中山七里 『武闘刑事』 ― 2025/07/02
早いもので、もう七月になりました。
年々、一年が過ぎるのが早くなります。
そう思えるのは、「ジャネーの法則」で説明されているそうですが、その他に日常がルーティン化しているからということもあります。
何か新しいことをしてみるのがよいというので、Duolingoで途中になっていたフィンランド語をオンラインで学習してみることにしました。
4月開講の初心者クラスなので、他の受講者たちは私よりも先を行っていますが、頑張って追いつきます。(できるかなぁ?)
高頭冴子シリーズの三巻目。

千葉県警捜査一課所属の郡山弦爾が親しくしていた、同じマンションの隣室に住む小湊雪美と娘の真央が至近距離から銃で撃たれ殺される。
見つかった弾丸は米軍の軍用モデルのSIG SAUER P320に採用されているパラベラム弾。
射入角度から犯人のおおよその身長は百七十五から百八十センチの間。
そして防犯カメラと米兵の証言から、容疑者として横田基地所属の在日米軍曹長スチュアート・ヒギンスが浮かんできた。
スチュアートに事情聴取をしようとするが、横田基地からは証拠不充分であるという回答が来て断られる。
このままでは引き下がれない高頭は横田基地での張り込みを開始するが、在日米軍司令部から警察庁経由でクレームが来る。
それでも食いついて行くのが高頭。
日米友好祭に乗り込み、スチュアート軍曹を基地の外へ連れ出そうとするが、郡山が捕らえられてしまう。
高頭たちの前に日米地位協定という壁が立ちはだかる。
前の二作と比べると派手な武闘場面はありません。
あの高頭冴子と郡山弦爾が珍しく頭を使っているというのが面白いですね。
読んでいくと郡山がなかなか釈放されないのでイライラしました。
犯人の動機がイマイチです。
調べてみると、米軍関係者の一般刑法犯の起訴率は1割から2割、不起訴率は8割から9割で、日本全国では起訴率が約3割から4割だそうです。
米軍関係者だけではなく、ニュースなどで問題になっている某国の人たちの不起訴率はどうなんでしょうね。
現代の社会問題を扱ってくれる中山七里さんなので、これからも色々と書いてくれることでしょう。期待しています。
<高頭冴子シリーズ>
①『逃亡刑事』
②『越境刑事』
③『武闘刑事』(本書)
「フォーチュンクッキー」を観る ― 2025/07/04
原題「Fremont」で、カリフォルニア州にある町の名。最もアフガニスタン系
アメリカ人の人口の多いところだそうです。

アフガニスタンのカブール出身のドニヤは8か月前に特別永住ビザでアメリカにやって来た。アフガニスタンでは米軍基地で働く唯一の女性通訳だった。
今は中国人オーナーのフォーチュンクッキー工場で働き、工場とアパートを往復するだけの毎日を送っている。
眠れないので睡眠薬が欲しいと思い、精神科医の診察を申し込んでいるが、なかなか順番が回って来ない。
同じアパートに住むアフガニスタン人男性にそのことを話すと、彼は自分の予約を譲ってくれた。
精神科医に予約した本人でないので診察はできないと言われるが、ドニヤは強く出て、なんとか診てもらえることになる。
何回か通院するうちに精神科医と気心が通うようになるが、不眠は治らない。
ある日、フォーチュンクッキーのメッセージを書いていた老婦人が職場で急に亡くなる。
オーナーはドニヤにその仕事をさせることにする。
精神科医のところに通うようになってからドニヤの表情は明るくなり、髪型や服装も変わっていく。
そんな頃、精神科医はドニヤに君を真似してメッセージを書いてみたと言い、その中のひとつをドニヤに読んで聞かせる。
「港にいる船は安全だが、海に出なければ船じゃない」
ドニヤは思い切ってフォーチュンクッキーのメッセージの一つに自分の電話番号を載せ、それを見た誰かから連絡が来るのを待つ。
すると、ある男性から連絡が来る。
ドニヤは同じ工場で働く友人から車を借り、その男性に会いに行くが・・・。
ドニヤ役のアナイタ・ワリ・ザダさんは実際にアフガニスタン出身で国営テレビ局のジャーナリストだったそうです。
