桐野夏生 『魂萌え!』2006/12/20

桐野夏生の書くものといったら、『柔らかな頬』とか『グロテスク』のように、人間の嫌な面をこれでもかっていうぐらい強調して、書くように思っていました。
ところが、この本は違っていました。

では、想像してください。
あなたが59歳の家庭の主婦で、夫に対して全く疑うことをせず、退職した夫と老後をのんびり過ごそうと思っていたと。
ところが、ある日、夫は帰らぬ人になってしまいました。 
あまりに急で、あなたはどうしたらいいかわかりません。
今まで音信不通のようになっていた息子が帰ってきました。
その息子は母に一緒にくらそうといいます。
しかし、息子はアメリカでやっている仕事が上手くいっていないようです。
日本に帰ってきたいので、一緒に暮らそうと言い出したようです。
あなたは息子と一緒に暮らしますか?

なんと夫に愛人がいたのがわかります。
自暴自棄になったあなたに、妻がいますが、優しい素敵な男がモーションをかけてきました。
さて、一緒にホテルに行きますか?

59歳の女の気持ちなんか、わかんない。そう思うかもしれませんが、この本を読むと、リアルにわかります。
もう若くはない、かといって枯れるには早い、そういう女の揺れる気持ちが。

今相棒に死なれると、新しい相手をまだ見つけられるとは思いますが、59歳だったら、微妙です。う~ん・・・アレ?そういうことを考える本ではないって、笑。

配偶者を亡くすのが、一番のストレスだということを聞いたことがあります。
自分が先か相手が先か、全くわかりませんが、心の準備はいつでもしておきたいものです。(とはいっても、この主人公のように血迷いそう・・・)