乃南アサ 『チーム・オベリベリ』2020/08/01

北海道(蝦夷地)は明治時代に開拓されました。
開拓したのは主に貧窮した士族たちや新天地を求めた一般の移民などでした。
私の祖母は、実家は山形の士族で、屯田兵として北海道に来たと言っていました。
ようするに下級士族で食いっぱぐれたので、屯田兵になって蝦夷地に来たということですね(笑)。
長男は山形に残り、それ以外の人たちが移民になったようです。
彼女は明治30年代か40年代に北海道で生まれた、生粋の道産子。
屯田兵の開拓は明治37年に終わっているので、生まれた頃はそれほど過酷な生活ではなかったでしょうね。

実は私の通っていた北海道の学校では開拓の歴史について全く教えてくれませんでした。
今はどうかわかりませんが、私の頃はそうでした。
祖母が生きていれば色々と聞けたのですが、もう亡くなってしまったので聞けません。
今になるとそれがちょっと残念です。


この『チーム・オベリベリ』では、晩成社の幹部三人と彼らと共に十勝地方にやってきた人々が入植してからの7年間の生活が、渡辺カネの視点から描かれています。

カネは結婚前の姓は鈴木といい、鈴木家は元上田藩に仕える武士でしたが、廃藩置県後上京し、父の事業が失敗した後、父の仕事の都合で横浜に住んでいました。
父と兄と共にキリスト教に入信していたので、その縁で共立女学校で学び、卒業後は舎監兼教員として学校に残っていました。

牧師になった兄の銃太郎が罷免になり、神学校で一緒だった依田勉三とワッデル塾で知り合った渡辺勝と共に北海道開拓に行くと言い出します。
父の親長も銃太郎たちと北海道に行こうかと考え始めていました。
ある日、父はカネに嫁に行く気がないかと尋ねます。
相手は渡辺勝でした。
彼は元尾張藩に仕える武士の長男で、伊豆の豆陽学校で英語教師をしていました。
カネは母の反対を押し切り、勝と結婚し北海道へ行くことをにします。
勝の前の縁談は、勝が北海道開拓へ行くことになり破談になったそうです。
いくらなんでも普通の女性なら、並の苦労ではないことがわかっているのに結婚して北海道へ行こうなんて思いませんよね。
カネは体の丈夫な開拓精神旺盛な女性だったようです。

オベリベリ(現在の帯広市)での生活は過酷でした。
厳しい自然環境、大量の蚊やブヨ、粗末な住居と食事・・・。
作物はバッタや霜で駄目になり、洪水、野火が起こり、医師も産婆もおらず、人々はマラリアで苦しんでいました。
開拓の苦難に負け、帰ろうとしても帰ることさえできません。
カネはそういう人々のことを思い、慰め、励まします。
野良仕事や家事の合間に学びたい子供たち、和人であろうがアイヌであろうが、を集めて勉強を教えます。
子供達の中には後に札幌農学校に入学する子まで出てきました。

一方、晩成社の方はというと、代表の依田勉三はいつも不在で、オベリベリの開拓は幹部である銃太郎と勝に任されていました。
勉三は豪農の次男坊で、何事も簡単に諦めず、粘り強く色々なことに挑戦するといういい所もありましたが、お金に苦労したことがないため、如何せんお坊ちゃま気質が抜けず、人の意見を聞かない、人の気持ちを慮ることさえできない男でした。
晩成社は依田一族が株主で出資しているため、勉三は常に社則に従うことを尊び、株主に配当を支払うため、不作の時でさえ「年貢として」収穫物を社に納めるように言います。
彼にとって開拓している人達はあくまでも年貢を納める小作人なのです。
幹部の銃太郎や勝も仲間ではなく、所詮は小作人扱いなのです。
彼らは晩成社は会社なら、それに属する人は社員で仲間、チームではないかと思って勉三に着いてきたのですが・・・。

やがて勉三はオイカマナイ(現在の大樹町晩成)に居を移し、牧畜を始めます。
銃太郎はアイヌの娘と結婚し、しばらくして晩成社を辞め、シブサラ(現在の芽室町西土狩)に移ります。
勝は依田一族に世話になったことがあったため、晩成社を辞めるに辞められず、鬱屈し、もともと飲み過ぎだったのですが、より深酒をするようになっていきます。
彼は酒の上で失敗することが多く、カネが意に沿わないことを言うと怒鳴ったりするようになっていました。
彼女の話し相手はただ一人、天主さまでした。

