白岩玄 『プリテンド・ファーザー』2023/01/17

将来子どもが欲しいと思っている、若い男性に読んでもらいたい作品です。


大手飲料メーカーに勤めている三十六歳の汐屋恭平はシングルファーザー。
一年前に妻が亡くなり、四歳になる娘の志乃を育てている。
近くに頼れる身内がいないため、すべてを自分一人でやらなければならず、営業部から人事部へ異動した。どうしても都合がつかない時にはベビーシッターに頼んでいる。
なかなか今の生活に馴染めず、この前娘の下着選びを後輩の女性に頼んでドン引きされる。

フリーランスのベビーシッターをしている藍沢章吾は、妻の海外赴任地へ着いて行くつもりだったが、勤務予定地が危険地域になったため、妻は単身赴任となり、一人で一歳半になる息子の耕太を育てている。

こんな二人がカフェで再会する。
恭平と章吾は高校の同級生で三年間同じクラスだったが、特に仲がよかったわけではない。
しかしちがう境遇ではありながらも、シングルに近い暮らしをしていることに親近感を覚えた恭平は章吾に娘のシッターをやってくれないかと頼む。
平日の夕方から夜は自分の子どもをみなければならないからと断られたが、それなら一緒に住まないかと章吾は提案する。

二人は来年の春までという約束で同居生活を始める。

何と言っても恭平の後輩の井口さんがいいです。
恭平に娘の下着選びを頼まれた時、「汐屋さん、その感覚、だいぶやばいですよ。自分ができないとかやりたくないことを頼みやすいっていう理由だけで後輩の私に丸投げしてません?もし私が年上だったら、同じ理由で頼めます?」とハッキリ言います。
電車で痴漢に遭い、事情聴取で遅れてきたというのに、無断で遅刻をしたと怒る上司には、「部下の女性が痴漢にあったのに『大丈夫か?』の一言もないんですか?普通、それ訊きません?」
子どものいる男同士の同居に偏見のある恭平に、「抵抗があるのは、汐屋さんが自分みたいな男を世の中のスタンダードだと思っているからですよ。その思い上がりをやめれば解決する話なんじゃないですか?」
夫の転勤先にある支社に移りたいと希望を出した女性に人事部長が、「君の旦那は一流企業に勤めているんだろ?だったらそこまでして働く必要があるのか、結婚したんだから家に入ればいいじゃないか」と言ったことに対して、「『他人の価値基準に口出しすんじゃねえ』ってどつきに行こうかと思いました。」etc.。
こういうことを言える女性っていいですね。

全く正反対の性格だった恭平も章吾も一緒に暮らすことにより、変わっていきます。

恭平は「井口のその主張は、分厚い金属製のドアを、握りこぶしで叩いているようなものだ。どんなに言葉を尽くして不平等さを説いたところで、社会はそう簡単に変わらない」と思っていましたが、妻の死により男性社会の中の弱者になったことで、前なら感じることも知ることもなかったことを経験していき、最後にはこう章吾に語ります。
「小さいところでは守ってやれても、俺は会社で志乃をいっぱい裏切っている。男尊女卑や女性差別を仕方がないことだと見過ごして、志乃が将来出ていく社会を悪くしている一方だ」と。

章吾は章吾で昔から男性性の支配する社会に溶け込めず、違和感を持って生きていて、自分の存在意義を感じられませんでした。
でも「僕の存在が志乃ちゃんの記憶に残らなくても、行為の中に愛があるのなら、それでいい。大事に思う存在が、その愛を栄養にして育つのであれば、僕がここにいる意味はあるのだ。」と思えるようになります。

「子どもを作るのは親のエゴでも、実際に生まれてきた子どもが歓迎されない社会にはしたくない」という章吾の言葉は重いです。
日本社会がすぐには変わるとは思いませんが、気づく人が少しずつ増えていけば、男性も女性も共に生きやすい世の中に変わっていくと思います。
男性諸君、是非読んでみて下さい。

ヘニング・マンケル 『ピラミッド』2023/01/19

クルト・ヴァランダー警部シリーズの第一作『殺人者の顔』以前のことを描いた五編の短編集です。
まだ22歳の警察官になりたてのヴァランダーが出てきます。
彼は初めはマルメ警察署に勤めてから今のイースタ警察署に異動したのですね。