ドニヤは自分では認めようとはしませんが、PTSDを患っているのでしょうね。
祖国から裏切り者とされ、家族は脅迫を受けながらもアフガニスタンで暮らしています。
自分だけはアメリカでのうのうと暮らしていると、負い目や罪悪感を感じ、自分は幸せになってはいけないと思い込み、孤独と寂しさの中に引きこもっています。
そんな彼女を一歩前に進ませたのが、精神科医や中国人オーナー、レストランのオーナー、同僚の女性などの周りの人々です。
特にこの4人が印象に残るいいキャラしています。
精神科医なんか自分の愛読書の『白い牙』をドニヤに紹介し、本を貸すのかと思ったら貸さず、診察中に一節を読んじゃうんですからww。
同僚のジョアンナが、ドニヤを自宅に招き、ヴァシュティ・バニヤンの歌を歌う場面が好きです。歌は「Diamond Day」といい、のどかな幸せな日常の生活を描いた歌です。
いい人ばかり出てきますが、唯一の嫌われ役が中国人オーナーの奥さんです。
コーヒーマシンが壊れたので、自分で淹れたコーヒーを売りつけるんですよ。
タダで飲ませろよと思いましたw。
白黒映画で、ドニヤが車で出かけるまでが単調で眠くなりますので、気をつけましょう。
私はなんとか持ちこたえましたww。
フォーチュンクッキーは日本発祥のアメリカの中華料理店のものだと言いますが、私は日本のお店でもらったことがあります。
前向きな言葉が書いてあると、その日はいい日に思えますよね。
そういえば映画でクッキーを食べている人がいなかったけど、食べないものなんですかね。
王谷 晶 『ババヤガの夜』 ― 2025/07/06
『ババヤガの夜』はイギリスの英国推理作家協会が主催する「タガー賞」翻訳部門で賞を受賞した作品です。
だいぶ前にどこかで紹介されていたのでkindleで買っていたのですが、賞を受賞したということなので早速読んでみました。

祖父から暴力の英才教育を受け、暴力が生きがいになっている新道依子は、祖父母が死に、東京に出て、バイト暮らしをしていた。
ある日、映画を見に歌舞伎町に行くと、酒に酔ったチンピラに尻を叩かれ、新道はその男に制裁を加える。
警察が呼ばれると面倒なので、その場から逃げようとすると、ガラの悪い男たちが現れ、彼らから暴力を振る舞われる。
新道は後頭部を殴られ、失神する。
新道が連れられて行った先は関東最大規模の暴力団興津組の直参である内樹會の会長、内樹源造の邸宅だった。
新道を拉致した柳という男は、内樹の娘のボディガードとして新道をスカウトした。言う通りにしないとドーベルマンを殺す、と言う。
犬には罪はないと思った新道は言うことをきくことにする。
源造の娘の尚子は古風な風体の美少女だった。
新道は屋敷に住み込み、毎日、尚子の運転手兼ボディガードとして働いた。
しばらくして、間男と逃げた女房を内樹が必死に探していることと尚子に婚約者がいることがわかる。
初めは新道に必要最低限の命令か、言葉だけお上品な罵倒しか投げてこなかった尚子だったが、次第に気心が通うようになる。
しかし、そんな暮らしも新道が間違った人物を殴ってしまったために終わりを告げる。
「ババヤガ」とはスラブ民話に登場する魔女のことだそうです。
新道依子はスラブ人の血が混じっているんでしょうかね。
これは「シスターバイオレンスアクション」の小説らしいです。
ミステリには思えなかったのですが、ミスリードがあるので、一応ミステリにしておきました。
暴力を振るう場面がありますが、大したことがなく、それよりもどういう風にいたぶっていくかという表現の方にゾゾっとしました。
変態男ばかりで、○○○さんたちってこんな人ばかりではない、まともな○○○さんもいると思うのですが。
こんな男ばかりの中にいると新道依子も尚子もまともじゃないけど、まともに見えてしまいます。
残念だったのが柳です。彼にもう少し活躍の場を与えてもらいたかったです。
最後があっけなくも、せつなかったです。
暴力の場面が気にならなければ読んでみてもいいでしょう。