晩成社は失敗しましたが、開拓魂は受け継がれていったようです。
晩成社が勉三のような男ではなく、カネのような人に任せられていたなら、成功していたかもしれませんね。
人は口ばかりの人ではなく、共にいてくれる人を信用しますもの。

ちなみに、私の好きな六花亭のお菓子「マルセイバターサンド」は晩成社が十勝で最初期に製造したバターの商標「マルセイバタ」にちなんだものだそうです。
晩成社の成の字を丸で囲んで「マルセイ」、パッケージも、そのラベルを模したデザインだそうです。(GoodDay北海道による)


パッケージをじっくり見たことがなかったので、気づきませんでした。
歴史があるんですねぇ。

知らなかった晩成社による北海道十勝の開拓の歴史を教えてくれる、とっても分厚い本(667ページ)でした(笑)。
北海道開拓の歴史を知りたい方は読んでみて下さい。
いい手引き書になることでしょう。

アイヌ民族博物館「ウポポイ」が開館したというので、行きたいと思っていたら、コロナで行くどころではなくなりました。
いつか行ける日を楽しみに待ちますわ。

M.C.Beaton 『Agatha Raisin and Kissing Christmas Goodbye』2020/08/02



アガサ・レーズン・シリーズの18作目。
アガサの探偵事務所は繁栄していますが、犬猫捜しと浮気調査ばかりで、アガサは飽き飽きしていました。

ハリーがケンブリッジに行ってしまったので、主に犬猫探しをやらせるために、若い女の子をトレーニーとして雇うことにしました。
なかなかいい子が見つかりませんでしたが、事務所にToni Gilmourという16歳の女の子が現れます。
追い返そうとしましたが、トライアルで犬猫探しをやらせてみてから雇うかどうか決めてくれと言うので、断れないアガサはそうすることにします。
優しい秘書のミセス・フリードマンはトニに甥のハリーがどうやって犬猫を捜していたか教えてあげます。
おかげで上手く探せたので、次は浮気調査。これも知り合いが掃除婦として雇われていたおかげで上手く写真が撮れ、トニは探偵事務所の一員となります。
トニは家庭に恵まれておらず、母親はアルコール中毒で、兄は仕事もせずにブラブラしています。
浮気調査の時に使用したカメラを家に持って帰ったら、兄が盗んで売ろうとしたので取り返そうとすると殴られました。
連絡を受けたアガサは用心棒を雇い、家に行き、カメラを取り返し、家にいられなくなったトニを自宅に泊め、その後、フラットを買い、そこに住まわせます。
自分と同じような機能不全家庭で育ったトニにアガサはとても優しいですね。
でも彼女が探偵仕事を上手くやると妬みます。
今までのアガサなら嫉妬心からトニを辞めさせたでしょうが、アガサはちょっと大人になりましたね(笑)。

友達のロイとチャールズは相変わらずです。
ロイは週末にやって来て、仕事の愚痴をこぼし、またアガサに助けられます。
そろそろ独り立ちしましょうね。
チャールズはこの前の事件から変わるかと期待したのですが、残念ながら変わっていませんでした。
アガサが家の鍵を変えたのに、チャールズはちゃっかり合鍵を手に入れちゃいます。どうやって手に入れるのかしら?
そして調査に飽きると、アガサを置いてまた逃亡。困った人です。

今回、アガサの目を引いたのは、一通の手紙でした。
「家族の誰かが私を殺そうとしている」と書いてあったのです。
アガサはロイと一緒にその手紙の主、Phyllis Tamworthyに会いにいきます。
彼女はマナー(manor)に住んでおり、売ってテクニカル・カレッジを作り、4人の子供たちには一銭も残さないつもりでした。
マナーを売ることを子供達も住人も反対しているようです。
今度行う80歳の誕生日パーティに、探偵ということは伏せておき、友人として参加することになります。
そのパーティでフィリスはドクニンジンで毒殺されてしまいます。
アガサは自分は探偵であると明かしましたが、家族からは相手にされず、警察からは事件に首を突っ込むなと言われます。
そんなアガサの所に殺されたフィリスの息子・フランの妻のアリソンがやってきて、犯人探しを依頼します。
さて、アガサたちは犯人を捜すことができるでしょうか。

