中島京子 『小さいおうち』2010/08/30



今期の直木賞の作品です。

13歳で女中奉公に出たタキは、田舎から東京へとやって来ました。始めは小説家の小中先生宅で奉公したのですが、その後時子という美しい奥様のところで女中をすることになりました。

時子の最初の結婚は、夫が予期せぬ事故で亡くなり、一人息子が残されました。二度目の結婚は平井という十幾つも年上の玩具会社に勤める人とでした。
平井は結婚する時の約束どおりに赤い三角屋根の小さなおうちを建ててくれました。そして、そこでタキは美しい奥様と可愛らしい坊ちゃまと一緒に幸せに暮らしていました。

年を取り、今は一人暮らしをしているタキが、時子との生活の思い出をノートに綴ったというのが、この物語の内容です。
ずーと時子の家にいたいと思っていたタキですが、時代がそれを許しませんでした。
幸せな家族であっても、そこには秘密があります。

最後の章だけタキの死後、甥の次男の健史が時子たち親子のその後を探るという内容です。最初違和感を感じましたが、読んでいくうちに、納得しました。

この本には懐かしい昭和があります。そう「三丁目の夕日」みたいかしら。