「ナイフの一突き」
1969年6月。22歳のヴァランダーは昨年コペンハーゲンからマルメに戻る船の中で出会ったモナと付き合っていて、結婚したいと思っている。
この頃、ベトナム戦争反対デモが何度も繰り返し行われており、ヴァランダーは臨時に結成された機動隊に所属しているが、刑事課で働くことを希望している。
数年前に警察官になると告げた時から父との仲は冷え切っている。

ある日、ヴァランダーは非番でアパートでレコードを聴いているうちに眠ってしまい、バンという大きな音に起こされる。買い物に行こうと思い、部屋を出た時に隣室のドアが半開きになっているのに気づく。ノックをして声をかけるが、応えはない。部屋に入って見てみると、隣室の老人のホレーンが床に倒れて死んでいた。

刑事課で性格に難があるが非常に優秀だという噂の犯罪捜査官ヘムベリ刑事が捜査することになる。
ホレーンは自殺したと思われたが、その日の夜中に、何者かがホレーンの部屋に忍び込み、その三日後の昼間に不審火が出る。
ヘムベリは被害者を最初に見つけたということでヴァランダーを捜査に加える。
ヴァランダーは事件捜査にはまり、新米警察官という立場を超えた行動をしていく。

モナに振り回されているヴァランダーが可哀想です。
たいした女じゃないのにねぇ(失礼)。他に付き合っていた女もねぇ。
ひょっとしてヴァランダーは女を見る目がないのかww。
お父さんは昔からエキセントリックだったんですね。服装の趣味が普通じゃないし、息子に内緒で引越しも決めちゃうし、嘘は言うし…。
ヘムベリはヴァランダーの資質を見抜き、捜査のイロハを教えていったようです。
イースタ警察署のリードベリみたいな人がヘムベリだったようです。

「裂け目」
1975年のクリスマスイブ。
モナとの生活は言い争いが日常になっている。
娘のリンダは五歳。彼女がモナとヴァランダーの間をつなぎ止めている。
来年の夏にイースタ警察に移ることになっている。

ヴァランダーが家に帰ろうとしたところにヘムベリがやって来る。
家具センターのそばの小さな食料品店の店主から店の周りをおかしな人物が歩き回っていると電話がきたので、帰る途中に店に寄って店主と話しをしてくれと頼まれる。
店に入ると女店主はうつむきに倒れており、ヴァランダーは後ろから頭を殴られ気を失ってしまう。気づくと両手両足がロープで縛られていた。
ロープを解こうとしていると、目出し帽をかぶり手袋をした男が現れる。
武器を持っていないようだったので、ヴァランダーは男に飛びかかったが、男はピストルを持っていた。
男はピストルをヴァランダーの頭に狙いをつけたまま動こうとはしない。
何故なのか。
沈黙に耐えきれなくなったヴァランダーは男に向かって話し始める…。

「海辺の男」
1987年4月。ヴァランダーはもうじき40歳になる。
イースタ署に配属されてからずっとポーランドへ高級車を密輸する犯罪集団の追跡をしている。
モナとリンダはカナリア諸島で二週間の休暇を過ごしている。
リンダは高校をやめてしまった。モナとの結婚生活に亀裂が生じている。

ヴァランダーは同僚のハンソンから病院に呼び出される。
ステンベリというタクシー運転手がスヴァルテからイースタの広場までアレキサンダーソンという名の男を乗せた。
広場に着いたときに声をかけても、揺すっても目を開けなかったので、病院へ車を回した。
緊急搬入部によると、男はもう死んでいるという。
死んだ男はストックホルム在住の49歳のエレクトロニクス企業の社長。
自然死に見えたのだが、検死で専門家だけが調合できるという毒が見つかる。
彼は四日間のイースタ滞在中に、毎朝タクシーでスヴァルテに出かけ、海岸を散歩し、午後遅く電話を借りてタクシーを呼び寄せてイースタに戻っていた。
毎日海岸で犬の散歩をしている老人は誰も見かけなかったというが…。