イギリスでマナーを買うと、もれなく住人もついてくるんですかぁ。
住人達がめんどくさそうです。

さて、肝心のクリスマスですが、アガサは10月からパーティ開催を決めミセス・ブロクスビーに呆れられてしまいます。
去年の散々なクリスマスを経験したのに、またかっという感じですよね。
アガサには夢があるのです。昔ながらのクリスマスをジェームズと迎えるという。ジェームズのことは諦めたはずなのにね。
今回はトニに手伝ってもらい、立派な七面鳥を買い、ケータリングを頼み(よかったわ、手料理は諦めたみたいです)、庭に天幕を張り、大々的なクリスマスパーティを開きます。
ここまではよかったのですが、今度はチャールズとロイ(主にロイだけど)がとんでもないことをやってくれます。
いつもホテル代わりにアガサの部屋を使っているので、二人でクリスマスプレゼントをあげようと思ったのはいいのですが・・・。

このパーティは昨年に引き続きのちのちまでの語り草になりました。
あのミセス・ブロクスビーの夫までもが心から楽しんだようです。
かわいそうなアガサ。
この憎めないところがアガサが愛される理由ですかね。

英語の勉強のつもりで、残り12冊、頑張って読みますわ。
途中で飽きそうですけどね(笑)。

今週の取り寄せ。


美味しい物が食べたいと思い、デパートの鰻を取り寄せてみました。
スーパーのゴムのような硬い鰻とは違い、柔らかい鰻でした。
でも、やっぱりお店で食べたいわ。

弟だけトリミング2020/08/03

先日、弟犬だけトリミングをしました。
兄は後で別の所でトリミングをする予定です。
どんな風になるのか楽しみです。

弟はいつも通り、代わりなしでちょっとつまりません。


今回は暑い時に歩いてお店まで行ったので疲れたのか、あまり覇気のない顔です。


お座りが嫌いなので、伏せと言っても何故かお尻が上がっています。


やれば出来るのですがね。(なんか一遍に年をとったみたい)
一方、トリミングができなかった兄は、むさ苦しいです。


鼻の上の毛は私が切って目にかからないようにしましたが、嫌がるので、ちゃんと切れませんでした。モジャモジャです。


汚いぬいぐるみ見たいです。


「ママちゃん、ひどい」とふて寝を始めました。


また取り寄せたのは、あんちん堂のでか金つば栗入り。
普通の金つばの二倍のでかさで、食べがいがありました。
3個入りでしたが、夫がすぐ1個食べてしまいました。

桜木紫乃 『家族じまい』2020/08/04



美容室でパートで働いている智代は、子供が独立し、今は夫の啓介と二人暮らし。
ある日、妹から電話がきます。
母のサトミがボケちゃったみたいだというのです。
智代は長年両親とは会っていませんでした。
父は元理容師で、理髪店経営よりも副業の方に熱心で、何度か騙されていました。
懲りずにリゾートホテル計画に手を出し、理髪店を手放さなければならなくなりました。
智代を自分の跡取りにするため、高校へはやらず、仕込んでいたのですが、それも無駄になりました。
そのことがあってから、智代は啓介と駆け落ち同然に結婚し、父親からは距離を取っていたのです。
どう親と関わればいいのか、戸惑うばかりです。

妹の理乃は親の目が姉にばかり向いていたのを面白くなく思っていました。
しかし、母がボケたのをきっかけに二世帯住宅で一緒に暮せることになり、やっと親に選ばれたと思ったのですが・・・。
父は年を取っても変わっていませんでした。

この智代と理乃の姉妹と父母の関係を、家族や周囲の人の視点から描いています。

家族には色々な形があり、一見幸せそうに見えても、どうかわかりません。
どの家族もそれなりの問題を宿しています。
表面に出ていなかった問題が親の介護を巡って現れる場合があります。
長年積もった恨みを吐き出す人もいれば、しょうがないと諦めて、子の責任を果たそうとする人もいるでしょう。
いいとか悪いとか言えるものじゃないです。
でも、最後に悔いが残らない終わり方がいいような気がします。
親との関係って近いからこそこじれるとなかなかやっかいなものですものね。

