P.G.ウッドハウス 『ジーヴズの事件簿~才智縦横の巻』2011/12/01



検索エンジンにASK JEEVESというのがありました。


業績が悪かったので、JEEVESの名前をはずして、今はただのASK.COMになっています。
日本語版もありますが、使い勝手はどうでしょうか。気が向いたら試してみますわ。

JEEVESって誰?と普通の日本人は思うでしょう。
彼はイギリス人で後にアメリカのニューヨークに拠点をおいたP・G・ウッドハウス(1881年-1975年没)が書いた本に出てくる、比類なき有能な執事です。
分かりやすい例をあげると、東川篤哉の『謎解きはディナーのあとで』の主人がお嬢様ではなくてお坊ちゃん版って感じです。

この物語の時は20世紀初頭。

ジーヴズが仕えているのが、金持ちで性格はいいのだけれど、強い女性に弱くて頭脳労働に向かないおバカなバーティ・ウースター。
ジーヴズも言ってます。

「ウースター様は、ただ一つを除くすべての好ましい資質を備えた若い方です。その一つとは頭脳ではありません。というのも、ご主人が頭脳を持っているのは望ましくないからです。私の言わんとしている資質は定義が難しいのですが、まあ、非常事態に対処する才能とでもいいましょうか。非常事態に遭遇なさると、ウースター様はすぐに気弱な微笑みを浮かべて目の玉を飛び出させてしまわれます。貫禄といったものが皆無なのです」

「ご主人が頭脳を持っているのはのぞましくない」なんて、言ってくれますね、ジーヴズも。

ウースターは服装のセンスも今一。
派手なチェックのスーツとか藤色の靴下とかを履くんですから。
ジーヴズのご機嫌が悪くなる時は、ウースターがセンスの悪い服を着る時なのです。
結局これらの趣味の悪い服は、話の最後にジーヴズに処分されてしまうのですが。

ウースターは自分の頭の悪さを自覚しているだけいいですわ。
彼は何か面倒なことがあるたびにジーヴズに頼っています。
ジーヴズは主人に頼まれれば上手く対処するし、頼まれなくても主人によかれとこっそりと手をまわします。
主人のことでジーヴズの知らないことはないようです。

だからASK JEEVESなんですね。

私はジーヴズにのファンになりました。彼の小生意気なところが好きなんです。
検索エンジンASK JEEVESのジーヴズのイラストは中年の顔がしもぶくれのおじさんですが、私のイメージはミスター・ビーンのローワン・アトキンソンかな。

一応ミステリーのカテゴリーに入れて置きましたが、ミステリーというよりユーモア小説です。
出てくる人たちが一癖も二癖もある人たちで、どうジーヴズに料理されるのか、読んでいて面白いです。

執事萌の人たちにお勧めです。