辻 仁成 『サヨナライツカ』2010/01/25

邦画はめったに見ませんが、映画になっている原本を読むのは好きです。
これは久しぶりに中山美穂が主演と言うことで話題にはなっていますが、どうなんでしょうねぇ。


航空会社に勤め、タイのバンコクに赴任している豊は、好青年として日本人社会では人気がありました。
彼には光子という婚約者がいて、彼女と結婚するので航空会社での出世は約束されたようなものでした。

そんなある日、家にいる豊のところに沓子という女性がやってきて、いつのまにか二人は濃厚な一日を過ごすのでした。
沓子はタイの大金持ちと離婚したためお金に不自由なく、ホテルのスイートルームで暮らしている自由奔放な女性でした。
婚約者がいるにもかかわらず、豊は沓子との情事にのめり込んでいきますが、結婚式が近づき、二人は別れます。

それから25年が過ぎ、豊は光子と二人の息子のいる平穏な結婚生活を続け、会社では副社長にまでなっていました。
豊は会社の出張で、タイに行くことになります。
昔、濃厚な愛の日々を過ごしたホテルで、豊は沓子と再会します。
そして・・・。
 
職場で私が『サヨナライツカ』を読んだというと、50代の女性が「私も昔読んで、泣いたよ~」というんです。
「エ~、信じられない!なんで泣くのよ」というのが私の反応でした。
昔の封建社会や戦争が二人を引き裂くわけではあるまいし、本当に好きなら婚約者と別れて、沓子と結婚すりゃあいいじゃない。そうしないのは豊の勝手。
死ぬときに「愛したこと」と「愛されたこと」のどちらを思い出すか。
それは「愛したこと」で、沓子のことだって。
冗談じゃない。奥さんの光子はどうなるんの。
いいのよ。結婚と恋愛は別なのよ。光子は光子で幸せだからいいのよ。彼女は豊を愛せたんだから。
沓子は嫌ね。不幸そうじゃない。25年も他の男を愛せなく、癌で死んじゃうなんて。
などと言い合いまして、や~、いろんな見方があるんですね。

もともと彼女は辻仁成の文章が美しくて好きという人です。
『冷静と情熱の間』で江國香織とコラボしたことが話題に出て、私は彼女の描く女性が結構好きと言うと、「え~、あんな女、全然魅力的じゃない」と言われてしまいました。
人それぞれで感性が違いますから、おもしろいのですが、『サヨナライツカ』が純愛かどうかというと、ちょっと違うような気がします。
もっと若い20代の頃に読むと、泣けたかしら?
 

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