「写真家の死」
1988年4月。
ヴァランダーはモナと別れた。
歯が割れて、痛みが出ている。
リードベリはこの頃背中が痛いと言って、仕事を休むことが多くなっている。

週に三回フォトスタジオの掃除をしているヒルダは、ある朝、店主シーモン・ランベリの死体を見つける。
ランベリはヴァランダーも何度か記念写真を撮ってもらった男だ。
清掃人によるとランベリは週に二回、夜にアトリエに行っていたようだ。
妻は夫を殺した人間に心当たりもないし、彼に敵はいない、秘密の多い人だったという。

ランベリは有名人の顔の写真を歪め、細部の寸法を変えて作った写真をアルバムに貼っていた。驚いたことに、その中にヴァランダーの写真もあった。
目的は何なのか?

ある夜、フォトスタジオのドアから中に入り込んだ男がいるという通報がある。
ヴァランダーは外に出てきた男を追跡するが逃げられてしまう。
スタジオの中は変わりがなかったが、ラジオの局が変わっていた。
男はなぜ戻って来たのか?何かを忘れたのか?
謎は深まるばかりだった。

「ピラミッド」
1989年12月。
ヴァランダーはまだモナと別れたことを受け入れられないでいる。
モナが出て行ってからいい加減な食事をしているため肥満になっているのを受付のエッバに注意される。

ある日、モスビー海岸の北にある畑に小型の軽飛行機が墜落する。
機体に焼死体が二体。
管制塔によると、朝の五時に通過する許可を与えた単独飛行機は一機もないし、緊急事態を知らせる非常通報も受けていない、レーダーには何も映っていないという。
墜落場所の近くに住んでいる老人は、朝の五時頃通り過ぎる飛行機の音が聞こえ、それから静かになり、少ししてからまた飛行機の音が聞こえ、そして爆発音がしたという。
どこかで積荷を投下して戻ってきたのだろうか?

そんな頃、エーベルハルズソン姉妹の手芸用品店が放火され、姉妹は焼死体で見つかる。彼女たちの後ろ首に銃弾が撃ち込まれていた。
誰が何の目的で老婦人を殺したのか?
彼女たちは本当に、みんなの思うような罪のない老婦人だったのか?

二つの事件に奔走するヴァランダー…。

お父さん、やってくれました。
夢を叶えてエジプトに行き、クフ王のピラミッドに登ろうとしたのです。
もちろん禁止されていることですから、警察に捕まってしまいますよねwww。
ヴァランダーは二つの事件の捜査で忙しいというのに、お父さんのためにわざわざエジプトまで行かなければならなくなっちゃいます。
お父さん、八十歳になるというのに、元気です。

誰かはわかりませんが、ヴァランダーが勤務中にお父さんを空港に送っていったのを署長にチクった奴がいますが、私はマーティンソンのような気がします。どうでしょう。彼って味方っぽいのに、裏切りそう。

人間って誰にも知られていない裏の顔があるから面白いのかもしれないと、ふと思いました。
その点、ヴァランダーの家族はみな裏表のない性格みたいで、もろわかり過ぎてしまいますね。悪いことのできない家族です、笑。

どのお話も面白かったです。
特に「ピラミッド」の中の、ヴァランダーがピラミッドを見ながら「夢を大事にするべきだと思う。自分は何を大切にしてきただろう?」と思う場面が好きです。
ヴァランダーをより詳しく知りたい方にオススメの本です。

ヘニング・マンケル 『苦悩する男』2023/01/22

刑事クルト・ヴァランダー・シリーズの最後の長編小説。
もう一冊、『手/ヴァランダーの世界』という本があります。


ヴァランダーは五十五歳の時に田舎に家を買い、ユッシという犬を飼い始めた。
それから三年が経った2007年。
ヴァランダーの糖尿病は進み、毎日インシュリンの注射をするようになっている。
一番変わったのはリンダだ。妊娠し、女の子を産んだ。
赤ん坊の父親は投資信託会社でヘッジファンドを扱う部門で働いているハンス・フォン=エンケという貴族出身の男で、二人は同棲している。
ハンスの父親のホーカン・フォン=エンケは退役した海軍司令官で、母親のルイースは元語学教師で、ヴァランダーが思っていた以上にいい人たちだった。