思ったよりもページ数が少なく、サクサクと読めました。
私の好みではなかったですが、翻訳がどうなっているのか興味があります。
ドーン・ブルックス 『地中海クルーズにうってつけの謎解き』 ― 2025/07/08
警官レイチェル&看護師サラの事件簿シリーズの一作目。

警察官をしているレイチェル・プリンスは二カ月前に婚約者のロバートから別れを告げられ、未だにその衝撃から抜け出せずにいた。
豪華客船コーラル・クイーン号で看護師として働いている友人のサラはそんなレイチェルを二週間のクルージングに誘った。
交代の休みの時にはレイチェルと一緒に過ごせるはず。
無事にサウサンプトンのクルーズ・ターミナルから船に乗り込んだレイチェルは、一人の老婦人に目を止めた。
彼女を送って来た運転手が心配そうな表情をしていたからだ。
その女性は偶然にもレイチェルの隣の部屋で、マージョリーと言った。
レイチェルは彼女に好意を持つが、余計なことには首は突っ込まないことにする。
食事にショー、ナイトクラブ、バー、パーティー、オークション、プール・・・。
船の中は楽しいことばかり。
素敵な男性もいたが、傷心のレイチェルは自制心を発揮。
マージョリーとは親しくなる。
マージョリーは八十五歳で、一年前にご主人を亡くしていた。
楽しいはずのクルーズだが、おかしなこともある。
誰かの視線を感じたり、マージョリーの部屋に入り込もうとした人物がいたり。
リスボンに上陸した時に大変なことが起きる。
マージョリーと一緒に行動していた女性がトラックに轢かれて亡くなったのだ。
その女性はマージョリーに借りた帽子とコートを着ていた。
一人の少年が男が彼女を道路に突き飛ばすのを見たと言った。
レイチェルは狙われたのはマージョリーだと確信するが、地元警察は不幸な出来事として処理した。
しかし・・・。
豪華客船の旅には行ったことがありません。
一度でいいから経験してもいいかなとは思いますが、ダイヤモンド・プリンセス号を思い出してしまって・・・。
それに夫婦で行って帰って来た女性が、二度と夫とは行きたくないと断言しているのを聞いたことがあります。まさか離婚してないよね。
仲が良く、一緒にのんびりとした船の旅を楽しめる夫婦ならいいのでしょうが、そうじゃなければ地獄よねww。
このシリーズは十四巻目まで出版されており、全てコーラル・クイーン号で起こる事件が描かれているようです。
一隻の船で事件が起こり過ぎですねぇ。普通だったらこの船、縁起が悪いからと廃船にしないかしら。
二巻目は『Deadly Cruise』で、無料のニューヨークへのクルーズに参加したレイチェルが乗組員の殺人事件に遭遇するらしいです。
私のように豪華客船の旅に参加したことのない方は是非この本をお読み下さい。
ミステリ小説だからと敬遠することはありません。
ミステリ的には大したお話ではなく(失礼)、豪華客船の旅がどういうものかわかりますので、楽しめるでしょう。
内藤了 『BLOOD 警視庁特捜地域潜入班 鳴瀬清花』 ― 2025/07/09
『DOLL 警視庁特捜地域潜入班 鳴瀬清花』に続く、シリーズの六作目。
今までは日本の民俗学を基に書かれたミステリでしたが、今回は海外の伝説や事件を基に書かれているようです。

警察庁特捜地域潜入班に出向中の鳴瀬清花は追うべき案件がないため、警視庁の資料室でボスの土井火斗志と過去の未解決事件の資料を当たっていた。
そんな時に、清花たちが前に身柄を保護した犯罪関係者である江口裕真から連絡が来る。
先週末のゲリラ豪雨で浸水した大田区の家から棺桶らしき箱が見つかったので、来てくれという。便利屋のバイトで片付けに行った先の地下室で見つけたという。
早速、出向く潜入班。
地下室からはエログロポルノを売りにした雑誌や絵、写真、トルソーなどのコレクションが見つかっていた。
箱は重く、チェーンで取っ手が縛られていた。
チェーンを切って中を開けると・・・。
箱は液体で満たされ、全裸の少女が浮いていた。
家の持ち主は妻が亡くなってから様子がおかしくなり、妻を生き返らせようとしていた節がある。娘によると、自殺したという。
