのでしょうね。
ヴァランダーも一時、警察官を辞めようとまで思い詰めていましたよね。
「警察官はとりもなおさず考えなおさなければならないんだ。前提条件がかわったのだから。いままでの経験がもう役にたたなくなったのだ」
こう思いながらも、彼が最後に達した心境は次のようなものです。
「このままきっと世の中はますますひどくなっていくだろう。もっと多くの放浪者が、もっと多くの世の中に必要とされていないと感じる若者たちが増えるだろう。社会は鉄格子と鍵に象徴されるようになるだろう。
警察官の仕事は、ただ一つだけだ。この流れに抵抗することだ。両腕を開いて、全力でこの破壊的な力に抵抗することだ」
やっと警察官を続けていく決心ができたようです。
最後に彼はスウェーデン社会全体が崩壊するところまでいってしまったのではないかと危惧しつつも、原点に戻り、果敢にもたち向かっていこうとしているようです。
美しい自然に恵まれた国なのに、これほど悲惨な事件が起るなんて、一体この国はどうなっているのかとヴァランダーが歎くのもわかります。
それにしてもヴァランダーの体はボロボロです。
老眼になり、忘れっぽくなり、糖尿病にもなり、大丈夫かと言いたくなります。
とにかく連絡が取れるように、携帯は忘れないようにしようね、笑。
大きな敵に挑むよりも、こういう地道な捜査の積み重ねの必要な事件に関わっていく、満身創痍のヴァランダーの方が好みです。
シリーズは始めの頃よりも面白くなってきました。
後4冊。楽しみです。
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