中山七里 『帝都地下迷宮』2020/08/19

中山七里デビュー10周年記念12ヶ月連続新作企画で2月に出版された作品です。
1月と4月、5月、6月のは読んだので、5冊目です。
図書館に予約して読んでいるので、結構いいペースで読めています。


この作品はシリーズ物ではありません。
題名だけ見ると、東京が帝都と呼ばれていた時代の話かと思いますが、違います。
現代のお話です。

小日向巧は公務員。
東京都の区役所で生活支援課相談・保護係をやっています。
ようするに生活保護申請に来る区民の相手です。
彼は26歳。まだ若いので理想に燃えていて、相談に来る人のことを考えて、いえ、考えすぎてしまい、課長の山形にいつも限られた予算を考えて判断せよと指導されています。
ようするに相談に来ても親身になって相手する必要はないということですね。
こういう公務員ばかりではないと思いたいですが、区役所に行くことが滅多にないので、私にはわかりません。
こんな彼の趣味が変わっています。
鉄道オタク、といっても色々とジャンルが分かれていて、彼以外には見かけたことのない廃駅鉄なのです。

ある夜、小日向はオタクとしてはあるまじき犯罪行為に手を出してしまいます。
廃駅である銀座線万世橋駅に入りこんだのです。
万世橋駅から神田駅まで可能な限り線路を辿るというのが目的でした。
ところが、誰もいないはずの廃駅で、彼は女の子と出会いました。
バカみたいに身分証明書を見せてしまうところが、小日向の生真面目さというか世間知らずなところです。
何故か女の子に拉致されてしまい、地下住民のリーダーらしい久ジイという老人に引き合わされます。
久ジイは、わしたちと一緒に廃駅に住んで共犯者になれ、もしわしたちのことを外部に漏らしたら、彼が「夜な夜な立入禁止区域に出没し怪しい行動を繰り返していると区役所に通報する」と脅すのです。
結局小日向は特別市民ということに落ち付きます。

好奇心は猫をも殺すとはよく言ったもので、よせばいいのに小日向はこの地下都市にすむ住人たちのことを調べてしまいます。
そして深みにはまり、少しでも役立ちたいと地下でも生活保護申請の相談を受けることにします。
そうこうするうちに、小日向によく絡んできた輝美という飲んだくれ女性が殺されているのが見つかります。
持っていた身分証明書から彼女が公安の刑事であることがわかります。
何故公安が彼らのことを探っているのか?
疑問を持ちつつ小日向は死体遺棄まで手伝っちゃいます。
どうしようもないおバカさんですね。

公安や捜査一課、果ては国家権力まで敵に回した、小日向たちの運命は・・・。

廃駅鉄なんて、本当にいるんでしょうか?
出てくる博物館動物園駅は前を通ったことがあり、中がどうなっているのか見たいと思いました。
2018年から19年まで一般公開、今年2月に「京成リアルミュージアム」が開催されていたようですが、知っていたら行ったのに。
コロナ後にまた開催してくださいね。

あらすじを知らずに読んだので、楽しめました。
でもちょっとこれはありえないなとかいう所も結構ありました。
まあ、廃駅に住むということが荒唐無稽な話ですからねぇ。
最後に良い意味でのドンデン返しがありますが、手のこんだミステリーではありませんので、ミステリーを読もうという方は気をつけてくださいね。


<今日のわんこ>
いつも楽しませてくれる兄犬。
何故か前足を前に出して寝て(?)いました。
苦しくないのかしら?