内藤了の二つのシリーズ2025/01/10

一つ目は『COLD 警視庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花』に続く、「警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」シリーズの五作目。


四月中旬に警察庁特捜地域潜入班に二通のメールが届く。
一件は愛知、一件は岐阜の村のことだったが、違う村だと思い調べてみると、ソメ村という同じ村の、同じ案山子の伝承に基づく行方不明事件だった。
通信官の万羽福子が調べてみると、その地域で三件の女性の行方不明者届が出ていた。
ソメ村があった場所で今年の秋から半導体の工場建設が始まるので、工場が建つ前にもう一度村を調べて欲しいというのだ。

同じ頃、清花たち潜入班は本庁の会議室に呼び出される。
そこに愛知県警足助警察署の巡査部長・坂下啓介と相談者の山下秀哉が来ていた。
最近、三十年前に行方不明になった山下の姉が母親の夢枕に立ち、自分が埋まっている場所を教えたというのだ。
その場所がソメ村にあるという。

潜入班はソメ村に潜入し、山下の母親が夢で見た場所を掘削し、人骨が埋まっているかどうか調べることにする。

ソメ村には村民が二人残っているだけで、多くの不気味な案山子が立っていた。

行方不明者はどこに消えたのか?
村のいまわしい秘密が明らかになっていく…。

今回は案山子の伝承が出て来ます。
案山子って鳥などが畑を荒らさないように立っているだけのものだと思っていましたが、民俗学的に色々な意味があるんですね。知りませんでした。
清花がホントによく変わりました。捜査一課から潜入班に異動してよかったと、やっと言えるようになりました。
私にはわからない田舎の村のことですが、今でもこういう閉鎖的なところが残っているんでしょうか。
最後が今までの中で一番不快ですので、気をつけて読んで下さいね。



六十六歳になる坂口信は退職後、帝国防衛医大の特任教授として働いている。
ある日、学会で知り合った友人の現役大学教授・古屋と会うために日本橋の高級ホテルに行くが、古屋は現われない。
携帯がつながらないので、自宅に電話してみると、古屋の妻が出て、警察から電話があり、古屋の着衣と身分証、靴、毛髪などが神田駅近くの路上で見つかったと言われたというが、どういうことなのかわけがわからないらしい。

坂口は古屋が泊まるはずだったホテルに行ってみる。
コンシェルジュは古屋はホテルにいないし、事情を知っている者もいないと言い、古屋が見つかった場所を教えてくれた。
警備員はヘドロのようなものが垂れてきて、その中に骨とか歯みたいなものがあったという。
とりあえず坂口は路地にあった毛髪をビニール袋に入れて研究室に持っていき、付着物を調べてみることにする。

翌日、二階堂が見つけたSNSの【蝋人間】とハッシュタグがついた画像を見ていると、SSBC(警視庁刑事部捜査支援分析センター)の海谷から電話が来る。
彼女も【蝋人間】の画像に気づいており、この蝋人間が古屋ではないかと言うのだ。

古屋の専門は原生生物で、このところ永久凍土を調べていた。
彼は何らかのウィルスに感染したのか。
坂口が二階堂とともに持って来た古屋の毛髪を調べて行くと、思わぬものが見つかる…。

内藤さんのリサーチ力には感心します。
民俗学と微生物学って全くジャンルが違うものですよ。
私には民俗学はわかるかもしれないけれど、微生物学はダメでしょう。
高校の生物が嫌いだったもの。関係ないかww。

奥さんが亡くなった坂口教授ですが、前作でちょこっと出て来たチャラ君が奥さんと子どもと一緒に坂口家に住み、今や坂口教授の家族のような存在になっていて、大活躍してくれます。
大学の守衛のジジイたち、俗名「ケルベロス」たちもここぞという時に出て来て、泣かせてくれます(泣きませんでしたが)。
そして、何よりも坂口教授の演説がよかったです。
続きがないような終わり方でしたが、ありますよね。
このままで終わらせないで下さい。お願いします。