三百万の領収証が見つかり、そこには『特殊水槽』と但し書きがあり、発行人は
Wemptiとなっていた。
箱に入っていた少女は妊娠初期で、年齢は十四、五歳。
頸動脈のあたりに小さな穴があり、体内にはほとんど血液がなかった。
監察医は薬で眠らせて頸動脈から血を抜いたのではないかと推測していた。
土井は潜入班の面々に話をする。
2003年と2004年に死斑が薄い、もしくは出ていないいくつかの変死体が見つかった。
土井は何かおかしいと気になり調べて始めたが、妻が末期ガンであることがわかり、捜査一課をやめたため継続して捜査ができなかった。
土井は二十年前の事件と今回の事件の間に何らかの繋がりがあるのではないかと思っているのだ。
人の血を抜く吸血鬼がまた活動を始めたのか。
それとも土井の妄想なのか。
潜入班は一致団結して捜査に乗り出す。
今回は珍しく潜入班は東京から動かず、現代的な問題、機能不全家族やトー横キッズ、発達障害などを扱っています。
行き場のない子はどこに行けばいいんでしょう。
最期がこんな風とは、悲し過ぎます。
潜入班に飛ばされたという思いにとらわれていた清花はやっとふっきれて、立派に潜入班の一員となりました。
残念なのが通信官の福子さん。彼女の異常さが増幅してきましたww。普通の人でいいのに。
土井は悔いの残る事件が一応解決し、彼なりに心の整理ができたのではないでしょうか。
「警察官は完璧じゃない。そして警察官は一人じゃないのだ」
いい感じになってきた潜入班です。
次回の『SOUL』は郡上八幡が舞台らしいです。
一度行ったことがありますが、今度は郡上おどりを見に行きたいです。
*ちなみに江口裕真は『COLD』に出てきた人かな。
サラ・ハーマン 『うちの子が犯人なわけない』 ― 2025/07/11

三十一歳のフローレンスは10歳の息子を持つシングルマザー。
元ガールズ・グループのボーカルをしていたが、子どもを産んで正気を失い、再結成の時にバンドを外された。
その時からずっとカムバックを狙っている。
定職にもつかず、行き当たりばったりの生活をしている。
息子の学校のママたちをバカにし敵対心を持っているため、ママ友も友だちさえいない。
息子のディランが校外学習に行った日にとんでもない事件が起こる。
アルフィー・リズビーが行方不明になったのだ。
ディランによると、その日、彼はアルフィー・リズビーと組んでいたが、彼がゴミ箱を探しにいっている間にアルフィーはいなくなったという。
ディランはそれを言わなかったため、学校に戻ってからアルフィーがバスに乗っていなかったことがわかり大騒ぎとなったのだ。
ディランが元夫のもとに行った後に、フローレンスはディランのベッドの下にアルフィーのリュックサックを見つける。
その中にあった日記帳にディランがアルフィーに「殺してやる」と言ったことが書かれていた。
まさかディランが・・・。
フローレンスは日記帳を燃やす。
息子の嫌疑を晴らすため、フローレンスは双子が同じ学校に通う弁護士のジェニー・チョイを巻き込み、犯人探しを始める。
原題が「All The Other Mothers Hate Me」です。
はっきり言って、フローレンスが嫌われるのは仕方ないです。
彼女はイギリスにいるイケイケのアメリカン・ガールで、容姿に自身があり、男は睫毛をパチパチすりゃあ落ちると思っているのですから。
友だちになったジェニーから痛烈なことを言われています。
「あなた、容姿が衰えたらどうするつもり?代わりの策があるわけ?ああいう手管には賞味期限があるのよ」
その通り。
他にもここには書きませんが色々とえげつないことをしています。
そんなフローレンスですが、最後の方でやっと気づきます。
「やっとわかった。この十年間、あたしはずっと楽な道を選び続けていたのだ。
(中略)決まった仕事も恋人もなく、ほかのママたち全員から嫌われている」
自分の息子を助けるために犯人探しをしていたのですが、やっと最後に正しいことをやろうと思うフローレンス。
