劇団四季 「異国の丘」を観る2008/06/07

劇団四季、昭和の歴史三部作のうちの「李香蘭」に引き続き、二作目「異国の丘」を見に行きました。
このシリーズは浅利さんのお気に入りだそうで、これからも毎年上演したいとか。
まったく不勉強の私。
能の時もそうでしたが、事前の調べを全くしません。
そのため、「へ~」と思うこと多々あります。
その一つが、シベリア抑留がなんと戦後11年もの長きに渡っているということです。
信じられません。
戦争が終わっているのに、故国に帰れない人たちの憤りや悲しみが、身近に感じられました。

<キャスト>
九重秀隆   荒川 務
宋愛玲     佐渡 寧子
吉田      中嶋 徹
神田      深水 彰彦

1937年、首相,九重菊麿の息子、九重秀隆は、アメリカのプリンストン大学に留学していました。
ゴルフ部の主将として、全米大学選手権で優勝し、その祝賀会で美しい東洋人女性と出会います。
その女性は敵国中国の高官令嬢の宋愛玲でした。
二人は恋に落ちますが、それは禁じられたものでした。

出会いからほどなくして、上海を日本軍が攻撃し、愛玲の祖母が怪我をし、愛玲は中国へ、そして九重は父から帰国して秘書官になるようにとの手紙が来て、日本へと帰ることになります。
戦争は泥沼化していきます。
九重は日本と中国の和平工作をするために、秘書官を辞め、上海に行きます。
上海で愛玲と再会をはたし、彼女の助けを得て、菊麿からの親書を蒋介石に渡すことができました。
ところが、愛玲の仲間の裏切りにより、和平工作は失敗し、愛玲は銃で撃たれてしまいます。

九重は懲罰召集で満州に配属され、敗戦後ソ連軍に捕らえられ、シベリアに抑留されてしまいます。
収容所では過酷な労働が待っていました。
九重は名家の御曹司だったため、日本に帰国後重要なポストにつくことが見込まれ、そのためソ連のスパイにしようと、毎日執拗な尋問をされていました。
しかし、九重は最後まで、日本人としての誇りを失わず、自らの意志を貫き通すのでした。

愛玲と九重の出会いが、仕組まれたことで、会ったとたんに恋に落ちるというところが不自然ですが、そのことを言っちゃったら話が始まらないので、目をつぶりましょう。
「異国の丘」はシベリアに抑留された男たちを観るミュージカルです。
そこでどう生きるかという究極の選択をしなければならず、人としての素が出てしまいます。
平井という年寄りが、自分は生きて日本に帰れないから、日本に帰国が決まった人に、口伝てで遺書を頼む場面では、すすり泣きが聞こえてきました。
特に後ろに座っていた40代ぐらいの女性がすごかったです。泣き声もすごく、カーテンコールでは、俳優さんの名前を叫んでいましたから。熱狂的ファンなんですね。
私的には「李香蘭」ほど強い感動はありませんでしたが、静かに心に染み入るミュージカルだったと思います。
三部作の最後、「南十字星」も、七月に行くことにしました。