ある日、ヴァランダーは家で手入れをするために銃を持ち帰った。
そしてその夜、突然思い立ち、イースタの町に行き、レストランで食事をした。
次の日、マーティンソンにその拳銃を見せられる。レストランの椅子に忘れていったというのだが、ヴァランダーは何も思い出せなかった。
内部調査が行われることになり、ヴァランダーは休暇を取らせられる。

ハンスの父親が七十五歳の誕生日パーティを開くというので、リンダから誘われ、暇になったヴァランダーは出席することにする。
パーティの最中にヴァランダーはファン=エンケから1980年代に起きた謎の潜水艦事件の話しを聞く。

そのパーティの三ヶ月後、突然ホーカン・フォン=エンケが姿を消す。

フォン=エンケがいなくなってから四十八時間が経ち、息子のハンスからストックホルムへ行って捜査に協力して欲しいと頼まれる。 
病欠をとっていたヴァランダーは引き受けることにする。
ハンスもルイースも心当たりがないというが、ヴァランダーはパーティの時のフォン=エンケに違和感を持っていた。

海軍時代の知り合いに話を聞きにいくが、何も手がかりを得られなかった。
そのような中で、妻のルイーズまでもが姿を消す。

イースタ署にはマーティンソンとニーベリ以外に前に一緒に働いていた同僚はもういません。私はフーグルンドに注目していたのですが、一体彼女はどこに行ったのでしょう?
マーティンソンは孫のいる年齢になっています。ヴァランダーとの間は前と同じ感じになっていますが、ヴァランダーが銃を忘れたことをマスコミにチクったのは彼か、署長なのか?それとも…。

日本とスウェーデンとの違いは、子どもができたからといって結婚するわけではないというところと、子どもの親にはなっても、一生一緒に暮らすとは限らないと思っているところですね。
同棲カップル(サンボという制度があるらしい)も結婚カップルも社会的にも法的にもほぼ同じように扱われているからなのでしょうね。

ヴァランダーは老いることをとても恐れています。
彼自身が気づくほど記憶力が減退してきているので、なおさらなのかもしれません。
そんな中、一人で捜査をしていき、すべてが明らかにはならなくても、それなりに真実に近付いていけたのは流石です。
バイバとのことは、これは男性の願望ですかね。女は別れた男のことをサッパリと忘れると思いますよww。

このシリーズはミステリーではありますが、人間がよく描かれています。
ヴァランダーと同じ年代の男性が読むと、なお一層身につまされ、感慨深いものがあるのではないでしょうか。是非読んでみてください。


<今日のわんこ>
やっとパパの水を飲んでくれました。


昨日寒かったので、今日は厚着をさせたからでしょうか?
二匹共に飲んでいます。
しかし…。


ママには塩対応です(>o<)。

弟犬のヘアスタイル2023/01/24

いつもの弟犬のヘアスタイルはこういうのです。


しかし持って来いで遊んでいるうちに…。


毛が右に、そして…。


左に、そして…。


左右に。


ボッサボサwww。(兄犬が邪魔してますぅ)


どうしてこうなっちゃったのでしょう。


かわいいからいいんですけど(親バカですww)。

ヘニング・マンケル 『手 / ヴァランダーの世界』2023/01/25

この本が刑事ヴァランダー・シリーズの最後の本です。
最後ではありますが、あとがきによると「手」は2004年にオランダのブックフェアのために、ミステリ小説を買った客に書き下ろしの本を一冊プレゼントするという企画で書かれた作品だそうです。
時代は2002年10月、ヴァランダーは五十歳前半で、『霜の降りる前に』の後のお話です。


「手」
日曜日に家で休んでいるヴァランダーにマーティンソンから電話が来る。
田舎に住んで犬を飼いたいと思って物件を探しているヴァランダーに見せたい家があるという。彼の妻の親戚の家だ。
早速ヴァランダーは見に行く。
周辺の静かな様子が気にいったヴァランダーは買うことにする。
しかし家の裏庭で足先になにか当たったのが気になる。
見に行くと、それは地面からにょきっと出ている人間の手の骨だった。

