重松清 『哀愁的東京』2006/12/28

『哀愁的東京』は重松清の作品で、彼の書いたものの中では、後書きでも述べているように、特殊なものです。
子どものことや家族のことを書いたものではないからです。

主人公は元(?)絵本作家でフリーライター、40歳進藤宏。
結婚していて娘がいるのだけれど、妻と一緒にアメリカに住んでいます。
娘とは年に一回会えばいいほう。
フリーライターという立場から出会う、いろいろな人たちとのことを書いた話です。
ネット証券でもうけた男が、大学時代に通ったのぞき部屋「アリスの部屋」で働いていた、看板女優アリスに会う話、進藤が書いて賞をもらった絵本、「パパと一緒に」に出てくるピエロたちとあかねちゃんの話、元アイドル、ヒロミの話、盛りを過ぎてもSMの女王を続けていて孤独死する女の話…。
そこに書かれているのは、東京のちょっとした街角で日常的にあるような、そんな話です。(SMとかのぞき部屋は普通ではない?)
中年といっていい世代に入っている孤独な一人の男がからんでいるので、哀愁を帯びたものになっています。
生きていくことの哀しさをはらんだものなのです。
東京というものは、そういう所なのかもしれません。
特に地方から出てきたものにとっては…。

この本に出てきた心理ゲームを載せておきます。
進藤の絵本に惚れ、ぜひとも新しい絵本を作ってもらいたいと思い、出版社に勤めたシマちゃんの出した心理ゲームです。
紙と鉛筆を用意してください。
「ボウ」という感じを思い出してください。まず最初に思い浮かべたものを書いて下さい。2番目に、3番目に…と5番目まで書いてみてください。
書き終わったら、「棒」とか「帽」のようなメジャーなものは消してください。
残った漢字が今のあなたを表しているといいます。
どうでしょうか?
因みにうちの相棒は、「防」「暴」「坊」「棒」「冒」でした。どういう心理なのか、私にはわかりませんでした。

久しぶりに会った娘が中国語に凝っていて、いろいろなことに「的」をつけるという話がありました。
明朗的奮闘、困難的数学、惰性的毎日など、結構おもしろそうですね。
進藤にとっての東京は「哀愁的東京」ですが、あなたにとってはどうでしょう?
私には…困惑的東京、幻想的東京、神秘的東京、我慢的東京、物質的東京、喜劇的東京、う~ん、どれでしょう?