満身創痍にはなりましたが、ちょっとは利口になったかな。
母の愛は強しというお話でした。
『ババヤガの夜』とは違った意味で、読む人を選びます。
私は何度も読むのを止めようかと思いました。
はっきり言ってフローレンスみたいな女性、大嫌いwww。
みお 『極彩色の食卓 ホーム・スイート・ホーム』 ― 2025/07/12
昨日から涼しくなり、久しぶりに昼間に(午前中)にお散歩ができました。
いつもは朝が苦手なママはパパにお散歩を任せています。(薬のせいか、暑くなると覿面に体がだるくなります)
今日は家族いっしょです。

いつものように弟があっちこっちに行ったり、立ち止まったりと落ち着きません。

気温が23℃ぐらいでも湿気があり、わんこたちは舌を出していますが、水を飲むほどではないようで、パパが水を飲まそうとしても無視してますww。
また明日から暑くなるようです。
「極彩色の食卓」シリーズの三巻目にして最終巻です。

女流画家・律子に救われ、彼女と暮らしはじめてから三年が経った。
大島燕は就職先も決まり、後は美大卒業を待つばかりとなる。
夏休みのある日、来年から勤めることになっている修復工房の所長から電話が来て、二週間、瀬戸内海の花之島にある修復工房へ研修に行ってくれないかと言われる。
律子と二週間、離れて暮らすことに不安があり、普通なら断っていたが、あることのために燕は花之島に行くことにする。
研修先の『皆本修復工房』には八十を超えるという老修復師と彼の一番弟子を名乗る加納誠という少年がいた。
誠の夢は数年に一度、瀬戸内の島全域で行われる美術祭が来年開催されるので、その時に皆本修復美術館を作ることだという。
なんとも生意気なガキだ。
島で様々な人々と出会うことで、燕は自分の過去と向き合い、修復師としての歩みを始める。
一方、律子も・・・。
落ち着くところに落ち着いて、お話は最終回となりました。
それぞれの家庭にはそれぞれの問題があり、一筋縄ではいきません。
でも人は、家族がどうであれ、自分の足で歩いていくしかないのです。
燕君も父親の呪縛から逃れられたのだから、律子さんから独立して、一人前の修復師となれるように頑張ってもらいたいですね。
シリーズの順番
①『極彩色の食卓』
③『極彩色の食卓 ホーム・スイート・ホーム』(本書)
武田惇志、伊藤亜衣 『ある行旅死亡人の物語』 ― 2025/07/14
北欧の言語に興味があり、フィンランド語以外にも勉強してみたいなと思っています。
そういえば「北欧(スカンディナヴィア)の三ヶ国」って一般的にどこの国かわかりますか。
「デンマーク」、「ノルウェー」、「スウェーデン」の三ヶ国です。
私、一ヶ国間違っていましたww。
この三ヶ国って歴史的・文化的に深い関わりがあるんですね。
ノルウェー語を見ていてアレっと思った文があります。
「I like måte.」
なんで英語が・・・と思った人が多いでしょう。
これはノルウェー語で「You, too」の意味なんですって。もちろん、読み方も違います。
新しい言語は使えるようにはなりそうもないですけど、頭の老化をくい止めるのにはよさそうなので、しばらく続けますわ。

共同通信大阪社会部の武田惇志と伊藤亜衣によるノンフィクション。
題名の「行旅死亡人」とは、「病気や行き倒れ、自殺等で亡くなり、名前や住所など身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語」です。
2021年6月1日、武田惇志は喫茶店でニュースチェックをした後に、ネタ探しの一環として「行旅(こうりょ)死亡人データベース」にアクセスした。
ふと「ランキング」という欄に目が留まり、スクロールして出てきた「行旅死亡人の所持金ランキング」を見た。
一位は兵庫県尼崎市で発見された女性で、所持金は「34821350円」で二位とはおよそ1400万円の開きがあった。
その女性の死亡記事を見てみると、所持金に加えて、右手の指がすべて欠けているという。