まだ両親が生きている50代の方が読むと、身に染みる内容でしょう。
自分の老い先をも考えさせられます。
お勧めの本です。

三上延 『ビブリア古書堂の事件手帳 Ⅱ~扉子と空白の時』2020/08/05



ビブリア古書堂の新シリーズの2作目。
ビブリア古書堂の店主・篠川栞子とバイトの五浦大輔が結婚し、娘の扉子が生まれました。
彼女は栞子さんとそっくりで、本ばかり読んでいて、学校では浮いてるようです。
でも、この事件がきっかけになり、いいお友達ができました。
彼女が高校生になった姿も出てきて、展開が速いなと思いました。
アレ、篠川扉子ということは、大輔は姓を篠川にしたのかしら?

今回は横溝正史の作品です。
横溝正史というと、昔流行りましたね。
『犬神家の一族』や『八つ墓村』は映画やテレビ番組にもなり、誰でも知っていま・・・若い人は知らないか。
金田一京助役は石坂浩二、古谷一行、豊川悦司、稲垣吾郎、山下智久など色々な俳優が演じています。
高倉健さんもやったことがあるなんて、知りませんでした。
一応本は読んだと思うのですが、あまり記憶がないです。
ミステリーでも古い日本の因習に囚われた村の設定が嫌いなのですもの。

ビブリア古書堂は古本屋の副業として本にまつわる相談事を扱っています。
2012年に持ち込まれたのは横溝正史の幻の作品『雪割草』の盗難。
旧家の邸宅から忽然と消えたのです。
『雪割草』は見つかりますが、挟まっていたはずの『雪割草』の直筆原稿が消えていました。
それから9年が経った2021年に、蔵書を買い取って欲しいと連絡が来ます。
書架から見つかったのは、『雪割草』の直筆原稿の模写7枚。
図らずもまた栞子は『雪割草』の謎と関わることになります。
半世紀以上にも渡る一家の確執がもたらしたものは・・・。

いつもアイディアが良く湧くなと思いながら読んでいます。
アンテナをはり巡らしていないと駄目でしょうね。
扉子も大きくなったようなので、活躍してくれるかしらと思って読みましたが、今回は出てきただけでした。
次回は祖母の智恵子が何かやらかし、栞子と扉子が一緒になって事件を解決するというのを読みたいですね。
智恵子はそういうキャラですもの(笑)。


またまたおやつを頼んじゃいました。
この頃、送ってくるのが速いこと。もっと遅くていいのに。
配送日の指定ができなかったので仕方ないのですけど。
コロナでお店に人が来ないので、宅配に力を入れているのかもしれませんね。


ショートブレッドといえば、どこでも売っているウォーカー社が知られていますが、他のメーカーのも食べてみたかったので、リーズ・オブ・ケイスネス社のものを頼んでみました。
「プレーン」と「バニラ&クルミ」の2種類です。
「バニラ&クルミ」を食べてみましたが、ウォーカーよりも粉っぽさを感じました。
「プレーン」はGTA(Great Taste Awards)で2010年に最高の3つ星金賞を獲得したというので、楽しみに取っておきますわ。

村上春樹 『一人称単数』2020/08/06

今日は広島の原爆から75年目。
風化しないように努力していかなければなりません。
黙祷。


トリミングをしないとこうなってしまう兄犬です。
狂犬病の注射を予約し、朝一番に行きましたが、暑くて大変でした。
歩るかせると歩きましたが、ずっとハアハアいっていました。
これでは犬も熱中症になります。
お散歩はしばらくお休みします。
注射の後は安静にと言われたのですが、かまってくれと床の上に伏せていてなかなか寝ません。
困ったものです。
今は膝の上で大人しくしています。


村上春樹は大学時代に集中して読みました。
その頃は面白く感じたのですが、この頃、年を取って感性が合わなくなったのか、新刊本を読んでもさして感動もせずにおしまいになっています。
私にとっては村上春樹は青春の本であって、これから老年を迎える時の本ではないのでしょうね。

