女性が主人公の時代小説四冊2022/06/15

たまたま続けて読んだ本の主人公が女性だったので、一緒に紹介しちゃいます。


平谷美樹 『貸し物屋お庸謎解き帖 桜と長持』
江戸時代のレンタルショップのお話。
江戸時代の人たちは鍋や布団などの日用品は買わないで、「損料屋」から借りていました。

主人公の庸は貸し物屋・湊屋両国出店の店主をしている。
浅草新鳥越町の貸し物屋・湊屋本店の主、湊屋清五郎に惚れていて、普段は口が悪いが、彼の前ではしおらしい。
庸は物だけではなく、力も知恵も貸すと評判で、様々な厄介事や無理難題が持ち込まれる。
今回の怪しい借り物は、長持や遠眼鏡、猿の面、つぐら、歯がちびた下駄、膳と器。
それぞれに借り人の謎や秘密が隠れており、庸はそれらを明らかにしていく。

庸と清五郎の関わりがわからず、調べてみると、シリーズ物でした。
三冊出ているので、そこに書いてあるのでしょうね。
今回出版社が代わり、kindleで読めるようになりました。
お庸の荒い口調が嫌いですが、借主が借りた物をどう使うのか気になり、読み進んでいきました。

鷹井伶 『おとめ長屋 女やもめに花が咲く』
勤めていた小間物問屋が店を畳み、男のところに転がりこんだ千春だったが、しばらくすると男に部屋を追い出され、困っているとそこの大家に妾にならないかと言われ、口入屋が紹介された店に行くと、番頭が夜這いをしてきた。
なんて自分は男運が悪いんだろうと自棄になった千春が橋の上で悪態をついていると、お涼という女から話しかけられる。
お涼は蕎麦をご馳走してくれた上に、長屋まで紹介してくれ、千春は女だけが住む「おとめ長屋」に住むことになる。
大家はトメ婆。長屋の名前の「おとめ」は「乙女」ではなくて、トメの名前。
トメは長屋の管理のほかに小さな十九文屋(今の100円ショップみたいなもん)も営んでおり、仕事のない千春を雇ってくれた。
長屋の住人は大家のトメのほかに髪結のマキ、仕立屋のシズ、手習いを教える加恵、お涼、そして番犬のマル(もちろん雌)。
落ち着くところが決まり、千春も大丈夫かと思ったら、相変わらずいい男に弱い。
まだまだダメねぇ。

ちなみに江戸時代の一文は約20円というので、十九文は約400円ということで、
100円ショップではなく、400円ショップです。3COINSみたいなもんね。
千春には魅力がないけど、他の面々が面白そうなので、次も読むかも。

髙田在子 『しみしみがんもとお犬道中 まんぷく旅籠朝日屋』
シリーズの第三弾目。
旅籠「朝日屋」は宿泊客が少なく、今まででたったの2人。
料理屋としては毎日繁盛しているのに、なぜなのか。
それでも宿泊した人が宣伝してくれたおかげで、だんだんと泊まる人が増えてきた。
人手が足りないので、口入屋から仲居を紹介してもらったが、その女、とんでもない女だった。
次に雇ったのが、大店の不良娘で、どうかと思ったが、何とかなりそう。
そんな頃にやってきたのが、「おかげ犬」。
「おかげ犬」とは「事情があって参拝できない飼い主の代わりに、伊勢などへ詣でる犬」のことで、「代参犬」とも呼ばれている。
しばらく朝日屋で泊めてやることになるが…。

「おかげ犬」なんていたのですね。
どうやって犬が伊勢まで行くのかと思ったら、伊勢に行く近所の人に頼んで連れて行ってもらったりしたらしいです。
おかげ横丁のHPを見たら、「おかげ犬体験」なんていうのがありました。
是非愛犬に体験させてみて下さい。うちの犬たちは無理そうです、笑。

倉本由布 『いついつまでも 薫と芽依の事件帖』
シリーズの第三弾目。
十三歳になる札差の娘で岡っ引きの薫と、同心の娘で薫の下っ引きをする芽依のお話。
北町奉行所の見習い同心で芽依の兄である内藤三四郎から薫たちにもたらされたのは、日本橋本町にある薬酒問屋柳屋で毎日、真夜中に妙な音がするから、その正体を探るということと、酒を飲んで暴力を振るう父親から娘を匿って欲しいということ。
薫たちは探索にかかわらせてもらえないことが不満だったが、探索中に芽依が怪我をしてしまい、薫は悔いる。
そんな時にある老人から彼女たちのしていることは「岡っ引きごっこ」だと言われ、薫は腹立たしく思う。だが芽依のことを考えると、岡っ引きを辞めた方がいいのか…。
果たして二人の関係はどうなるのか。

題名を見て、今回で終わりかと思ったら、違いました。
薫はいつまでも成長しなくて、その代わりに芽依が大人になっていきます。
なんで薫が岡っ引きになりたいのか、未だに私はわかりません。
岡っ引きって危ない仕事ですよね。自分で自分の身を守れない十三歳の少女がやるものではないと思いますけど。
どうしてもやりたいのなら、自分の身を守る術を身に付けなさいと言いたいです。
まあ物語なので、仕方ないのでしょうがね。

四冊とも、それほどお勧めしません。
江戸時代の人たちの生活を知りたいのでしたら読んでもいいでしょう。
軽く読める時代小説です。