尼崎市南部保健福祉センターに問い合わせてみると、名は「タナカチヅコ」というらしい。
彼女の身元は判明していないが、相続財産管理人の弁護士がいるので、そちらに取材申し込みがあった旨を伝えてくれることになる。
そうすると、すぐに弁護士の太田吉彦から電話が来て、その日の夕方にZoomでのリモート取材が決まる。
タナカさんは錦江荘というアパートに四十年ぐらい住んでいたが、住民票がない。
年金手帳はあったのだが、本籍地がわからないので、死亡届が出せない。
そのため氏名不詳になっていたのだ。
入居当時の賃貸借契約書には夫らしい者の名前と勤務先が書いてあるが、亡くなっており、住民票もなく、詳しくはわからない。
おかしなことに大家は田中千津子さんはずっと一人暮らしだと言う。
指は労災に遭ったらしいが、途中から労災を断ったようだ。
肝心の住民票は「職権消除」で抹消され、その経緯も閲覧できなくなっている。
残されたのは現金3400万円あまりの他にウォン紙幣、珍しい名字の印鑑、数十枚の写真、星形マークのペンダント・・・。
太田弁護士は探偵を入れて調査したが、自称・田中千津子ということだけしかわからなかったという。
武田が彼より一年遅く入社したが、気安く話せる隣席の伊藤亜衣にタナカさんの取材メモを見せると、彼女は取材をしてみるべきだと言った。
数少ない手がかりをもとに、武田と伊藤は自称・田中千津子の身元調査に乗り出す。
タナカさんの一応旧姓と言っておきますが、珍しい名字だったので身元判明に役立ちました。
でも普通のどこにでもあるような名字だったら、全く何もわからずに終わってしまい、記事にもなってなかったでしょう。
そういう行旅死亡人が沢山いるのですよねぇ。
新聞記者が書いたのでとても読みやすく、取材力も流石です。
でも謎が残る終わり方なので、読み終わってもすっきりせず、なんか気になって仕方がないです。
タナカサンはどういう思いで、同じアパートで四十年を生きてきたのか。
なんで彼女は世間から隠れ、忘れさられることを選んだのか。
そこが一番知りたいのですが、知ることができないのがもどかしいです。
深い理由がありそうです。
ミステリを読んでいるような感じのノンフィクションです。
参考:「きっと誰かが覚えている 記憶に残る生きた証 ー 「ある行旅死亡人の
リン・メッシーナ 『公爵さま、執事には負けません』 ― 2025/07/16
「行き遅れ令嬢の事件簿」シリーズの六作目。

ベアトリスはケスグレイブ公爵のダミアン・マトロックと結婚し、公爵夫人となった。
しかし、使用人に会うのが怖い。
彼らは事あるごとに「奥さま」を連発し、「奥さま」と呼ばれるたびにベアトリスはビクッと縮みあがるのだ。
覚悟を決めて、家政婦と話しに地階へ行ったベアトリスは、間違って執事の作業部屋に入ってしまい、執事のマーロウと従僕のジョセフの話を聞いてしまう。
ジョセフがムッシュー・アルフォンスの不幸な死についてベアトリスに調査をお願いしたいと言うのを、マーロウは女性に殺人事件の調査はできないと断言してはねつけたのだ。
マーロウがベアトリスや女性を軽蔑するのは彼の勝手だが、人殺しを突きとめる才能を物笑いの種にされ、頭に来たベアトリスはアルフォンスの件を調査すると、マーロウに宣言する。
ムッシュー・アルフォンスはヨーロッパで一番有名なフランス人シェフで、二年前に銀行家のメイヒューに雇われた。
ジョセフによると、昨日、殺される前に、家政婦のミセス・ウォレスに仕事を辞めると言っているのを聞いたという。
ムッシュー・アルフォンスは”小型のギロチン”の刃を調整している時に誤って自分の首を切断してしまったのだから、事故であると判断されたらしい。
ベアトリスは公爵さま抜きで、一人で調査を始める。
まずは家政婦から話を聞いて、それからメイヒューから話を聞かなければ。
意気揚々とメイヒュー邸に赴くベアトリスだった。
さて、ベアトリスはマーロウの鼻を明かし、使用人たちの尊敬を勝ち取ることができるのか。
ベアトリスの想像力は普通ではないですね。