この本は図書館にリクエストしたら、アメリカの作家のアップダイクのと間違えられてしまったという曰くつきの本です(笑)。
気づいてから検索してみたら、ちゃんと村上春樹のがありました。
システム上で直せなかったのでしょうか?
アップダイクで予約していた人は私の前に6~7人はいたと思います。
この人たちはどうしたのでしょう。
もう一度、村上春樹で予約し直したのかしら。
気づいた時には村上春樹の方は60人以上の予約が入っていました。
これではいつになったら読めるかわからないので、kindleで買いましたけど、急いで読む必要は・・・なかったわ。

8編からなる短編小説集です。
そうそう、前にこういう感じの小説があったなとか、春樹はこういう物が好きだったなとか思える、変わらない村上春樹の世界が描かれています。
『一人称単数』だから私小説に近いのかもしれません。
まあ、品川に猿はいないでしょうけど(笑)。

変わらない村上春樹を確かめたい人向け(?)の本です。
初めて読む若い人には初期の短編集をお勧めします。

近藤史恵 『夜の向こうの蛹たち』2020/08/07



小説家の織部妙は文学賞のパーティで、話題の新人、橋本さなぎに紹介されます。
彼女の処女作を読み、強い印象を受けていたので期待していたのですが、現実の彼女にそれほど魅力を感じられず、ガッカリしてしまいます。
その代わりに彼女の秘書だという初芝祐に強く惹かれます。
それから初芝に会うために、何かと策を練る織部。
やがて橋本さなぎの書くものと橋本さなぎの間に違和感を感じ始めます。
もしや・・・と疑惑を持つ綾部。
初芝が連絡してきて、相談にのって欲しいと言ってきます。
相談とは・・・。

作家の場合、イメージが大事な場合があるかもしれませんが、それほどではないと思うのですが。
誰とはいいませんが、イメージと違う方が沢山いますよ(笑)。
私はあまり作家の顔は見ないようにしています。(ガッカリするから)
どんな顔でも見ているうちに慣れちゃうことが多いですが(笑)。

近藤さんは時にゾッとするような話を書くので、今回もそうではと思いながら、怖い物見たさで読んでいました。
女三人の三竦みかと思ったら、肩すかしに終わりました。
綾部を他の二人がちゃっかり振り回し、体よく彼女を残して飛び立っていったという感じです。
最後がすっきりしてよかった、よかった。
お化けとは違いますが、ゾワゾワした感じが夏の読書にはいいかも(笑)。

そうそう、食べ物がとっても美味しそうでした。
ジョージア料理、桃のパフェ、スイカミルク、ピザ、手作りのポテトチップス・・・。
いつかジョージア料理屋に行ってヒンカリやハチャプリを食べたいわぁ。

美味しい物というと、またまたお取り寄せが届きました。
この前のショートブレッドは早く着きすぎでしたが、これは計画通りです。


カフェタナカのビスキュイ・シンプリシテ。
素敵な包装です。
シンプルなクッキーが好きな私には嬉しいおいしさ。
紅茶よりもコーヒーに合うかも。

クレオ・コイル 『コーヒー・ケーキに消えた誓い コクと深みの名推理18』2020/08/08



クレアが目覚めると、そこはNYのワシントンスクエア。
何故自分がニュージャージーの自宅ではなくグリニッチビレッジにいるのか、わかりません。
かつて暮らしていたビレッジブレンドへ行こう。
そう思い歩き出すと、違和感が押し寄せてきました。
NYを去ってから、たった数ヶ月しか経っていないのに、こんなに変わるものなのかしら?

感動的なプロポーズから二ヶ月経ち、ウエディングケーキの試食会に行ったクレアは忽然と姿を消してしまいます。
そして一週間後に現れた彼女は、15年間の記憶を失っていました。
試食会の後に犯罪現場に遭遇したはずなのですが、当夜の記憶はなく、婚約者のマイク・クィンのことも、彼からのプロポーズも忘れてしまい、娘は成人しているのに、彼女の記憶の中では11歳なのです。
病院で検査しても、どこにも異常は見当たりません。
記憶を取り戻すために、クレアは無償の治療を申し出たロルカ医師の病院に入院することにします。
しかし、ロルカ医師はクレアを「人生の空白部から切り離す」と言って隔離して、面会を禁止します。
元夫のマテオとマテオの母のマダム、婚約者のマイク・クィン、ビレッジブレンドのスタッフたちはロルカ医師に不信感を持ちます。
彼らは力を合わせてクレアを病院から脱走させ、警察の裏をかきマテオの元妻の別荘にかくまうことにします。
そこで薬を使わないセラピー、エードメモワールを試そうというのです。

