医学生と医師が主人公の三冊2023/05/17



中山祐次郎 『悩め医学生 泣くな研修医5』
雨野隆治は薩摩大学の医学部に入学した。
入学式で学長が言っただいたい毎年10名が医師国家試験に不合格になり、次の年に受験しても合格率は約50%で、一割が医者になれないという現実に衝撃を受ける。
雨野は同じ高校の一年下の伊佐と入学式の時に宣誓をした指宿真子と同じ班になり、解剖や病院実習をすることになる。

現役の医師が書いたシリーズなので、リアルな医学生の姿が描かれています。
解剖学の田村教授の言葉がいいです。

「諸君らはこれから医師として厳しい修業を積まねばならぬ。その修業の中でも最も重要なことは、知識でも技術でもなく、精神の鍛錬である。言い換えるならば、人間としての胆力を鍛えることである」
「諸君らはこれから医師になる。医師は選ばれしエリートである。であるからして、当然、人々が味わうことのない苦しみもまた引き受けることになる。これを高貴な者の義務(ノーブレス・オブリージュ)、という」

医学生は悩みながらも厳しい試練を乗り越え、仲間と切磋琢磨し合い、患者に教えられながら、一人前の医師となっていきます。
それなのに、世の中には患者の気持ちに添えない医師が結構多いと思うのは私だけ?

午鳥志季 『君は医者になれない 膠原病内科医・漆原光莉と血嫌い医学生』
医学生の戸島光一郎は血が苦手だ。
医者には向いていないと言われ続けているが、医者になることは彼の夢。
医師免許を手に入れるために日々努力しているが、血をみると、嘔気がし、その果てに気絶してしまい、周りに呆れられている。
もちろん解剖なんてダメ。
でも「解剖学」の単位を取らないと進級できない。
留年しそうな学生の面談の時に医学部学部長に留年回避の直訴をすると、補講による救済措置という形なら認めてもいいと言われる。
その措置とは、外来の総括で膠原病内科医・漆原光莉に医師としての適性を認められたら、進級を許可するというものだった。
漆原医師は院内でも悪い意味で有名人。歯に衣着せぬ人で、人使いが荒く、光一郎はパシリに使われる。
彼女の性格ゆえに患者とよくトラブルを起こすが、その割に外来患者が絶えない。
光一郎は漆原の元で様々な患者と出会い、学んでいくうちに、漆原の医者としての能力が本物であると認めるようになる。

漆原光莉の言葉。
「中途半端な知識で間違った治療をすることほど有害な医療はない」
「医者にとって大切なのは、自分の力と責任を自覚することだ。なら、アレルギー・膠原病内科医に大事なのはなんだと思う」(中略)「患者から逃げないことだ」

題名と表紙から軽い内容のものだと思いましたが違いました。
光一郎君の成長物語で、未だ途上です。続きが出るかな?
膠原病内科のことが少しわかりました。
午鳥さんも医師です。

小松亜由美 『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト』
久住遼真は神楽岡大学医学部法医学部法医学講座の新人法医解剖技官。
教授の柊侑作と助教の加賀谷千夏の解剖補助に入っている。千夏が無表情で何を考えているのか分らず、苦手だ。
この頃法医学が自分に向いているのかどうか悩んでいる。

「エクソシズム」
田淵好美の娘、優衣が部屋で亡くなっていた。優衣は語学専門学校生だが、この頃自宅にひきこもっていたという。好美は精神疾患があるらしく、娘は悪魔に身体を乗っ取られたとか意味不明の供述をしている。好美の信仰する『黒水仙の会』には『悪魔祓い』の教義があり、京都府警は好美が優衣を『悪魔祓い』という名目で虐待していたのではないかと疑い、優衣の検屍と司法解剖を千夏に依頼する。

「梟首」
京都市北区の河川敷で首のない死体が見つかる。遺体には右手小指の先がなく、襟足からは刺青が覗いていた。暴力団関係者だとみなされ、捜査一課の他に捜査四課マル暴の警部、鬼窪が現場にやって来る。
検視官都倉は血痕が不可解で、現場に来たときから違和感を覚えていた。
千夏は都倉の勘は当たっているといい、遺体を開けばわかると言う。

「赤い墓標」
京都美術大学の裏山で人間の膝から下の両足が見つかる。両足の膝下辺りに何やら大きな創が平行に走っていて、足の爪には真っ赤なマニキュアが塗られていた。
その日は休日だったため、千夏が一人で検死と解剖をする。
千夏は足の創はバンパー創で、両足は鋭利な刃物で死後に切断されたと断言する。
マニキュアとみなされたものは、<胡粉>でないかと思われた。
両足に該当しそうな京都美術大学の女子生徒が見つかるが。

「腐爛と凍結」
検視官の都倉から検屍依頼が来る。東山区古川町商店街の久保田精肉店で男女二体の異状死体が発見されたという。
久住が体調不良でダウンしていたため、柊は彼の代わりに現場に赴く。
遺体の一つは久保田邦雄のもので、腐敗が進んでおり、乾燥して変色していた。
しかし邦雄の妻、美登の遺体は頭部が挫滅しているが、腐敗は進んでおらず、遺体が凍っていた。
第一発見者によると二人はショーケースの前に並んで倒れていたというのに、何故美登だけが凍っているのか…。

一話ごとに視点が変わり、千夏の秘密が少しずつ明らかになっていきます。
と言ってもすべてではないので、シリーズになって徐々にわかっていくのでしょうね。
両親の殺害犯人がわかっていないので、千夏は法医学者になって探そうとしていたりして。
脇役の久住や柊教授、都倉検視官などはいいのですが、鬼窪警部とか秋田から千夏を追いかけて来て京都府警の警官になったという北条がちょっとウザいです、笑。
ミステリとして読むと物足りないですが、小松さんは解剖技師だそうで、リアルな検屍や解剖の様子が垣間見られます。


<今日のわんこ>
兄はこの頃甘えん坊です。パパはそろそろ寿命かなと嫌なことを言います。
そんなことないですよ、(`ヘ´) プンプン。
朝(4時頃)になると、起きてきてママと一緒に寝ようとします。


前はこういう風に自分のベッドで寝ていたのに、


この頃はベッドを抜け出し、ママの布団の上で寝るようになりました。


これは足の間に挟まっています。
ママは動けず、迷惑なんですが…。