地面の下には骸骨と衣服が埋まっていた。
手の主は誰なのか、死因はなにか…。
ヴァランダーはとりあえず家の持ち主を過去まで遡って調べてみることにする。

せっかく気にいった家が見つかったのに、横槍が入ってしまったヴァランダーです。
誰でも庭に死体が埋めてあった家には住みたくないですから仕方ないですね。

若手だったマーティンソンの頭のてっぺんが薄くなったなんて書いてありますw。
そういえば彼は仕事中でも妻と電話を掛け合って話しているわね。何を話しているのかしら?
ヴァランダーが自分の結婚生活が破綻したのは電話を掛け合わなかったからかと自問していますが、関係ないと思いますけど、笑。

「ヴァランダーの世界」
マンケルによるシリーズの始まりのお話や十二作品の紹介、登場人物と場所の説明、人物索引、ヴァランダーの好きなもの、登場人物や本、音楽などの文化索引があります。

世界史にあまり詳しくないので、1960年代以降のヨーロッパやアフリカのことで色々とわからないことがありましたが、それなりに面白く読んでいけました。
今になってもっと、特に戦後の歴史を学んでおけばよかったと思います。
今からでも遅くないから頑張ってみますか…(たぶん)。

夫は名前が覚えられないからと外国のミステリーは苦手で読みませんが、同じように外国のミステリがあまり好きじゃない方はドラマ「刑事ヴァランダー」を見てみて下さい。
今から思い起こすと、ケネス・ブラナーは結構本の中のヴァランダーに似ていたと思います。
若い頃のヴァランダーを描いたドラマもあるそうです。
Netflixなので私は契約していないので見られませんが、見られる方は「新米刑事ヴァランダー」を見てみて下さいね。たぶん面白いでしょうw。

家で遊ぶ2023/01/26

外が寒いので、シニアの犬たちは家で遊ばせることにしました。
弟は持って来いが飽きたのか、ちょこっとやってからママの膝の上に座ってしまいました。
ちょっと邪魔(ゴメン)なので、新しい音のするおもちゃを出してやると、俄然やる気になりました。


またタテガミが乱れていますwww。


犬って音に敏感なんですね。


乱れ髪も素敵な(親バカ)ヨーキーです。

新川帆立 「競争の番人 内偵の王子」2023/01/27

『競争の番人』の第二弾作品です。


公正取引委員会に勤める白熊楓は、東京の本局から福岡県博多の九州事務所第四審査課へ転勤する。
母親の束縛が強くて、逃げたかったからみたいです。毒親ですね。

今回彼女が関わっているのは着物業界の暴力団絡みのカルテル。
地方の掟に阻まれ、なかなか成果があがらず。
同僚の常磐は約束していても現れず、一人で話しを聞きに行っても、「あんたみたいな余所者」扱いされて誰も話してくれない。
それなのに第四審査課は最悪。
課長の古賀は事なかれ主義のパワハラ男で係員の石山は白熊を嫌い、「僕たちが内偵して正式事件化しても、事件処理の功績をさらっていくのはいつも本局」と嫌みばかり言う。頼みの綱の常磐は当てにならない。
困った白熊、どうする。

そんなこんなでやっと常磐の協力を取り付け、元同僚の小勝負も参戦し、色々とありましたが、それは本を読んで下さいませ、笑。
最終的に本局第六審査長も加わり、カルテル独占禁止法の「三条案件」を本局で、「十九条案件」を九州事務所で調査することになります。

殺人事件が起ったり、白熊たちが銃撃に遭ったりと、九州は恐ろしい…かな?
白熊は地方と本局との仕事の差をつくづくと感じることになります。

びっくりしたのは、最後に白熊、本局に戻るんですよ。
アレ、一年もいないんじゃない。こんなことあるの?
それに石山君も着いてくるようです。
続きを書きやすくするためじゃないかと思いましたがね、笑。

前作に比べて白熊のパワーが落ち、残念です。
小勝負との仲はどうなるのかは持ち越しとなりました。
ドラマの都合で次はいつになるかしら?