マテオは未だにクレアのことを愛していました。
この機会を使い、寄りを戻そうと画策しますが。

さて、クレアは無事に病院から脱出でき、記憶を取り戻せ、事件を解決できるでしょうか。
マテオとマイク、どちらがクレアの愛を獲得できるでしょうか。

まあ、考えるまでもなく、クレアが愛するのは・・・ですね。
今回は今までとは趣が違っていて面白かったです。
このシリーズはアガサ・レーズン・シリーズとは違い、新作がでたらすぐに翻訳されているようです。
日本語の本も読まなけりゃならないのに、英語の本も増えてしまうと、寝る時間もなくなりますから、すぐ翻訳してくださり、ありがたいことです。
当分日本語の本の隙間に英語の本という感じでいきますわ。

ブレイディみかこ 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』2020/08/09



本屋大賞・ノンフィクション本大賞、受賞作の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を書いたブレイディみかこが、今度はイングランド南部の中年おっさんたちの生態を描きました。

副題の「ハマータウンのおっさんたち」とは、1977年に文化社会学者のポール・ウィリスが書いた『ハマータウンの野郎ども―学校への反抗・労働への順応』で調査対象であった労働者階級の少年たちが、今や老いておっさんとなったということらしいです。
この本は「英国の労働者階級のガキどもは反抗的で反権威的なくせして、なぜ自分たちから既存の社会階級の枠にはまり込んでいっちゃうのか。自らガテン系の仕事を選び、いかにもな感じの労働者階級のおっさんになりがちなのか」を研究した本だそうです。(プレイディみかこさんによる)
その頃、16歳だった少年は今や59歳。
立派なおっさんですね。

イギリスというと、「ゆりかごから墓場まで」を学校で習いました。
「ハマータウンの野郎ども」のおっさんたちが社会に出た頃は、まだイギリスは福祉社会でした。
失業すれば簡単に失業保険が出たし、怪我や病気をしてもNHS(国民健康サービス)で無料(不妊治療も無料だったそうです)で治療してもらえるし、大学の学費も無料なので、行こうと思えば大学まで行けるし、労働組合の力も強かった。
よきイギリスですね。でも、それは過去のこと。
今や緊縮財政で公共のサービスや福祉はカットされ、経済的に苦しくなっています。
NHSでは診察や治療を待たされ、待ちきれない人たちは民間の病院を使うようになりました。
労働組合が弱体化したため企業のパワーが肥大化し、仕事は歩合制やゼロ時間雇用契約が横行し、雇用条件や賃金が悪化しており、一端道を踏み外すと、下層民になってしまいます。
昔の若者は社会に対して反抗的だったのに、今の若者は真面目に働き、酒も飲まず、社会に対して従順なのだそうです。
若い人たちが酒を飲まなくなったので、潰れるパブも出てきており、パブはもはやパブリック・ハウスの役も果たせなくなってきたようです。
イギリスというとビールと思ったら、今やビールよりもスパークリングワインが売れてるそうです。
私たちの持っているイギリスのイメージが崩れますね。

よく言われているのが、「イギリスは階級社会」です。
昔は階級は職業と収入で決められており、3つ(上流、中流、労働者)でしたが、今はソーシャルな側面と文化的側面を加味して、7つになったそうです。
労働者階級の多様さや、白人労働者と移民との関係など色々と問題はあるようです。
詳しくは本を読んでください。
本に出てくるBBCの「Class Calculator」はここへ。
自分がどの階級に属するか、やってみると面白いかも。

EU離脱で揺れるイギリスでおっさんたちは何を考え、どう暮らしているのか。
一概にひとつではくくれませんが、日本のおっさんたちより生き方が多種多様な気がします。

本の中に出てくる歌を紹介しておきましょう。
モンティ・パイソン(イギリスの有名なコメディ・グループ)のメンバー、エリック・アイドルによる「Always Look on the Bright Side of Life」(1979年)。
磔刑にされているのに、のんきに歌ってますね(笑)。
この歌は国民的愛唱歌で、葬式やサッカーの試合などで歌われているとか。
もう一曲はFatboy Slim の「Praise You」(1999年)。
この踊り、何ですか。爆笑物です。
こういうのがイギリスのおっさんの好みなのね。
半ケツが好きなのもイギリスのおっさんです。
是非、映画の「フル・モンティ」でも見て笑ってください。
ア、これは半ケツではなくて、男性ストリップだったっけ。
半ケツ映画は思い出せないので、ストリップで我慢してください。
イギリスの炭鉱に働く男達の悲哀と哀愁をたぶん感じますよ(笑)。

