高田 郁 『銀二貫』2013/02/15

みをつくし料理帖』シリーズを書いた高田さんの本です。
この本も同僚がおもしろいと言っていたので読んでみました。


銀二貫は33両とのこと。
銀二貫を大火で焼けた大阪の天満宮再建のために寄進しようとしていた寒天問屋井川屋の主・和助は、たまたま遭遇した仇討を銀二貫で買ってしまいます。
仇討で侍は亡くなり、彼の息子の鶴之輔が残されます。
和助は鶴之輔が役立つかどうか見るために、寒天場で働かせてみます。
寒天場のひと月の労働は世間での一年にも相当します。
鶴之輔は寒天場から逃げることなく、ひつ月の間、励み暮らしたため、井川屋の丁稚として引き取られることになりました。
ところが、このことに腹を立てたのが番頭の善次郎です。彼は天満宮に厚い信仰心を抱いていたので、銀二貫が役立たずの武家出の子供と交換されたのが許せなかったのです。
善次郎は和助になんとかして銀二貫を天満宮に寄進するようにと頼み、和助も必ずすると約束します。
銀二貫を稼ぐために、和助ともども名を改め松吉になった鶴之輔たちは商売に励みますが、次々と不幸が襲ってきます。
しかし、松吉は不幸にもめげずに新しい寒天作りを志します。

なかなか銀二貫が貯まっていかず、途中でどうなることなのかと思うこともありましたが、大阪商人の心意気が伝わってくる本です。

「始末、才覚、信仰心――この三つは、大阪の地で商いをするものにとって、日々の要となる大切な心がけであった。収支を計って身を慎み、知恵を絞るだけでは、ひとかどの商人とは呼べない。神仏に感謝する気持ちがあって初めて、真の大阪商人と呼べるのである」

「知恵と才覚を絞り、商いの上で決着をつけるのが商人」

奥が深い商いの世界であります。