秋川滝美 『ひとり旅日和 福招き!』2023/01/28



「ひとり旅日和」シリーズの四作目です。
三作目ではコロナ禍でなかなか旅へ行けなかったのですが、今回はコロナは終わっています。

行った先はまず長野と名古屋。
たまたま先輩の間宮麗佳に有給が余っているから取りなさいと言われた時に、父親のホテルに無料で泊まれる特典が使えることになり、運良く人気旅館が予約できたので行くことにしたのです。
何故長野と名古屋かと言うと、『一筆書き切符』などというものがあることを片思いの蓮斗から聞き、その切符を使って旅をすることにしたからです。
『一筆書き切符』とは、「乗車駅から複数の駅を経由して、一筆書きするように乗車駅へ戻って来る経由で購入された切符」のことで、運賃がお得なんですって。そんな切符があるなんて、初めて知りました。
日和は長野から名古屋に行って東京に戻るルートを考えたのです。
長野から名古屋は三時間ぐらいかな。意外と近いですね。

この旅行の後、麗佳の家でお土産宴会をやることになります。
出席するのは麗佳と彼女の夫の浩介と蓮斗です。
彼女たち三人はもともと友達同士で仲がいいんですよ。
日和は自虐的なことを考えてしまい、落ち込みます。
仲のいい人たちの中に入っていくのは結構大変ですものね。
だからといってねぇ…。

この飲み会の後、蓮斗とSNSで頻繁にやりとりをしていたのに、それも続かなくなり、日和の旅行熱も下がってしまいます。
そんな時に蓮斗が旅行に行かなくても計画すると楽しいよと言ってきます。
そこで日和は四国への旅を考えてみますが、考えたらもちろん行きたくなります。
そんなわけで、行ったのが高知と愛媛。レンタカーの旅です。

そして最後の旅は、休日出勤の代休で取れた三連休を使って、宮崎と鹿児島へ。

ちなみに私の行ったことのない県は、富山・福井、滋賀(たぶん)・宮崎・鹿児島・熊本・大分・佐賀・高知・愛媛・徳島の11県です。
九州と四国が多いですね。
都道府県は47ありますから、結構行っているのかな?

行った場所を日和と一緒に回るのが楽しかったです。
私が行かなかったところに行っていたり、行ったところに行っていても行動が違っていたりして。
今はコロナが心配なので、電車を使う旅よりも車の旅をしようと思いますが、どちらの旅も一長一短ですよね。
コロナの心配がなくなったら、鉄軌道王国の富山に行きたいですわ。

読んでいる途中で日和のネガティブな思考が嫌になったりもしましたが、それでも次に日和がどこに行くのかが楽しみでした。
若い子はガイドブック代わりに読むといいでしょう。
読むと旅したくなりますよ。

<今日のわんこ>


前は見てくれなくても可愛らしく舌を出している兄犬です。
毛がボサボサですがww。

<今日のおやつ>


神戸のラトリエ・ドゥ・マッサのガレット・デ・ロワです。
サクサクとしたパイ生地とアーモンドクリームが美味しかったです。
他のケーキも食べたいですが、神戸は遠い…。

ジョアン・フルーク 『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』2023/01/30

レイヤーケーキって何だろうと思いませんでした?
「幾つかの層を重ねて作ったケーキ」とのことで、スポンジケーキだと思えばいいみたいです。

<クッキー・ジャー>を経営しているハンナ・スウェンセン・シリーズの日本で翻訳されている23巻目です。


歯科医のノーマンと保安官助手のマイクという素敵なボーイフレンドがいるのに、よく知りもしない男のロスと結婚式を挙げちゃったハンナ。
今までの行いが悪かったのでバチが当たったのか(?)、ロスが失踪し、彼に騙されていたことがわかり…というのが前までのお話。

ロス亡き後のハンナの心配は、妊娠。
検査で妊娠していないことがわかり、ホッとするハンナに義父のドクは休暇を取るように勧めます。
そこでハンナは母のドロレスと一緒に友達のリン・ラーチモントの引越しの手伝いにロサンゼルスに行くことにします。

しかしロサンゼルスの生活を楽しんでいるハンナのところに妹のミシェルから緊急事態だからすぐにレイク・エデンに戻ってきて欲しいと電話が来ます。
ミシェルの恋人で保安官助手をしているロニー・マーフィーが高校の同級生、ダーシー・ヒックス殺しの第一容疑者になったというのです。
ハンナは急いでレイク・エデンに帰ります。