Welsh of the West End2020/08/10

ロンドンのウエストエンドは、NYのブロードウェイです。
コロナ禍の今、まだ劇場は再開されていません。
そのため様々なスターたちがリモートで歌を配信してくれています。
何回か紹介してきましたが、私が今注目しているのは、Welsh of the West Endからのものです。
ステファン君が中心になって、若いウエールズ出身の若者達が集まって歌を歌っています。

ウエールズ人ってどんな人たちなのでしょう。
今までイングランド人やスコットランド人、アイルランド人などとの違いを特に気にしていませんでした。
調べてみると、ウエールズって「歌の国」で、男性合唱団のルーツなんですって。

ステファン君はオーディションを受け、2017年からウエールズの男性合唱団、
Only Men Aloudのメンバーになっています。
私の好きな「For Good」を一緒に歌っているトム君は、Only Men Aloudの設立者Tim Thys-Evansさんが2010年に設立した少年合唱団のOnly Boys Aloudのメンバーだったようです。
2012年、Only Boys Aloudは公開オーディション番組Britain's Got Talent で3位になっています。この時、トム君はソリストとして参加していました。
ちなみにOnly Boys Aloudは、団員が240名ほどで、ウエールズ各地に14の合唱団があります。
費用は無料で、11歳から19歳までのウエールズに住んでいる歌好きの少年なら誰でも参加できます。
「歌の国」ならではですね。日本ではたとえ無料でも200人も集まりませんよね。
トム君はこの少年合唱団からGuildford School of Actingで学び、卒業。
卒業した2015年にOnly Boys Aloud出身者として初めてOnly Men Aloudにリクルートされています。
歌うことよりActの方により興味があるようで、自分のことをActorと言っています。
Only Men Aloudの正式メンバーではないらしい(HPに名前が載っていない)のですが、たまに一緒に歌っているようです。

トム君が現在のOnly Boys Aloudと一緒に歌っているビデオがアップされていましたので、紹介しておきます。
歌はビリー・ジョエルの「River of Dreams」。
ステファン君はOnly Boys Aloudのキャプテンになっているので、右下の小さい画面でピアノを弾いて参加しています。
見ていると、真面目に歌っているのかしら?という子もいて、この合唱団がウエールズ社会で果たしている役割がわかります。

Welsh of the West Endの方では新しく「Welsh Musical Theatre Medley」がアップされています。
ウエールズ語の歌は歌詞が全くわかりませんが、ウエールズ語の響きがよくわかります。

近頃のステファン君と一緒に歌おうの方は、Siwan Hendersonさんとミュージカル「Dear Evan Hansen」から「Only Us」を歌っています。
良い歌なのですが、何か物足りないのです。
ブロードウェイの「Dear Evan Hansen」で主役をしていたBen Platt君とLaura 
Dreyfussさんの二人が「Only Us」を歌っているのを聞いてわかりました。
二人の間にはあるはずのエモーショナルな感情が感じられないのです。
ステファン君の笑顔も声も歌い方も素敵ですが、如何せん一本調子で、どの歌を聞いても同じように聞こえてしまいます。
ローラさんもそうなんですね。
何でトム君との歌が好きかというと、たぶんトム君とはOnly Men Aloudを通じてのお友達だから、友情を扱った歌が表現しやすかったんでしょうね。
二人のハーモニーが良く合っています。
「Only Us」は二人が恋心を告白し合う初々しい場面で歌われています。
トム君とローラさんの間には何もないことがわかりましたわ(笑)。
あくまでも私の感じたことですけど。

これらのウエールズ出身の若者たちの中から、次のスターが出てくるといいですね。
劇場が再開され、彼らが活躍出来る日を楽しみに待っています。

(YouTube画面をはめ込もうと思ったのですが、朝日ネットでは面倒なのでリンクだけにしてあります)