そういう彼女だからこそ公爵さまが気に入ったのでしょうが、これからも殺人事件に首をつっこみ、危ない目に遭いそうです。
彼女に翻弄されそうなケスグレイブ公爵家の使用人たちが可哀想に思えてきました。
狡猾な銀行家のメイヒューとの丁々発止の会話が今回の目玉です。
私は貴族社会の仕来りが面白かったです。
ベアトリスはそれほど身分が高くなかったので、使用人と気楽に暮らして来たようです。結婚して公爵夫人になりましたが、公爵は爵位の一番上ですから、やりたい放題、権力は使い放題ww。いいですね。
公爵さまはいつまでベアトリスを溺愛するんでしょうね。
新婚の二人はいちゃいちゃしすぎです。
このシリーズは今年の三月に十三冊目が出版されています。
七作目は『A Ghastly Spectacle』。
公爵夫人になっても殺人事件の調査を止めないベアトリスのために、レディ・アバクロンビーが殺人ミステリの晩餐会を開催します。その中で起こる殺人事件をベアトリスが解くはずでしたが、本当の殺人事件が起きてしまい・・・。
翻訳者が頑張ってくれてるらしく、今年中に七作目が出版されるようです。
<シリーズの順番>
①『公爵さまが、あやしいです』
②『公爵さま、いい質問です』
③『公爵さま、それは誤解です』
④『公爵さま、前代未聞です』
⑤『公爵さま、これは罠です』
⑥『公爵さま、執事には負けません』(本書)
森明日香 『恋女房 おくり絵師』 ― 2025/07/18
「おくり絵師」シリーズの四作目。

「第一話 恋女房」
昨年の十月の大地震で、おふゆの師匠歌川国藤の店舗と工房が焼失した。
国藤は女房と弟子とともに娘のお夏の嫁ぎ先に身を寄せていたが、生計を立て直すために神田須田町に居を構えた。しかし、世の中に絵を買う余裕はない。
そんなところに、岡っ引きの源八がやって来る。町奉行の同心梶原がおふゆを呼んでいるという。梶原は薬研堀の長屋で女が殺されており、その部屋に住む錺職の貞一が殺したと思われるが、貞一は雲隠れしているので、長屋の者たちから話を聞いて、彼の似顔を描いてくれと言う。
貞一はしばらくして見つかる。梶原は貞一のためにおふゆに、いまは亡き貞一の女房おさとの死絵を描くように頼む。
「第二話 腕くらべ」
元菓子屋「卯の屋」の若旦那で、大地震後、行商をしている寅蔵がおふゆに、自分がお世話になっている菓子屋「巳吉屋」が元旦に奉公人に配る菓子折の掛け紙に絵を描く絵師を探していると教えてくれた。
次の日、巳吉屋に行ってみると、目星はついていて、声をかけた手前こちらから断れないので、腕くらべをしないかと言い出す。
相手はおふゆよりも年下の絵師だというので、おふゆはやることにする。
「第三話 白梅の文」
おふゆが三島町で地本問屋を営んでいる佐野屋に絵を届けに行った折に、佐野屋は間に立つからと、おふゆに年の暮れに腕くらべをした相手の住まいを教えてくれた。
相手は高名な絵師の娘で、天賦の才とともに、美貌にも恵まれているらしい。
国藤と同じ流派で行き来はなかったが、仲違いをしているわけではないので、おふゆに気楽に会ってみろと国藤は言う。
おふゆが会いに行くと、全くおふゆとは違う娘がいた。
大地震後、悪戦苦闘する国藤たちでしたが、光明が見えてきました。
今回は死絵は第一話のみでしたが、これからのおふゆの生き方に関わるお話でした。
体が丈夫で寝込むことのないおふゆが病気になり、死を間近かに感じ、自分はこの世を離れる怖さやこの世に留まる喜びも知らなかった、「自分の描く絵は浅かった」と気づきます。
同じ年頃のお友だち兼ライバルもできます。
これからの彼女の描く絵は今まで以上に素晴らしいものになるでしょう。
本の中のいい言葉を載せておきます。
師匠の言葉:「誇りは自らを支えるが、傲りは身を滅ぼす」
おふゆの言葉:「頑なな心は、人を袋小路に追い込む」
シリーズの順番
①『おくり絵師』
②『牡丹ちる おくり絵師』
③『夜の金糸雀 おくり絵師』
④『恋女房 おくり絵師』(本書)
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