レイク・エデンの保安官事務所では大変なことが起こっていました。
まずマイクはロニーのパートナーなので捜査から外され、ロニーの兄で刑事のリックは近親者なので捜査に携われません。
残るは保安官のビルと新人の助手ひとりで、ろくに捜査ができなさそう。

ハンナはみんなの期待と協力を得て、捜査に乗り出します。

どうにかなりませんか、このシリーズ。
いつも読み終わるとガッカリします。
読まなきゃいいのですが、ハンナが誰と結婚するのかが気になって、読んでしまうのです。
二人のボーイフレンドのうちのイケメンのマイクは何故かハンナがお菓子や料理を作り終わってみんなが食べようとする時に現れるという、ただの食いしん坊に成り下がっています。
ノーマンとハンナはいい感じなのですが、とにかくノーマンがいい人過ぎて、ハンナはノーマンの気持ちを知りながら、彼を利用し、振り回している嫌な女に思えてしまいます。
終わるに終われなくなって、作者も困っているのかな?
もうノーマンとハッピーエンドにしましょうよ。

アメリカでは後四冊も発売されているようで、まだまだ続くようです。

群ようこ 『たりる生活』2023/01/31



群さんのエッセイ集。他のエッセイ集を読んだかどうか記憶にありませんが、彼女の本では「パンとスープとネコ日和」シリーズが好きです。
2020年以降続きが発売されていないので、そろそろお願いしますね。

どうしてこのエッセイ集を読んだかというと、引越のお話だったからです。
私は今まで10回以上も引越しをしています。
この頃、引越の虫が騒ぎ出しています。
今の場所は大きい公園が近くにないので、次は大きい公園のそばに住み、犬たちと公園でまったりしたいのです。

群さんは賃貸物件にずっと住んでいるそうです。
前のマンションには27年(だったかな?)も住んでいたそうで、すごいですね。飽きっぽい私には無理ですわ(恥)。
飼い猫が亡くなり、前期高齢者(群さんは1954年生まれ)の仲間入りをし、友だちの弟さんが五十四歳で亡くなった後の騒動のことを聞いて、自分の行く末のことを考え、今のマンションは広すぎるので、断捨離をしてもっと狭いところに引越そうと思ったのです。

本が多くて、なかなか捨てられないというのは、よくわかります。
私も昔は引越屋さんに本が多いと言われました。引越屋さんは重いので本が嫌でしょうね。
この頃はもう一度読みたくなったら図書館で借りればいいと思うようにし、単行本はできるだけ図書館で借り、文庫本はkindleにし、紙の本はなるべく買わないようにしています。
本が溜まらなくなったのはいいのですが、その代わりに食器や洋服が溜まっています。
群さんは気にいった物件に出会い、一応断捨離をしてから引越をすることになるのですが、それでも段ボールが130個もあったそうです。(多いのかどうか、私にはわかりませんが)
引越した先でも物を捨てています、笑。
捨てられないというのは、人間の性なのかしら?

わが家では親が亡くなり、屋根裏部屋に沢山物が残されていたので、業者に頼み全部捨てることになりました。
私の時もそうなりそうなので、できるだけ物は減らしたいとは思います。
そうは思いながら、捨てようと思う物を見て、これってどうやって捨てるのかと迷うことが多々あります。
迷うと面倒なので、そのままにしておくという無限ループにはまってますwww。
そこでふと思いました。
捨てられない人は処分にかかるお金と手間賃を残しておけばいいんじゃないかしら。
いくらかかるのかしら?

引越してから1年経ち、やっと床に物を置かないで済む部屋になった群さん。
余計なお世話ですが、落ち着いてから、また物が増えるのではないかと心配です。
私ならそうなりますが、群さんは大丈夫よね。
そこのところがどうなったのか、次のエッセイ集に書いていただけるとありがたいです。


<今週のおやつ>
おやつはなるべく買わないようにしていますが、ついつい美味しそうなのを見ると買ってしまいます。


2022年度トレンドグルメ2位(1位というところもある)のカヌレです。


冷凍なので、外側のカリカリ感があまりありませんでした。
上にチョコのかかっていない方が好みです。